『聖国襲来』第9話・冥王の帰還
妖孤と冥界の王。その戦闘の圧力に、私達は息を飲む。
ハーデスは、冥界の炎を放ち、葛葉様を追い込む。
しかし負けじと、葛葉様は、朧火を放ち対抗する!
ハーデスは『暴走』状態みたいね。冥界の王の権能を、極限にまで高めている!
それを御する葛葉様は、妖孤の体術と、陰陽師の技が冴える!
「お待たせしました、葛葉様!あとは私達に、お任せください!」
アルテミスとミトラ王は、ハーデスを牽制する。
「……すまぬ。お前が来るまでに、カタを付けようとしたが……流石『王国』の正統後継者、凄まじい強さよの!」
ハーデスの強さに、葛葉様は賛辞を送る……だが、今はそれが『敵』であることが厄介なのだ。
「ペルセポネ!『春の女神』の権能で、ハーデスに語り掛けるの!ハーデスを『正気』に戻すのよ!!」
しかし、ペルセポネは頭を振る。
「いいえ『女王様』!今、ハーデスに必要なのは『説得』ではなく『教育』ですわ!!」
なんですと!!一体、何をするつもりなの、ペルセポネ!?
ペルセポネが、冥界の鞭を召喚する!
「ハーデス!わたくし達とゼウスの違いが、わかるかしら?ゼウスは『ゼウス』様の『支配者』としての『悪い印象』に、取り憑かれているの!ゼウスは、その『権能に溺れてしまって』いる、哀れな存在!!」
ペルセポネは、冥界の鞭を振る!炎を切り裂き、無効化している!!
「今の、あなたも同じよ!確かに、冥界の王『ハーデス』は、強力な権能!……でも、扱い切れずに『暴走』してしまうのは、あなたが『未熟』だからだわ!!」
ハーデスは苦し紛れに、冥界の鎖を放つ!
「うっ……うがぁぁぁぁっ!!」
「その技は、わたくしには効かないわ!」
しかし、ペルセポネは左手をかざし、『春の女神』の権能で氷解させてしまう!!
「……あなたの心に残ってる、数年前の忌まわしい『事件』のときも『権能に溺れてしまった者』が原因だった。あなたの両親も……わたくしの両親も公爵として、その場にいて犠牲となったのよ!!」
それ故に、公爵家は取り潰しになった。ペルセポネは家族も居場所も失ったのだ。
同様に、その場にいたハーデスは、目の前で両親が犠牲になる光景を見た、と言われている。
「あっ、あぁぁぁぁぁっ!ああぁぁぁぁぁっ!!」
当時の光景が蘇ったのか、ハーデスは頭を押さえながら、悲痛な声を上げる!
怒りと悲しみの咆哮!!ハーデスの権能の圧力が渦巻く!!
形を持たぬ冥界の権能が、周囲を破壊する!!
ペルセポネは、傷付くのも恐れず、ハーデスに近寄る!!
「わたくし達は、『事件』から学ばなければならないわ!わたくし達が『権能に溺れてしまった存在』を少なくしていくのが、この『王国』の未来に必要なことなのよ!」
アルテミスとミトラ王が、援護に入る!
「ペルセポネ、防御は私達に任せてください!」
「ペルセポネよ、行け!ハーデス殿の元へ!!」
二人に頷き、ペルセポネは歩み続ける!
「……わたくしが『ペルセポネ・アカデミー』を作ったのは、そんな存在を、導くためなのよ!!」
ハーデスは気圧され、頭を振る。ペルセポネの声が届いているのかも知れない!
「ゼウスは『権能に溺れてしまった存在』!『ゼウス』様の『支配者』としての面に翻弄されて、自らの道を失いつつあるわ!わたくし達は、権能を正しく使い、誰もが平等に支え合う未来を、目指していくべきだわ!!」
ついには、ハーデスの場所まで、ペルセポネは辿り着く!
