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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第6章・女騎士アルテミスと神魔双刻の女王様

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『神魔双刻』第7話・王国からの旅立ち

 結局、わたくしは、サティーナの旅立ちを見送っていました。


 わたくしは微笑みながら、努めて明るく、ハーデス陛下に答えたのですわ。


「わたくしは、あなたの『姉』。『姉』が『弟』を支えるのは当然のこと!……サティーナだって、わかってくれるはずですわ」


 そう自分自身に言い聞かせた、その時!


「……もう、やめようよ」


 不意に、ハーデス陛下の声が響いたのです。


「え?」


 驚いて振り向くと、ハーデス陛下は、わたくしをまっすぐに見つめていました。


「ペルセポネお姉t……いや、ペルセポネは、僕の『姉』である前に、一人の人間だよ。ずっと、僕のために生きる必要なんてない。……自分の『幸せ』を探してほしいんだ」


 わたくしの、幸せ?……思わず、息を呑んだ。


 ずっと、『姉』としての立場を貫くことが、当然だと思っていた。


「ペルセポネが、心から笑える場所……それは、サティーナの側なんじゃないかな?」


 サティーナの側。


 確かに、サティーナといるときのわたくしは、飾らない自分でいられます。


 心から、笑えている気がするのです。


「僕の『心』は、ペルセポネによって救われた。『事件』で、両親を亡くした僕の側に居てくれた!『ペルセポネ・アカデミー』で権能だけじゃなく、様々な知識を教えてくれた!何度も『暴走』しても、必ず助けてくれた!!……僕は、あなたのお陰で国王になれた!」


 ハーデスと過ごした日々が、思い出されます。


 ハーデスは、皆の期待を背負い、立派に成長しました。


 ……そう。ハーデスは、既に『わたくしの弟』ではないのかも知れません。


「……ペルセポネ、僕の『心』は、元気になったよ!」


 わたくしは、ハーデスを抱きしめたのですわ。







 王宮の城門前で、私、サティーナは、出発の確認をしている。


 ふと、同行する『仲間』達に、目を向ける。


「サティーナが忠臣・アルテミスよ、聞け!我は『ガイア教』の活動に感銘を受け、彼らと意気投合し、『ガイア教サティーナ学派』の設立と布教員の資格を得た!」


 ルシファーが、無茶苦茶なことを言っている。


「……『ガイア教』は存じていますが、『サティーナ学派』とは?サティーナ様に関係があるのですか?」


 アルテミスが、胡散臭そうに聞く。


「では、説明しよう!彼ら『ガイア教』は、『やんごとなき身分の御方』を探している。ヒントは、恐らく王族ということのみ!そこに我が、サティーナにより『堕天』と『崩壊』から救われた話をしたのだ!」


 なんだか、雲行きが怪しくなってきたわね。


「そしたら『やんごとなき身分の御方』の候補に、我らがサティーナが躍り出たのだ!つまり『やんごとなき身分の御方』の正体が、サティーナだとする集団こそ『サティーナ学派』というわけだ!!」


 なんと、傍迷惑なっ!!


「……ちなみに他の候補として、ペルセポネや葛葉、大穴で老・元宰相などだな!」


 葛葉様は、興味深げに、


「葛葉も、その『やんごとなき身分の御方』の候補なのでごさいまするか!?」


 ニョルズは、ドン引きしながら、


「……賭博じゃあるまいし。ボクは、そういうのは感心しないね!」


 話を聞いていた。ニョルズは、今日も脚が綺麗だ。


「……どうだ、アルテミスよ!君も、我ら『ガイア教サティーナ学派』に入信するのだ!……今なら、コレを記念品として差し上げよう!」


 ルシファーは、アルテミスに紙を渡したようだ。


「!!……これは、サティーナ様の姿絵!?」


 な、なんだってーーー!!!


「……いや、違います!サティーナ様、誤解です!!」


「ふふふ、同志アルテミスよ!恥ずかしがることはない。我らが主・サティーナが尊いことは、この世の理なのだからな!」


 アルテミスに、私の姿絵をグイグイと押し付けるルシファー。


 私は、たまらず声を張り上げる!


「ちょっと、あなた達、いい加減にして!……ペルセポネも何か言ってやってよ!!」


 あっ!……その瞬間、賑やかだった空気が静まり返る。


「……なんか、ごめん」


 私は咄嗟に、謝ってしまう。


「いえ、サティーナ様のせいでは……」


 アルテミスがフォローしてくれるが、みんな、続く言葉が出ない。


 ペルセポネが、ここにいない。


 それが、こんなにも空気を変えてしまうなんて。


 沈黙を破り、ニョルズが明るい声で言った。


「ハイハイ、準備ができましたら、出発しましょう!まずは、ボクが御者をします。よろしいですね、サティ様?」


「え、えぇ……お願いね、ニョルズ」


 ニョルズの仕切りで、馬車は静かに動き出す。


 我が身のことながら、『公爵』として情けない。







 馬車は、王宮の城門からゆっくりと離れていく。


 その時!!


「……待って、サティーナ! みんな!!」


 ペルセポネが、髪を振り乱しながら走ってくる!


「ニョルズ! 馬車を止めてちょうだい!!」


 普段の優雅なペルセポネからは、想像もできないほど必死な様子。


 止まるのを待ちきれず、私は馬車から飛び降りた!


「はぁ、はぁ……サティーナ!」


「どうしたの!? ペルセポネ!!」


 走ってきたペルセポネが、倒れ込むように私の胸に飛び込む。


 結果、私と抱き合う形になった。


「サティーナ……いえ、公爵様。どうか、わたくしも、お供させてください!」


 ペルセポネが、かしこまった口調で懇願する。


「……そんな。あなたは、ハーデスの元に残るとばかり……」


 私が問いかけると、ペルセポネは王宮を振り返った。


 そこには、城壁の上で手を振るハーデスの姿……いや!


 ハーデスの周囲には、多くの人影が集まっている。


 あれは、『ペルセポネ・アカデミー』の同級生達?


 いや、それだけじゃない。若き騎士達の姿もある!!


「ハーデスを……我らが国王陛下を支える臣下は、既に育っているのですわ!!」


 そうだ。私達は、そのために『王国再編』を進めてきた。


 『権能を持つ者』を中心に、『聖剣団』と『アカデミー』によって、すべての人に『チャンス』を与える……


 それが、きっと『王国』を、より良くする道だと信じて!!




 集まった人々は、城壁の上を埋め尽くしていた。


「「「『王国』、バンザイ!! ハーデス王、バンザイ!!」」」


 新国王ハーデスを讃える声が、『王国』の空に響き渡る。


 彼らは、それが私たちへのエールになると、信じているのだろう。


 ペルセポネは微笑みながら、そっと、つぶやいた。


「……いってきます、わたくしの愛しい人(ハーデス)


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