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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第5章・女騎士アルテミスと聖国襲来の女王様

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『聖国襲来』第8話・太陽と月

「ところで、ペルセポネ。聞きたいことがあるんだけれど」


 私は、先を行くペルセポネに、話しかける。


「あなたは、どうやってゼウスの『神話的な結び付き』の権能に抗ってるの?」




 『神話的な結び付き』。主神『ゼウス』が、同じ『神話』に属する神々を、従わせる権能。そもそも『神話』の成り立ちまで遡って『再解釈』しないと、発現しない権能と言えるわね。




「……あぁ、わたくしは、自分自身に常に『支配』系の魔法を掛けていますの。それによって、他者の『支配』の影響を、受けないようにしているのですわ。『支配』の魔法や権能は、いわゆる『早い者勝ち』、先に掛けた者が優位ですもの!」


 なるほど。そういえば『クロノシア侯爵領』を襲った『アンデッドの騎士団』も、ペルセポネが『使役』していたせいで『掌握』できなかったのよね。


 ……そこまで考えたら、嫌味のひとつも言いたくなった。


「ふふふ、確かに『死体遊び』をする人は、自分が『操られる』恐れを、いつも持ち続けなければならないのね?」


 それがカチンときたのか、ペルセポネも言い返してくる。


「『支配』対策は、魔法使いとして当然の心得ですわ。むしろ、言葉ひとつで『絶対遵守の命令』を下せる御方こそ、その重要性を、お忘れだったようですわね?」


 ぐぬぬ。それじゃ、私が『サトゥルヌス』を奪われたのが、間抜けってことじゃない!!


「……待てよ?アルテミス達を『正気』に戻した後に、ペルセポネの『支配』の魔法をかければ」


「それですわ『女王様』!ゼウスの権能に掛かった者同士が、次々と操られて殺し合うより、よほどスマートですわ!!」


 えっ?そんなグロいこと考えてたの?


 ……いや、そこまで考えが及ばなかった時点で、私の方が、甘かったのかも知れない。







 私達は、アルテミスと対する、ミトラ王の場所に辿り付いた。


「やはり苦戦してるようね。どう?ミトラ王。私の自慢の剣・アルテミスは?」


 ミトラ王は、苦笑いをしながら私に返す。


「何とか持ちこたえているが、アルテミスの剣技は実に見事だ。貴殿らが来てくれたことで、戦局が変わることを期待している」


 そう言いつつ、ミトラ王の『アポロン』が閃光を放ち、空気を焼く。灼熱の波が放射状に広がり、アルテミスの接近を牽制する!


 アルテミスの特性を見抜き、適切に対処しているミトラ王は、流石である。


「ふん、あなた達が束になってかかってきても、私には勝てんぞ。ミトラ王、あなたの力を認めるが、私は『女王』に従う意志はない。ゼウス様こそが、真の王だ!」


 ゼウスの権能により、敵となったアルテミスが宣言する。


「アルテミス、今のあなたは、ゼウスの操り人形にすぎない。私達の力を合わせて、本当の『自由』を取り戻すべきよ。目を覚まして、アルテミス!」


 私の言葉に、アルテミスは、聞く耳を持たないといった態度で、剣を構える。


「『女王』よ、共に戦おう!アルテミスの強さは、私一人では対抗できないが、我らなら勝機がある。彼女の目を覚まさせるために、全力を尽くそう!」


「ええ、ミトラ様、『女王様』。共に戦いましょう。アルテミスを、ゼウスの支配から解放するのですわ!」


 ミトラ王とペルセポネは、私の方を向いて告げる。


「さあ、かかってこい!我が剣の力を思い知れ!」


 アルテミスが剣を振り上げ、走り出す!!


「二人とも、良く聞いてちょうだい!アルテミスの対策を話すわ。まずペルセポネ、あなたは魔法をバラ撒いて、アルテミスの接近を牽制してちょうだい!」


 ペルセポネは頷き、魔法を放つ!


 ただ、範囲魔法を放つだけではなく、精度の高い氷柱の魔法を組み込むことで緩急が生まれ、あのアルテミスを後退させている!!


「ミトラ王、あなたは『アポロン』を使って!『アポロン』の権能は、攻撃するための力じゃないの!『アルテミス』と『アポロン』の関係性を示すのよ!!」


 『アルテミス』と『アポロン』は、『神話』において双子の姉弟(兄妹)と言われている。


 ゼウスが『神話的な結び付き』を使って『支配』してくるならば、私達も、それを使って『解放』する!