「そうよ、ペルセポネ!あなたの慈しみと愛の感情でハーデスの『ハーデス』としての権能に働きかけるのよ!」
ペルセポネは、私に頷き、ハーデスに語り掛ける。
「ハーデス、思い出して、わたくし達の絆を。あなたは、ゼウスの操り人形じゃない!あなた自身を取り戻して!」
「あぁぁぁ……ペル、セ……ポネ?」
ハーデスの目が、ペルセポネに向く。
「そう、ハーデス。あなたは、ただの暴力のための道具じゃない!あなたは、未来を作り出す力を持っているのよ!!」
ペルセポネは、ハーデスに優しく触れ、彼の頬に手を当てる。
「……覚えてる?辺境で、わたくし達が過ごした、穏やかな日々を。離宮での生活、あの安らぎに満ちた時間を。そして、わたくし達が『ペルセポネ・アカデミー』で学んだ知識と希望を!!」
「あぁぁぁ……ペルセポネ、お姉、ちゃん」
ハーデスの目に再び正気が宿り、権能が徐々に制御され始める。
「わたくし達の愛は何も壊さない。むしろ、それを守り育む力。あなたの権能は、その未来を切り拓くためのものよ。わたくし達一緒に、未来を作り出すの。」
「未来を……守る……?」
ペルセポネが、ハーデスを抱きしめる。
暴走が完全に収まり、ハーデスの目に完全な『正気』が戻る。
「そう、ハーデス。わたくし達の未来を守るために、力を合わせましょう!!」
周囲の冥界の王の覇気は収まり、私達は、ホッとする。
私は、ハーデスとペルセポネに声を掛ける。
「良かった、ハーデス!……ペルセポネ、ハーデスは王族の中でも、突出した権能の持ち主よ。故に暴走しがちだけれど、正しく導けば、これほど頼りになるものはないわ!あなたには、引き続きハーデスを導いて欲しいのよ!お願いできるかしら?」
ペルセポネは、私に頷き、ハーデスに語り掛ける。
「かしこまりましたわ、『女王様』。ハーデス、あなたの力は、確かに、この国にとって貴重ですわ。ですが、その力を、どう使うかが重要ですの。わたくし達とゼウスの違いは、権能をどう扱うかにありますのよ」
「わかった……権能を、どう使うかが重要なんだね。みなさん、僕を助けていただき、ありがとうございます。この力……『ハーデス』の権能は、この『王国』の未来のために使うと誓います!!」
若き王族・ハーデスの力強い宣言に、私達は自然と笑顔になった!
ペルセポネは、ハーデスに優しく微笑みながら、
「さぁ、わたくし達と共に、より良い未来を作り上げていきましょう!わたくし達の力は、誰かを傷つけるためではなく、全ての人々を守るために使われるべきですわ!!」
そう、決意を新たにするのだった!!
王宮の玉座の間。
『支配』の権能の対策を済ませ、私達は進む。
もちろん、私達を待つのは、あの男。
「さて、ゼウス。『真の太陽神』と『サトゥルヌス』の権能を返してもらいに来たわ。よろしくて?」
私の宣言を受けて、ゼウスは不敵に笑う。
「くははは、よくぞ、ここまで来たものだ。だが、我が力を奪うなど、夢のまた夢よ……」
ミトラ王が、ゼウスに叫ぶ!
「ゼウスよ、今なら引き返せる!投降し、我と共に罪を償おう!『聖国』の戦士達と『王国』の騎士達と人々を解放するのだ!!」
「くははは!『しぼりカス』共が、我に楯突こうなど無駄、無駄!!……この権能は、まさに世界を『支配』する能力!!」
しかし、ミトラ王の必死の呼び掛けに、ゼウスは尚も笑う。
「ゼウス!あなたの目的は何!?『聖国』や『王国』を混乱に落とし入れて、一体、何を成すつもりなの!?」
「『勝利して支配する』!それだけよ……それだけが満足感よ!……そして、我は、ゼウス・インヴィクトゥス!『不敗の太陽を手に入れしゼウス』!!……間もなく世界が、そう、我を讃えるのだ!!」
完全に『ゼウス』の『悪い印象』に、翻弄されてしまっている!
「ゼウスよ!私達が、あなたの『野望』を食い止めるわ!!」
私の宣言に続いて、仲間達が一斉に身構える!!
「ゼウス、あなたの『支配』は、ここで終わりです!『女王様』のために、そしてこの国のために、私は戦います!!」
「ゼウス、あなたは誤っているわ。愛と慈しみこそが真の力なのだと、わたくしは、ここで証明してみせるわ!」
「僕は誓った!この国の未来を守るために、この力を使うと!『ハーデス』……僕に、力を貸してくれるよね」
ゼウスは、冷笑を浮かべながら、一瞬で強烈な力を放つ。
「来るがいい!そして、我が権能の前に、ひれ伏すがいい!!」
メモリに追加:ペルセポネは『冥界の女王』の権能を完全掌握した。
ハーデスは『冥界の王』の権能を完全掌握した。




