『王国再編』第6話・奴隷利権の影
この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。
宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。
波乱の戦闘、そして祝宴の後、ミトラ王は『聖国』内の混乱を収めるため帰っていった。
しかし、一部の『聖国』の戦士達は『王国』に残り、王宮の復旧作業を手伝ってくれている。
特に象!瓦礫を軽々と持ち上げる……その力に、圧倒される!!
復旧作業を通じて『王国』の騎士達と『聖国』の戦士達は、仲が深まったように感じる。
また、ハーデスは『議会』の設置に向け、『アカデミー』に通いながら『5博士』と知識を高め合っている。
次期国王として『王国』の未来を、真剣に考えている様子だった。
そして、私は、というと……
ここは、騎士団の訓練所。
「まずは『大鎌』の基本動作を、身体に叩き込みましょう!基礎訓練として……大きな円を描く薙ぎ払い、左右200回ずつ!柄の突き、正面に100回!足の動きを合わせた回転斬り、100回!防御も忘れずに! 受け流しと柄での受け、100回!」
アルテミスの指導に、熱が入る!
「『大鎌』は基本、薙ぎ払いを主体とする武器です。『大鎌』の振りは直線ではなく、円の動きが基本。軌道を意識し、無駄な力を抜く必要があります!刃の重みを利用することを、意識してください!!」
玉のような汗をかき『大鎌』を振り回す私。
「ですが『大鎌』は、それだけではないのです!柄を活かせば、槍のように突くこともでき、棍のように叩くこともできる。つまり『大鎌』の本質は『間合いを制する武器』ということです!!」
『女王様』だから『戦闘力』は要らないのかも知れないけど、廊下や階段を逃げるだけってのは、ちょっとね。
「さあ、続けましょう! 『大鎌』は、振るう者の技量次第で最強の武器にも、ただの鈍器にもなります! あなたは、どちらになりたいのですか!?」
あれ?何だか、ブートキャンプみたいになってない?
「アルテミス殿の言う通りでござります、主殿!」
葛葉様が長椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせながら言う。可愛い。
「権能により、身体や技術を高めることはできまするが、それ即ち、権能の力を『浪費』しておるということ。最低限の身のこなしを習得すれば『自己強化』に割く分を、さらに『出力』へと回せるのでござりまする!」
葛葉様は、ペルセポネの回復を受け、傷口を塞ぐことができた。
今回は無事で良かったけれど、何もできずに目の前で仲間が傷付くのは、耐えられないわ!
「『女王様』。それが終わったら、わたくしと『権能により強化された魔法』の練習をしましょう!『サトゥルヌス』様の『出力』ならば、魔法障壁を張るだけで様になると思いますの!」
そう、ペルセポネは、笑顔で告げる……冥界の鞭を召喚し、有無を言わせない構えだ!
ふと、アルテミスが口を開く。
「……今『女王様』が持っている『大鎌』は、黄金色で『サトゥルヌス』様の『大鎌』のように思えます。しかし、あの時の『大鎌』は漆黒で、もっと、こう……禍々しい雰囲気だった気がします」
それを受け、ペルセポネも疑問を話す。
「あらあら、わたくしも。王家の家宝である『ソロモンの指輪』は、確かに『悪魔』を召喚するけれども、あんなに複数を召喚できるなんて……そして『願いが叶えられたら食べられる』ルールは、どこに行ったのかしら?」
葛葉様も、その話題に乗っかる。
「葛葉も、疑問に思い申した!『バエル』殿を召喚したときに『同胞』と、呼ばれていた気がしまする!『バエル』殿は、嵐の神『バアル・ゼブル』や蠅の王『ベルゼブブ』と、同一視されることも!!」
三人は首を傾げ、うーん、と唸っている。
……取りあえず、私の日課に『大鎌』と『強化された魔法』の『特訓』が追加されたのだった。
王宮の玉座の間。
私こと『女王』、アルテミス、ペルセポネ、葛葉様の4人が集まっていた。
アルテミスが、兼ねてからの問題について報告する。
「文官の調査と、我が『聖剣団』の聴き込みによれば、旧クーデター派の背後には『奴隷利権』があることが判明しました。彼らは『王族打倒』を目論む貴族を、支援し続けているようです」
「……『奴隷利権』が?」
私は、眉をひそめた。
一部の貴族や商人が『女王批判』をするのは、一般国民の認識……すなわち『民意』を味方に付け、王族を打倒するためだと考えられてきた。
しかし『民意』は、すでに私の側にある。にもかかわらず、彼らは依然として活動を続けている……まるで、批判を続けること自体が、目的であるかのように。
「彼らの資金源は『人身売買』のはず……しかし『王国』では『強制労働や差別を廃止する法律』があり、さらに『サートゥルナーリアの大結界』があります」
確かに『強制労働や差別を廃止する法律』には『世界の強制力』が働き、『サートゥルナーリアの大結界』は『自由』と『自立』を促す。
『王国』では『人身売買』が、成立しないのだ!
私の思考を汲んで、アルテミスが告げる。
「『奴隷利権』は、本来なら衰退するはずです……国外の奴隷商と繋がっている恐れがあります!」
何たること!我が『王国』の国民が、他国で『奴隷』になっているだなんて!!
確かに『法律』や『大結界』の効果が及ぶのは『王国』内だけであり、他国は範囲外なのだ!
「アルテミス、あなたが言いたいことは……考え難いことだけれど、自らの意思で他国に渡り『奴隷』となる者がいる、ということよね?」
「はい。『奴隷利権』……奴らは、何らかの方法で、国民を国外に誘き出して、他国の奴隷商に売り渡しているのではないでしょうか?」
王国内にいる限り『強制労働と差別を廃止する法律』と『サートゥルナーリアの大結界』が、国民を守る。
ならば、国民を、国外へ誘導する手段があるはず……
「法の抜け道を突かれているのね?ありがとう、アルテミス」
私は静かに目を閉じ、思考を巡らせる。
「……何か裏がありそうね!」
アルテミスは、姿勢を正して応える。
「このようなことは、許されるべきではありません!私は『聖剣団』を動員して『奴隷』となる国民の経路を探ります!!」
ペルセポネも、凛とした声で告げる。
「わたくしも、納得できませんわ!『5博士』を通じて『ガイア教』に接触してみます。彼らと市井の様子を探りますわ!」
また、葛葉様も、居住いを正す。
「葛葉も、お手伝いいたしまする!港に行き『皇国』の船乗り達に、聴き込みをします。主殿、皆の力を合わせて、この問題を解明しましょうぞ!」
私は、三人に礼を言う。
「我が国民が、国外で『奴隷』となっているのは、由々しき事態だわ!この一連の流れで『奴隷利権』が利益を得ている恐れがあるし、何より望まぬ待遇を受ける人々が不憫だわ!みんな、よろしくお願いするわね!!」
私達は『奴隷利権』の暗躍を止めるために、動き出した……のだが。
「……何だか、玉座の間が、ガランとしてしまったわね」
私は、何をすべきなのかしら?……手持ち無沙汰ね。
「いいことを、思いついたわ!!」