「ミトラ王!『アポロン』の力で、私の想いをアルテミスに届けて!」


 私はミトラ王に、お願いする。ミトラ王は、権能の覇気を高めて応える。


「『女王』よ!『アポロン』の権能を使って、貴殿の想いを届けよう!『アポロン』よ、主従の架け橋となれ!!……アルテミスよ、思い出せ!『女王』と共に過ごした日々を!そして、その間にある絆を!!」


 私は、アルテミスに想いを叫ぶ!


「アルテミス!私は、あなたのこと大切に思っているわ!私たちの関係は『支配し、支配される』だけの関係じゃなかったはずよ!私にとっては『愛し、愛される』関係、あなたにとっては『尊重し、尊重される』関係だったはずよ!思い出して、アルテミス!!」


 『アルテミス』と『アポロン』の『縁』により、私の声が聞こえやすくなったのか、アルテミスが頭を振る!


「……う、うるさい!そんな、戯言に……!いや、私には……ゼウス様の、命令が……」


 アルテミスは、月光の弓を召喚する!


「ミトラ王!!」


「承知した『女王』!」


 ミトラ王も、弓を召喚する……それは『アポロン』を象徴する、陽光の弓!!


「『アポロン』よ!我に力を!日輪の輝きを!!」


 アルテミスは、ペルセポネの魔法を避けながら、権能を高める!


 一方、ミトラ王は陽光を纏い、きらびやかな鎧が一層輝いて見える!!


「我の、この弓が光って唸る!貴殿を倒せと、輝き叫ぶ!!」


 ミトラ王は『太陽神』の『祝詞』を『アポロン』に捧げる!!


 その『祝詞』が、終わらない内に……


「シッ!!」


 アルテミスが矢を放つ!周囲の魔法は、矢の圧力に負けて霧散してしまう!!


「くっ!!」


 ミトラ王も、権能が高まり切らない内に、射ざるを得ない!!


 青白い光の矢と黄金の光の矢!


『月の女神』と『太陽神』……その性質から、矢は惹かれ合い、拮抗する!!


「 お ぉ ぉ ぉ ぉ っ !! 」


「 あ ぁ ぁ ぁ ぁ っ !! 」


 両者、譲らず、光の奔流となって、周囲を染め上げる!!


「アルテミス!私は、此処にいる!!此処いるわ!!」


 その瞬間、青白い矢は霧散し、黄金の矢がアルテミスを射る!!







 『アポロン』の矢に、吹き飛ばされたアルテミス。


「私の、心は……『女王様』……ミトラ……あなた達の、言葉が、心に響く……」


 私は、倒れたアルテミスに駆け寄る!


「よかった『正気』に戻ったのね!アルテミス、あなたの剣は、ただの武器ではないわ。それは、あなたの魂の一部であり、私達の絆の象徴でもある。私達は、ただの主従関係ではない。私達は、仲間であり、家族なのよ!!」


 私は、アルテミスの身体を起こす。ペルセポネが権能での回復をする。


 ミトラ王も、アルテミスに近寄ってくる。


「アルテミス、無事で良かった。貴殿は、かつて光の中で輝く戦士だった。その輝きは、今も消えていない!ゼウスの影から抜け出し、再び、その光を取り戻すのだ!!」


「ミトラ様……私の心を信じてくれた、あなたに、感謝いたします。私の剣は、()()()()()()()()()()()()!」


 ちょっ、それ、ミトラ王に『忠誠』を誓うって、コトォ!?!?!?


 あーーーっ!唐突な、NTRにより、脳がーーーっ!!


「ああ、アルテミス!!何か知らないけど、ミトラへの『忠誠心』まで芽生えちゃってるの、実に、あなたらしくて素敵ね!!……私のことなんか、忘れちゃったのね!?」


 アルテミスなんか、もう知らない!ふーーーんだ!!


「ミトラ様を敬うのは、『女王様』が彼を信頼しているからです……それが、私の『忠誠』の証です!」


 アルテミスは、言い訳めいたことを言っている。







 だけれどアルテミスは、私の手を取り、目をまっすぐ見て、


「……あなたの言葉と信念は、私に届きました。ありがとうございます!」


 そう、微笑みながら、言ったのだわ!!

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