『聖国襲来』第10話・ゼウスの世界
「来るがいい!そして、我が権能の前に、ひれ伏すがいい!!」
ゼウスは、右手に陽光の剣を、左手に稲妻の剣をそれぞれ持った。
私達……私こと『女王』、ミトラ王、アルテミス、ペルセポネ、ハーデスは、一斉に剣や鞭をゼウスに振り下ろす。
……しかし、驚くべきことに、ゼウスは両手の剣で全ての攻撃を受けとめてしまう!!
「くははは!貴様らの攻撃、生っちょろいぞ!!」
その時、ゼウスの背後で空間が引き裂かれ、葛葉様が飛び出す!!
陰陽の秘術で気配を消し、忍び寄っていたのだ!
「取ったぞ!ゼウス!!」
葛葉様が、ゼウスに爪を突き付ける!勝っt……
その瞬間!ゼウスの姿が、掻き消えた!!
「……惜しかったなぁ、『皇国の女狐』!!」
……いや、違う。私は、息を呑む。
気付いた時には、ゼウスは、すでに遠く離れた場所に立っていた。
……時間が……止まって、いた!?
「……くっ!抜かった、か!?」
葛葉様の苦しそうな声。私は、そちらに目を向ける。
葛葉様が、壁に叩きつけられている!
「葛葉様!!」
いや、それだけではない。腹部が……抉れている!?
傷口から血が溢れ出し、床を真紅に染めていく。
「葛葉様、封印!!」
即座に、葛葉様を封印する!入れ替わりにより、損傷は誤魔化せるハズ!!
「……解放状態の葛葉が、しくじったようでござりますな?主殿、かたじけない!」
「いいえ、葛葉様。私の認識が甘かったのです。まさか、ゼウスが『サトゥルヌス』の権能を使って、時を止めるなんて!」
確かに【絶対神級】である『サトゥルヌス』なら、可能である。
「くははは!己の権能も禄に扱えない者が、権能を返せと戯言を言うのか?滑稽だな!!」
くっ、言わせておけば!!
「……『女王様』、冷静に!隊列を整えましょう!!」
アルテミスの声で、私は冷静さを取り戻す。
こういう時の、アルテミスは頼りになる。
「アルテミス、あなたはタンクとして、ゼウスの攻撃を受けなさい。ただし、無理はしないで受け流すこと!ペルセポネは、『ゼウス』の雷撃を魔法で相殺。ミトラ王は、『太陽神』の熱線を相殺してちょうだい!」
「はい!」「かしこまりましたわ!」「承知!」
みんな、異口同音に返事を返してくれる。
「葛葉様、傷を負っているところ申し訳ないのですが、陰陽の術にて、ゼウスを束縛する結界を張る準備をしてほしいのです」
「承知いたしました、主殿!」
私とハーデスは、お互いに頷く。
「ハーデスと私は遊撃!『時間操作』の隙を与えなければいいから、無理は禁物よ!」
ゼウスは、インヴィクトゥスの名に恥じない猛攻を繰り出す!!
『ゼウス』の雷撃と稲妻の剣、『太陽神』の熱線と陽光の剣、そして、油断すると『サトゥルヌス』による時止め!!
「くはははは!この力、まさに絶・好・調であるッ!……我が世の春が来たッ!!」
ゼウスは圧倒的な力で、私たちを押し込んでいた。しかし……
「私が、ゼウスの剣撃を受け流します!!」
アルテミスは、ゼウスの攻撃を予測し、受け流しながら防御を固める!
「アルテミス、焦らないで!雷撃は、わたくしが!」
ペルセポネは、アルテミスを回復しながら、魔法の障壁を展開し、ゼウスの雷撃を相殺する!
「『アポロン』よ、我に力を!我が、光でゼウスの力を封じる!!」
ミトラ王は、太陽の熱線を放ち、ゼウスの攻撃を相殺する!
「僕なら、あいつを止められる!誰かが、終わらせなきゃ!」
ハーデスは、巧妙にゼウスの攻撃をかわしながら、隙を見つけて反撃する!
