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女騎士アルテミスと聖国襲来の女王様・第11話

 ゼウスは、『雷神』の『祝詞』を唱える!


 天空の神『ゼウス』の、究極の雷の召喚!


 天が、閃光に包まれた……その瞬間!!



「 お ね え ち ゃ ん !! 」



 轟く声とともに、三柱の悪魔……パイモン、バティン、バルマが、舞い降りる!


「パイモン君!?それにバティン、バルマも!!」


 本来なら私に直撃するはずだった、ゼウスの雷撃。


 それを、彼らは魔法障壁を展開して受け止めた!


「パイモン! この雷には、対魔の属性が付与されているみたいだ!」


「バティン!亜空間に反らせられないかい!?」


「かしこまりました、パイモン!」


 三柱の悪魔は、身を焦がしながらも、必死に雷を亜空間へと押し込んでいく!


「……くふふ、少し、ダメージが大きかったかな……?」


 パイモン君が、かすれた声で笑う。


「……ごめんね、僕たちは『魔界』で休ませてもらうよ……頑張ってね、我らが『魔王様』」


 言い終わると、三柱の悪魔たちは、霧のように消え去った。




 切り札を防がれて、呆気にとられるゼウス!


 ……私は、みんなの献身に、応えなければならない!!


 私は、ゼウスに向かって駆けながら、『()()()()()()



「『王国』を守護する『サートゥルナーリアの大結界』よ!


 聞け、汝の本懐を!!汝は『支配』するものに非ず!!


 全ての人に『自由』と『自立』を与えるものなり!!


 今、偽りの『支配者』を討つ力を、我に与えよ!!」



 天井が破壊された玉座の間に、『サートゥルナーリアの大結界』の、黄金色の光が差し込む!


 『大結界』を『支配への叛逆者』として掌握したのだ!!


 ……やっぱり『おじいちゃん』は『孫』に甘い。


 そして、()()()()()()()()()!!


「 う あ ぁ ぁ ぉ ぁ ぁ っ !! 」


 私は『大鎌』を召喚する!それは『叛逆者』の象徴……偽りの王を討つ刃!!


「なぜだ!なぜ、我は敗れるのだ!?」


 混乱し、身動きが取れないゼウスが叫ぶ!


「あなたは、私を怒らせた……と言いたいところだけど、()()()()()()()()()のは、『王の器』として失格だと思うけどね?」


 私の『大鎌』が、ゼウスを斬り裂いた。


 神々しき雷が弾け飛び、轟音とともにゼウスは崩れ落ちた。







 倒れたゼウスの身体から、光が二つ、放たれる。


 一つは私の元に、もう一つは倒れたミトラ王の元に。あれは『太陽神』権能?


 でも、ミトラ王は、もう……そう思っていると、


「がはっ!……少し眠っていたようだ、ゼウスはどうなった!?」


 ミトラ王は突然、起き上がる!!そして、


「ぐはっ!……ここは、何処だ?私は今まで、何をしていたのだ!?」


 ゼウスも突然、起き上がる!!警戒する私達!!


 ゼウスの言葉から『正気』に戻ったようだが?




 静寂を破って、ゼウスは不敵に笑い出した。


「くははは、ふはははは!……私は、間違えたのです。貧しくて、辛くて、惨めで……しかし、両親は立派な人間になれと『ゼウス』という名前を、私に授けてくれた」


 ゼウスは床に座り込み、天を仰ぎ、涙を流す。


「……それだけが、誇りだった。勉強をして『ゼウス』様について学び、権能の知識を深めた……そうしている内に、私の『自尊心』が歪んでしまったのかも知れません。私は、多くの人に迷惑を掛けました……」


 ゼウスは、残された権能の力を集め、ナイフ程度の雷の刃を作る!


「……かくなる上は、自害して罪を償います!!」


 ゼウスは、自らの喉元に雷の刃を当て、今にも、皮膚が焼けようとしている!


 その時!ミトラ王が、ゼウスの手から雷のナイフを払い落とす!!


