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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第6章・女騎士アルテミスと神魔双刻の女王様

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『神魔双刻』第3話・奥の手

 大天使としての威厳は完全に失われ、ルシファーは、ただ憤怒に駆られた存在となった。


「お前は、我の『忠誠心』を疑い、主の意思を侮辱した!そのような行為は許されない!」


 言葉を終えると同時に、ルシファーは槍を召喚し、私に向かって猛然と襲いかかる。


 その一撃は、空間を切り裂くような威力を持っている。


「主の名において、今ここでお前を裁く!!」


 しかし、同時にその攻撃には歪んだ信念と狂気が入り混じっていて、かつての天使としての冷静さは感じられない。


「『サトゥルヌス』!!」


 狂気一撃を、私は時を止めることで回避し、ルシファーの背後に回り込む。


「ルシファー、あなたの主は、徳を積みすぎていて人間界のことやあなたのことにさえ、興味を失っているのです。私は、それが悪いことだと思いません。ですが、あなたの盲信とも言える忠誠心は、行き場を失っています!」


「人間風情が何を言う!」


 思考が歪んだルシファーは、私が何をしたのかわからない様子だったが、侮る態度を崩さない。


「……そのやり場の無い葛藤が、あなたの金色だった髪を、純白だった翼を、灰色にしてるのです。『堕天』しつつあるあなたを、あなたの主は気にかけてくださっているのですか?」


 ルシファーの目が、さらに怒りで燃え上がる。


「黙れ!黙れ!お前が何を知っているというのだ!主が我を見放すなど、ありえない!我が忠誠は永遠であり、主は我を裏切らない!お前のような存在に、我が忠誠心を侮辱される筋合いはない!この無礼者が!」


 ルシファーは主が侮辱されたと判断して、私に再度襲いかかってくる!


 しかし、私は冷静にルシファーの攻撃を正確に見極め、時を止め、その背後へと再び移動する。


「お前を地に這いつくばらせ、主の前で跪かせてやる!我の怒りを思い知れ!」


 ルシファーの一撃はさらに荒々しく、まるで自身が内なる怒りと狂気によって引き裂かれそうになっているかのに思える。


「私の『サトゥルヌス』では、攻め手に欠けるわね……アルテミス、ペルセポネ、葛葉様、力を貸してちょうだい。ルシファーを取り押さえるのよ!」


 葛葉様の封印を解き、アルテミスとペルセポネも身構える。


  「了解しました、女王様!ルシファーを取り押さえるために、全力を尽くします!」


「わたくしの力が必要なのですわね、『女王様』?ルシファー様、どうか冷静にお話を……!」


「お前の頼みなら聞くより他はない。愚かな天使よ、妾の力をもって屈服させてやろう!」


 アルテミスは冷静に剣を抜き、ルシファーの動きを封じるために攻撃を仕掛けるが、その剣技はルシファーの狂気と怒りに飲み込まれそうになる。


 ペルセポネは『魅了』の魔法を使ってルシファーを鎮めようと試みるが、ルシファーの盲信と狂気は、その魔力を跳ね返してしまう。


 葛葉は力を最大限に引き出し、ルシファーの背後から攻撃を仕掛けるが、その攻撃はルシファーにかすり傷を与えるだけ。


「くだらない!お前たちごときが私を取り押さえられるとでも思っているのか?この傲慢者どもが!」


 ルシファーは激しい怒りと狂気に駆られ、攻撃の手を緩めることなく、逆に3人の防御を突き破るほどの力で反撃する。


「くっ……!力が足りない……!これでは女王様を守りきれない…!」


「ルシファー様、どうしてこんなことを……!わたくし達は争うべき存在ではないのに……!」


「妾がここまで……追い詰められるとは……!」


 その強力な攻撃にアルテミス、ペルセポネ、そして葛葉、次々に打ち負かされ、その場で膝をつくことを余儀なくされる。


「さすが、偉大なる存在の側に侍ることを許された大天使……ルシファー、噂通りね」


 ルシファーの圧倒的な実力を目の当たりにし、私は、みんなに声をかける。


「みんな、体制を整えるわ!アルテミス、ルシファーの動きを捉え、槍を防御しなさい!ペルセポネは、みんなを癒して!葛葉様は、ルシファーの急所を狙ってください!私はルシファーのヘイトを取ります。危険な攻撃は時間を司るの権能で回避します!」


 3人は私に頷くき、それぞれの役割を果たすべく動き始める!


