『鉄壁魔都』第0話・ドワーフの勇者
この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。
宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。
ここは、ドワーフ族の都。
オレの名は、スカジ。ドワーフ族の『女勇者』だ。
族長達は、突如現れた『魔族の都』について緊急会議を開いていた。
……いや、会議などしている場合ではない。『魔王』が蘇ったのだ。
数年前、『魔族』は無数の命を奪い、世界に深い傷痕を残した。
混乱する世界を救うため、六大種族はそれぞれの希望を託し、『勇者召喚』を行った。
人間族の勇者・高潔な騎士、ヴォルフガング
エルフ族の勇者・美貌の女性弓術師、リュミエール
天使族の勇者・六翼を持つ青年、セラフィオン
獣人族の勇者・狼族の戦士、ガルザーク
フィッツの勇者・義手の天才発明家、ニコロ
そして、ドワーフ族の勇者・オレこと、スカジ
それぞれの世界から集ったオレ達は、『勇者パーティー』として力を合わせ、『魔王』との激戦を制した。
だが、仲間は……誰一人として、生きて帰れなかった。
オレだけが生き残った。仲間達の犠牲の上に、勝利はあった。
あの忌まわしき存在を、オレ達『勇者パーティー』は命を賭して討ち果たしたはずだった。
それなのに、あの『魔王』が再び、この地に現れたのだ。
『勇者パーティー』の、みんなの『復讐』のために、オレは再び戦う決意をする。
仲間達の魂に誓って、今度こそ『魔王』を完全に葬り去るために。
……みんな、どうか見ていてくれ。お前達の仇は、必ずこの手で討つ!
その時、ドアがノックされる。
「勇者スカジ様、族長がお呼びです。至急、会議室n……
「いや、話はわかっている!族長に伝えてくれ、『勇者スカジは、魔王討伐の任を拝命する。新たな勇者パーティーを結成し、魔族の都に向かう』と!」
オレは、ドワーフ族の伝令を無視して歩き出す。
『魔族』を、『魔王』を許しておけない!
みんなの『復讐』を果たし、一刻も早く倒さねば!
まずは、今回召喚された勇者達に接触する。
エルフ族……は、仲違いしそうだから、人間族の勇者に会いに行くべきだろうな。
ボクは、ニョルズ。ここは、どこだろう?
サティ様と、新たな領地『荒れ果てた領地』に向かう途中、意識を失った。
気付いたときには、角や牙が生えた人……『魔族』だろうか?……その都にいた。
近くで一番大きな建物に身を隠したけど、何やら話し声が聞こえる。
「我が『眷属』の統制を、諸君らに頼みたい。彼らは、我が力によって抑え込んでいるが『欲求』が刺激されると『暴走』してしまうやも知れん!」
玉座みたいな場所で、角の生えた、禍々しい鎧を身にまとった人物が発言している。
「恐るべきは『勇者パーティー』だ!六大種族が召喚した『勇者』が、我が領地に攻め込んでくるだろう!」
鎧の人物の視線の先には、何十という『上級魔族』とも言うべき存在が、ひしめいていた!
「我はこれより、都の郊外に『城』を建てる。我が『眷属』をこの都に集め、『勇者パーティー』を近付けさせないことが、諸君らの任務である!」
『上級魔族』を代表して、うやうやしく発言する者がいる。
「くふふふ。かしこまりました、我らが『魔王様』。『眷属』達を集め、統制すること、我らにお任せください」
発言した『上級魔族』が綺麗にお辞儀すると、他の『上級魔族』もならう。
っていうか、あの人って!
思わず身を乗り出したとき、物音を立ててしまう。
「……何者っ!?」
しまっ……!見つかった!?
まるで『空間転移』したような『上級魔族』の動きに、ボクは羽交い絞めされてしまう!
「……『魔王様』、子どもが一人、紛れ込んでいました」
「!!……ニョルズ、なんでこっちに!?」
『魔王様』と呼ばれていた人物から、ボクは名前で呼ばれた?
「……ごほん!ニョルズよ、我は『魔王』である!我に従うのならば、悪いようにはしない!さぁ、この『ゲーム』を、特等席で見せてやろう!!」
調子を取り戻した『魔王様』は、ボクに手を差し伸べる。
「……『魔王様』、ボクは、あなたに従います」
状況がよくわからないけれども、ボクは『魔王様』に従うしかなさそうだ。