私も、慣れない剣で遊撃するけど……いや、『時を止めさせない』ことが重要なはず!!
次第に……私たちの連携と個々の能力が噛み合い、ゼウスの攻撃は阻まれ、削がれていく。
「……こんなことが、このゼウス・インヴィクトゥスに対して!」
そして、戦いの中で……ゼウスの表情に、焦りの色が滲み始めた。
「 ぬ ぅ お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ !! 」
突如!!ゼウスの権能の覇気が、爆発的に膨れ上がる!!
「『真の太陽神』の力を見せてやる!!全てを薙ぎ払え!!」
それは、光。
ただただ、眩しい光。
天を裂き、大地を焦がし、あらゆるものを呑み込む光。
空間が焼き切れるような轟音とともに、すべてが白に染まる。
「そこを、どけぇぇぇっ!!」
その瞬間!ミトラ王が前に出た!!
私たちを庇うように、己の身をもって光を遮る!!
「『アポロン』よ!我に力を!!うおぉぉぉぉぉっ!!」
閃光と衝撃!!
玉座の間の天井が砕け散り、壁が崩れ落ちる!!
埃が舞い、視界が閉ざされる。
ミトラ王は……!?
「……ふっふふふ、はっはははは!!」
……笑っている!?
驚愕に目を見開きながら、ゼウスが呻く。
「……『真の太陽神』の一撃を食らって、なお立っているとは……」
ゼウスの声に、信じられないという色が滲む。
「 不 可 能 を 可 能 に し た の か !? 」
しかし、ミトラ王は、笑いながら答える!!
「 当 た り 前 の こ と を 、
当 た り 前 に し た ま で だ !!」
そして、誇らしげに告げる!
「……貴様の謀りではあったが、『太陽神』達の『試練』は、我を、この境地へと導いたのだ!!」
ゼウスは、納得のいかない顔をする……私も、だ!
「……あとは、頼、んだ……ぞ!」
ミトラ王は、ついに倒れる!そして、葛葉様が叫ぶ!
「主殿、今です!陰陽の術にて、ゼウスを捕らえん!《拘束符》!!」
その声に、ハーデスとペルセポネも呼応する!
「ハーデス!」「はい、ペルセポネお姉ちゃん!」
「「 冥 界 の 鎖 !! 」」
ゼウスは、三人の拘束で身動きが取れない!しかし!!
「残念だったな!まだ『真の太陽神』の権能は撃てるのだ!!」
ゼウスの『真の太陽神』の権能の圧力が膨らむ!!
また、あの権能が放たれる……その時!!
「……ゼウスよ、私は『太陽神』が、何たるかを教えられた!」
アルテミスが、前に出る!!
「真夏の暑い時期の太陽も『太陽神』を象徴するが、冬を乗り越えて『冬至』から、また燃え上がる太陽も『太陽神』の象徴なのだ、と!!」
アルテミスは、ゼウスを睨みつける!!
「私は、あなたを『太陽』だと、認めない!!
我が守護神『アルテミス』よ!我に力を!!
その身で、偽りの『太陽』を封じ込めよ!!
『 日 蝕 』 !!」
それは、天文学の知識を有し『再解釈』しないと発現しない、権能!!
『日蝕』は『太陽』を『月』が隠す現象!
「ぬぅ!我の『真の太陽神』の権能がっ!!」
『太陽神』の権能を封じ込められたゼウスは焦る!
「『女王様』!今です!!」
……本当に、底が知れない娘ね!
「覚悟なさい!ゼウス!!」
私は、剣を構えて走り出す!!しかし……
「……詰めが、甘いっ!!」
ゼウスは、ニヤリと笑い、『祝詞』を捧げる!
「 天 光 満 つ る 処 に 我 は 在 り 、
黄 泉 の 門 開 く 処 に 汝 在 り 、
出 で よ 、 神 の 雷 !! 」
しまっ、あれは、『雷神』の『祝詞』!!
天空の神『ゼウス』の、究極の雷の召喚!
天が、閃光に包まれた……