「了解しました!『狩猟の女神』として、狂気に満ちたルシファーの動きを封じます!」


「みんなに癒しの力を!『春と再生』の権能をもって、あなたたちの傷を癒しますわ!」


「妾の力をもって、奴を仕留めてみせよう!天使よ、覚悟するのだ!」


「ルシファー、私はここにいる!あなたの怒りを全て私に向けなさい!」


 仲間達の動きは良くなり、攻撃を受けることはなくなるが、やはり攻め手に欠ける。


「このような状況なら、体力が無尽蔵の天使に有利ね……みんな、奥の手を使うわ!なるべく離れてちょうだい!」


 私の意図に気付き、みんなは退避する。


「『サトゥルヌス』よ!時を止めてちょうだい!」


 止まった時の中で、私はルシファーを『大鎌』で斬りつけてみる。


 傷は浅く、時間が止まっているはずなのに、すぐに塞がってしまう。


 『偉大なる存在』に愛されたルシファーを傷付けることは、並大抵の攻撃ではかなわないのだ。


「大天使の防御力や再生力は、時が止まっていても有効みたいね。でも、【人格神級】の72柱の攻撃ならどうかしらね?これから1日10柱ずつ『ソロモンの指輪』から『悪魔』を召喚するわ。止まった時の中でも7日以上かかる計算。以前は1日1柱だったから、感謝しなきゃいけないけど、やはり一人は辛いわね」


 私にとっての嬉しい誤算は、ペルセポネの回復が、時が止まってても有効ってところかしら?


「ルシファー。あなたは私に、神となる覚悟を問うたけれど、私は『サトゥルヌス』の権能を掌握したときから、既に『永遠を生きてる』わ。ルシファー、永遠を生きるのは辛いことよ?……あなたの主も、きっとそうなのよ」


 その『時間のズレ』が、主従の心の溝となっているのだわ。







 止まった時の中で10日後。


 玉座の間を埋め尽くす、私の可愛い仲間達!


「さあ、72柱の『悪魔』達よ!時が動き出したら、ルシファーを攻撃してちょうだい!天使だからやり過ぎることは無いだろうけど、一応、命は助けてあげてね!」


 返事がない。私ってば、そんなに人望がないのかしら?


「あっ……時間が止まってるから返事できないのか!じゃあ『そして、時は動き出す』」


 時が動き出し、72柱の『悪魔』達が一斉にルシファーに襲いかかる!


 ……2柱ほど、手加減してたような気がするけど、しょうがないよね。


 ルシファーは、次々と繰り出される圧倒的な攻撃の嵐に飲み込まれ、防御しきれずに地面に叩きつけられる。


「くっ!これが、人間の……権能なのか!」


 ルシファーはついに押さえ込まれ、その動きが完全に封じられた。


 私は、ルシファーに優しい笑みを見せながら……そう言えば、私に対して「地に這いつくばらせる」とか言ってなかったかしら?……いかんいかん!


 決して、ドヤ顔にならないように注意しながら、優しい笑みで語りかける。



「ルシファー、あなたの主のためにも、無意味な戦いを、これ以上続けることは避けるべきです(ドヤァ)


 私は、あなたに恨みを持っているわけではありません(ドヤヤァ)


 ただ私は、私の道を進むために、あなたを止めなければならなかっただけです(ドヤヤヤァ)」



 ルシファーは、『悪魔』達に押さえ込まれ、悔しそうな目を向けてる。


 パイモンとバティンは、隅でハラハラしていた。

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