『聖国襲来』第6話・駆け抜ける嵐
ここは『王国』の王宮前。
空は陰鬱な灰色の雲に覆われ、重苦しい気配が立ち込めている。
眼前には、何百年もの時を耐え抜いた巨大な城壁と、鋼鉄を何層にも重ねた堅牢な城門。
そこに立ち並ぶ衛兵達の鎧は、冷たい鋼の輝きを放っている。
私こと『女王』、葛葉様、ミトラ王、そして『ソロモンの72柱の悪魔』は、屈強な強者達と対峙している。
右側には『王国』が誇る騎士団、約2000人。
左側には『聖国』が誇る戦士団、約2000人。
私は、そんな強者達に、大声で宣言する!
「我らは、新たな王・クロノス陛下に『異議申し立て』に参った!我らの行動は『デモ活動』である!速やかに道をあけられよ!!」
そう。あくまでも『デモ活動』である、という体裁を取る。
『戦争行為』ではないことを、明言しなければならない!
そうでなければ『第9条・戦争の放棄』により、行動が制限されてしまうからだ!
あちらから返答がある。あれは『聖剣団』だろうか?
「『デモ活動』の申請は受理していない!すぐに解散されよ!……さもなくば『治安維持』のために『実力行使』することになる!!」
……知恵者がいるようだ。これで両者がぶつかったとしても『戦争行為』ではなくなった!!
私は、ひときわ大きな声で、宣言する!!
「…… な ら ば ! 押 し 通 る !!」
『王国』の騎士達、『聖国』の戦士達から、地鳴りのような怒号が聞こえてくる!!
しかし、一部の動きがおかしい!
「義ある者は、我に続け!王宮の城門を開けよ!『女王様』を守るのだ!!」
それは『聖剣団』!!
彼らは『赤い大結界』から放たれる『支配』の権能に耐え、私への『忠誠心』を保ち続けてくれているのだ!!
「『悪魔』の、みんな!王宮の外は頼んだわよ!……バルバトス、グシオン、フラウロスは『聖剣団』を助けてあげて!」
「……わかった」「おう!」「流星号と呼んでくれ!」
流星号ってなんだろ?取りあえず、まかせた!
「マルバス、フェニックス、ブエルは後方待機!悪魔も、騎士も、戦士も、怪我人は全て治療して!……アンドラスとサブナックは、怪我人を運んで!」
「仰せのままに」「御意!」「撃滅!!」「……ウザい」「お前ら、うるせぇよ!!」
大丈夫か?救護班。ウザい、って私に対してじゃないよね?
そう。『誰か』を失ったら『マイナス』になる。
救護班の活躍が『戦果』を分けると言っても過言ではないわ!
「パイモン、バティン……バルマも来てくれたのね!あなた達は、私達の突入を援護して!突入後は、騎士や戦士が王宮に入らないようにして!」
「わかったよ!」「かしこまりました」「はい!」
この三柱は、連携が取れてるはずだから、安心して良いわね。
「僕達は、呼ばれないみたいだね、兄さん」
「そうだな、アスタロトよ」
ウァサゴとアスタロトが、サボっている。
あなた達は、由来を知らない人が多いのでは?
「みんな!なるべく戦死者が出ないように、心掛けてちょうだい!」
この数の『悪魔』ならば『勝つ』ことは、そんなに難しくはない。
でも『なるべく戦死者が出ないように勝つ』のは、困難であろう。
それ故に、私は『72柱の悪魔』すべてを召喚し、各々の『悪魔』も眷属を召喚している。
私達は『勝ち』以上のものを、目指しているのだ!!
人間達も、負けてはいない!
『王国』の騎士達は、密集隊形で盾を構えて守りを固める!
その防御を可能にしてるのは、鍛え上げられた肉体と、強力な対魔法のエンチャントを施した盾や防具。
『悪魔』も、物理攻撃に切り替えて、対応せざるを得ない!
そして、騎士達は一柱の『悪魔』を複数人で囲い込む!
また、バエルにも複数の騎馬重装騎士が、突撃している!!
そう。だからこそ、アルテミスが『1対1では最強クラス』であっても、『十指に入る』と評されるにとどまるのだ。
騎士とは、本来『軍』で戦うものなのだから!!
一方、『聖国』の戦士達。
こちらは、様々な戦術で翻弄する!
重装の戦士達が突進して、『悪魔』の隊列を崩す!
軽装の戦士が飛び回り、馬上からは弓を放つ!
そして、あれは!?巨大な動物……象!?
まさしく、質量の暴力!!
その巨体が『悪魔』達に突っ込み、戦場を蹂躙する!!
それらを、適材適所に投入してくるのだ!!
これは、後に『王国』の歴史において『人魔事変』と呼ばれる出来事……
数々の『英雄』が生まれ、そして奇跡的にも『戦死者』は『ゼロ』であった!!
特に、『聖剣団』の騎士たちの活躍は、目覚ましかった。
彼らは、三柱の『悪魔』の加護を受け、戦場を駆けたのだ!!
その奮闘ぶりは、後に『ソロモンの悪夢』と呼ばれ、
やがて歌劇となる……しかし、それはまた、別の話である。
そして私、葛葉様、ミトラ王は、王宮への侵入に成功する!
私達は、手分けして、自分の役割を果たすのだった!