「ゼウス!貴様は、間違っている!!」


 ハッとし、ミトラ王を見上げるゼウス。


「何故ならば……大勢に迷惑を掛けたと思うのならば、まずは『謝罪』が先だ!もはや貴様の命は、貴様の物ではない!……それを忘れて、何が自害だ、罪を償うだぁ!……そう!被害者を無視しての贖罪など、愚の骨頂!!」


 ミトラ王は、ゼウスの前で腰を落とし、目を真っ直ぐに見る。


「ゼウスよ!我も『聖国』や『王国』の人々に、迷惑を掛けた。我も『謝罪』が必要なのだ!……一緒に『謝罪』して、罪を償ってくれるか?」


「……ミトラ、様!!」


 ゼウスは尚も涙を流し、ミトラ王はゼウスの肩を抱いた。








 王宮の城門前。


 『王国』の騎士団、『聖国』の戦士団、そして『聖剣団』と『悪魔』。


 三つ巴の戦いは、尚も続いていた。


 騎士と戦士が剣を交え、『悪魔』と『聖剣団』がそれを仲裁する。


 『赤い大結界』の影響こそなくなったが、戦場は暴力と混乱に支配されていた。




 その中を、ミトラ王はゼウスを伴い、ゆっくりと進む。


 その圧倒的な威圧感に、騎士も戦士も、思わず道を開けた。


 ついに、大将同士が睨み合う、本隊付近に辿り着く!



「  ……  止  め  よ  !!  」



 ミトラ王の咆哮が、戦場に轟いた。


 絶対的な威厳を持つその声に、誰もが動きを止める。


 戦場を覆っていた喧騒が、一瞬にして沈黙へと変わった。


 すべての強者達が、ミトラ王に注目する。


 ミトラ王は、その場に膝をついた。


「許せ……! 我が愚かさが、お前たちを、この戦いへと駆り立ててしまった!」


 ミトラ王は、まず『聖国』の戦士達に詫びた。


「私の身勝手により、あなた達を巻き込んでしまったのです! どうか、許してください!!」


 ゼウスもまた、隣で膝をつき、深く頭を垂れる。


 『聖国』の戦士たちは、状況を悟り、静かに俯いた。


 続いて、二人は『王国』の騎士達へと向き直る。


「『王国』の平和を乱したのは、我らだ!どのような罰も受けよう!!……だが、どうか『聖国』の戦士達だけは許してほしい!!」


「『王国』の騎士達よ!『王国』に住まう人々よ!!私の命で、償えるだけの償いをしたい……! だから、どうか『聖国』を、お許し願います!『聖国』は『王国』に対して、敵意など抱いてはないのです!!」


 二人の主従は、深く頭を下げる。


 それは、謝罪とともに、罪を償う覚悟を示す姿……


 『冬至』から、新たな一歩を踏み出そうとする姿だった。




 戦場に、静寂が広がる。


 そして、次の瞬間……


「「「 お お お お お お !!! 」」」


 『王国』の騎士達から、歓声が上がった!!


「やはり、あのミトラ王……只者ではない!!」


「ミトラ王も、側近も、潔い奴だ!!」


「強くて、熱い王ってのは、やっぱりカッコいい!!」


 なんと!敵であったはずのミトラ王に、歓声を送ってしまうのだった!!


 『聖国』の戦士達も、その様子に呆気に取られながらも、次第に感化され、歓声を上げる!!


 戦場だった場所は「ミトラ!ミトラ!!」の大合唱となっていた!!


 ミトラ王とゼウスの目から、熱いものが零れ落ちるのだった。




 高みから見守っていた私は、バルバトスとフェニックスに目を向ける。


 二柱とも、親指を立てて『戦果』を知らせてくれる。


 私もまた、ミトラ王とゼウスの元へと進み出た。


 強者たちが、再び沈黙する。


 私は、ありったけの大声で宣言する!!



「『王国』の騎士団も、『聖国』の戦士団も、ご苦労であった!!


 () () () () () () () () ()


 ……なかなか、有意義なものであったな!!」



 私の言葉に、一瞬の沈黙が流れる。


「「「……?」」」


 しかし、誰かが気付き、声を上げる。


「そういうことか!!」


 納得した強者達が、一斉に拳を掲げる!


「そうだ!これは合同演習だったのだ!!」


「俺たちは最初から、実戦形式の訓練をしていたんだ!!」


「合同演習、ばんざーい!!」


 そう!『犠牲者』は『ゼロ』。


 王宮が壊れてしまったのは残念だけど、直せば良い。


 ……私達は、この『戦果』を勝ち取ったのだ!!




 こうして、戦場は、祝宴の場へと変わっていった……


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