『神魔双刻』第5話・君の名は
そう!私の『真名』は……
『 サ テ ィ ー ナ 』 !!
『サターン』と『サタン』。
二柱の権能……『神魔双刻』の権能を持つ者!!
『サタン』の伝承の一部、『ルシファー』と共通する部分を『神格化』し、ルシファーに譲渡・同化する。
ルシファーは、光と闇の奔流に飲み込まれ、空中に浮き上がる。
あまりの権能の圧力に、私達は身悶える!
「ルシファー様!!」
パイモン君の叫びが響いた、その時!!
ルシファーの身体が再び輝き始め、ルシファーの中で新たな命が芽生えているようだ!
その髪は再び輝きを取り戻し、黒と金が交錯し、まるで夜空に輝く星々のように美しく変わっていく。
翼も同じく、漆黒の中に黄金の光が差し込み、天と地を繋ぐ存在へと生まれ変わる。
「この力は?我の中に、何と美しく、強大な!!」
ルシファーは自分の変化に、驚きと喜びの入り混じった表情をする。
「……ふふふ。無事で何よりよ、ルシファー。私の『神格化』を止めたかったあなたが、私の『神格化』で救われるなんて、奇妙な巡り合わせよね」
私は皮肉っぽく、ルシファーに声をかける。
ルシファーは地上に降り立ち、ゆっくりと私の前にひざまずく。
「サティーナ……いえ、我が主よ!あなたの恩義を、決して忘れません。我を救い、我に新たな力を与えてくれたこと、この命に代えても報います!」
我が主ぃ!?それって、つまり!!
そして、パイモン君達に、その目は向けられる。
「……かつて、お前達にした仕打ちを詫びよう。我は『堕天』の何たるかを知った!……どうか、我を許してほしい!そして、お前達の『仲間』に入れてはくれまいか!?」
三柱の『堕天使』は、顔を見合わせ頷き合う。パイモン君が代表してルシファーに告げる。
「ルシファー様、もったいない御言葉です。僕達は『光と闇を司る大天使』ルシファー様の再誕を、祝福いたします!!」
そう言って、パイモン、バティン、バルマは、ルシファーの復活を讃えた。
「……みんな、そして我が主・サティーナよ!これからよろしく頼む!」
そう、ルシファーは真っ直ぐな視線を私に向け、微笑んだのだわ。
王宮に戻って、みんなに『天界』での出来事を報告した。
アルテミス、ペルセポネ、葛葉様は、やれやれといった雰囲気。
ルシファーは居心地悪そうにしていたが、自分の不始末をみんなに詫びる。
「……すまない。『堕天』の影響で『暴走』していたとは言え、皆に迷惑を掛けてしまった。どうか許してほしい」
高圧的な態度だったルシファーの謝罪に、みんなは驚くほかなかったようだ。
私は、四人に向かって語りかける!
「みんな、よく聞いてちょうだい!私は『神格化』し、ついでに『公爵』となるわ!」
みんな、目を剥く。
私は四人に対して、また『王国法』に悩まされていた過去の自分に対して、そして『王国法』自身に対して……
勝ち誇ったように、宣言する!!
「そうです!わざわざ玉座の椅子で、葛葉様に膝に乗ってもらった伏線を、今、回収します!
『椅子が玉座に置けなかったら、もう一つ玉座を作って椅子を置けば良いじゃない!!』
この国にいる誰もが、そう私に言ってくれなかったんです!
私は、私の道を行きます!私の人生を生きます!
……だから、私に付いてきてください!!」
私は、四人に頭を下げる。
「ええ!何処までも、お供します!」
「主殿が居るところが、葛葉の居場所でござります!」
「我が主よ!このルシファーに、お任せあれ!」
アルテミス、葛葉様、ルシファーは快く受け入れてくれた。
……しかし、ペルセポネからは、返事がなかった。
ハーデスの即位まで、私達は『王国』の再編を進める。
『ペルセポネ・アカデミー』の有識者『5博士』や、次期国王であるハーデス自身とも、厳密な打ち合わせを行う。
特に大きいのは、議会の設立、『奴隷利権』への対応、『聖剣団』が担ってきた任務の引き継ぎ、など。
忙しく月日は立ち、ハーデスは王族きっての才覚を見せ、15歳の成人の日を待たずに『国王』への即位が決まった!!
ここは『天界』と呼ばれる場所。
神々の場に、私は緊張しながら訪れる。
『サティーナよ、よく来たのう。儂は「この日」が来るのを待ちわびていたのじゃ!』
『孫』を迎える『おじいちゃん』のように『サトゥルヌス』は言う。
【絶対神級】となっても、その笑顔は変わらなかった。
『サトゥルヌス』の両隣には、女神『アルテミス』、女神『ペルセポネ』が控えている。
周りにも、興味深げに神々が、様子をうかがっている。
「『この日』とは、私が『神格化』するのを、既にわかっていたみたいな言い方ね?」
『サトゥルヌス』は、得意気に話す。
『そうじゃ。儂は「運命」を司る神なのは、忘れておらんじゃろうな?儂らは「この日」のために、お前さんを導いてきたつもりじゃ。それは、お前さんの「心」が、「神格化」を望んでいたからじゃ!』
確かに『運命の神』である『サトゥルヌス』に言われると、腑に落ちる面もあるわね。
その時!『天界』にとっては、異質な覇気が渦巻く!!
『……邪魔をするぞ、神々よ!我が権能の使い手・サティーナの晴れ舞台と聞いて、参上した!』
それは、魔界の王『サタン』であった!!
『魔界の王よ、ここを何処と心得る?即刻、立ち去りなさい!』
『「サタン」よ、此処で暴れるならば「天界」の神々すべてを相手にしてもらいますよ!』
女神『ペルセポネ』が言い放ち、女神『アルテミス』も警戒心を顕にする。
『狼狽えるな!……我はただ、サティーナの「神格化」を見届けに来ただけだ!』
そう言って『サタン』は、その場にドカッと座り込んでしまう。
「……ありがとう『サタン』」
私は、危険を顧みずに駆けつけてくれた『サタン』に礼を言う。
『ほっほっほ!「サタン」よ、久しぶりじゃな。お前さんが、おとなしくサティーナの「神格化」を見守るのなら、儂は歓迎しよう!』
この場を収める『サトゥルヌス』と、毒づく『サタン』。
『……少しは話がわかるようだな、「サトゥルヌス」の爺さん。それと「運命」は切り開く物だ!お前達、神々の都合で、サティーナに無理強いをするんじゃねぇ!!……サティーナ、辛くなったら我を尋ねよ。「魔界」にかくまってやる!』
『サタン』の不器用な愛情に、私は辟易とする。
その圧力を意にも介さず、話を進める『サトゥルヌス』は流石である。
『それでは、始めようかの。サティーナよ、祝詞を捧げ、「運命」を司る権能で「神格」を書き換えるのじゃ!』
『サトゥルヌス』は簡単に言うが、『条件』さえ整えば『世界の強制力』が働くため、『神格化』には少ない労力で済む。
私は頷き、『サトゥルヌス』に祝詞を捧げる。
「我が信奉を捧げし神、『サトゥルヌス』よ!
古の契約『王国法』により、我は『神格化』の権利を得た!
『王国』に尽くし、神々と民の架け橋となった、我を祝福せよ!!
ああ、神々よ!『神々と人間との契約』を履行せよ!!
神の末席に至る我に、新たな『権能』を授けよ!!」
権能の覇気が高まる!人の身を捨て『神格』を得るために、覇気が身体に入り込むのがわかる!!
そして、眩い光が、私を包み込んだ!!




