『聖国襲来』第5話・太陽は、また輝く
クロノスの正体は、ゼウスであった!
『王国』の正統後継者・クロノス殿に、権能を用いて『変装』していたのだ!!
またゼウスは、その『神話的な結び付き』を悪用して、我の中の『アポロン』を使い、操っていたのだ!!何たる、迂闊!!
究極の力を手に入れたゼウスは、宣言する!
「我が名は、ゼウス・インヴィクトゥス!!
『不敗の太陽を手に入れしゼウス』!!」
塔から落とされた我を嘲笑うように、奴の声が響く……
これが、我の最後になるとは。我は、何て愚かなのだろうか。
我は、『神聖アリヤーナ王国』が国王・ミトラ。
ゼウスに唆され『聖国』を、そして『王国』を混乱に陥れた罪人。
……『太陽の光』がない。ここは『冥界』であろうか、それとも……
「ミトラ王、気が付いた?あなたは塔から落ちてきて、葛葉様に助けられたのよ!」
『王国』の『女王』と、幼い見た目なのは『皇国』の葛葉殿か!!
敵かっ!?我は、身構える!!
……いや、我は一度、死んだ身だ。今更、命を惜しむなど、滑稽だ!
「……助けられた、と言ったな。葛葉殿と、お見受けする。感謝、申し上げる」
「とんでもないことでござります、ミトラ様。ご無事で何よりです!」
『噂話』に聞く『皇国の女狐』は、実際会ってみると、可憐だった。
ここは『王国』の『荒れ果てた領地』の廃坑跡のようだ。
道理で、我が戦士達が、見付けられないはずだ。
「ミトラ王、だいたいの顛末は把握してるけど、あなたから、クロノスのことを聞きたいの。お願いできるかしら?」
そうだ!クロノス……いや、ゼウスのことを知らせねば!!
「クロノスは、ゼウスが権能で『変装』した姿だったのだ!!奴は『神話的な結び付き』の権能を悪用して、我や貴殿の仲間達を操っていたのだ!!」
ショックであるはずだ。生きていたと思っていた自分の兄が、偽物であり、敵であるのだからな!
しかし、『女王』と葛葉殿は、顔を見合わせている。
「おおよそ、私達の予想通りですね、葛葉様」
「左様でござりますな、主殿。ミトラ様、読者様への説明、感謝いたしまする」
我は、拍子抜けしてしまった。
「……ごほん!ミトラ王、あなたはクロノスを騙るゼウスに、『太陽神』の権能を複数『習合』して権能を強化するように提案された。ゼウスは、その時に『アポロン』を『習合』させ、あなたを支配下に置いた。アルテミス、ペルセポネ、ハーデスを、ゼウスが支配下に置いているのは『神話的な結び付き』ということね?」
説明を聞いていて、我が身を情けなく思った。
「その通りである。奴の目的は『サトゥルヌス』の権能を奪い、我の『太陽神』の権能を強化することであった。奴は、古の神々の知識を持ち、権能の移行や強化を行うことで『世界の支配』を、企んでいるやも知れん!」
騙されたことよりも、大勢の人間を危険に晒したことが、申し訳ないのだ!!
「『王国』の『女王』よ!我が至らぬばかりに、奴の暴挙を許したのだ!我は、奴を止めるためなら、何でもやるぞ!!」
すると葛葉殿が、我に微笑む。
「ミトラ様、どうか御自分を、あまり責めないでくだされ。ゼウスの脅威は、最早、大地『ガイア』の問題。共にゼウスの陰謀に、立ち向かいましょうぞ!」
そして『女王』も、我に笑いかける。
「ええ、ミトラ王。私達が力を合わせれば、きっと、ゼウスを倒すことができるはずよ!!」
『太陽の光』が届かない場所、と嘆いていた。
だが我は、ここで新たな仲間を得たのだ!
我らは向き直って『作戦』を練る。
「ミトラ王、確認したいのだけれど、あなたの権能は全て奪われてしまったの?」
我は、過ちを犯したのだ。『太陽神』達が見限っても、文句は言えまい。
我は、権能の覇気を高めてみる。
「……これは『アポロン』かっ!?」
道理ではある。『太陽神』の権能を、送り出すために残っていたのかも知れない。
それに、我に残しておけば何かあった時に支配下に置けると、ゼウスが考えたのかも知れない。
……だが我には、我のことが心配で残っていてくれた……そのように、感じた。
「……『アポロン』ね、使えるかも知れないわ!」
我の気持ちを余所に、『女王』はニヤニヤしている。
絶対、良からぬことを考えている顔だ!!
『女王』が、作戦を説明する。
「外野の『王国』騎士達や『聖国』の戦士達は、私の新しい仲間である『72柱の悪魔』に抑えてもらうわ!王宮に突入後、まずは、ゼウスの支配下に置かれた者たちを取り戻すわ!」
道理であるな。相手の戦力を削ぎつつ、自身の戦力を補充する……将棋かっ!?
「具体的には、葛葉様がハーデスを抑えている間に、ミトラ王はアルテミスに揺さぶりをかける。その間に、私はペルセポネの目を覚まさせるわ!……それでね、ミトラ王。あなたには、王国最強の騎士・アルテミスを抑えてて、もらわないといけないわ」
『女王』は、我の目を真っ直ぐに見て告げる。
「あなたには、私達と、儀式をして貰いたいの。『アポロン』の祭典・ピューティア祭を行うことによって『アポロン』の権能を強化するの!」
なるほど。『女王』の策略とは、これのことか!
確かに、アルテミスの『月の女神』の権能に対するには、我の『太陽の神』の権能が相応しい!
「『女王』よ、了解した!アルテミスを抑えるためにピューティア祭を行い、『アポロン』の権能を強化するという策、見事なり!!」
『女王』が、怪訝そうな目を向けながら尋ねてくる。
「あなた、『アポロン』のせいで痛い目にあったのに、『アポロン』に忌避感は無いの?」
「?……何故、そうなる?『太陽神』達が、我を見捨てたのは、我が不甲斐ないから。ゼウスに『太陽神』の権能を奪われたのは、我がゼウスの人となりを見誤ったから。むしろ、こんな我のために残ってくれた『アポロン』を嫌う道理などない!!」
『女王』は、驚いたような顔をする。
「……ふふふ。あなたに『聖国』の戦士達が従う理由が、わかったわ。これじゃあ『サートゥルナーリアの大結界』が、効かないはずだわ!」
そして何故か、微笑んでいた。
宴。周囲に火が焚かれ、皆、忙しそうに準備を始める。
彼らは、悪魔。異形なれども、その権能の圧力は凄まじい。
手伝いを申し出たが、御神体は動くな!と叱られた。御神体……
我は、祭壇の席で、準備を待たせてもらっていた。
権能の力を高めてみる。『アポロン』と意思疎通するためだ。
「『アポロン』よ。我は、我を慕ってくれた『聖国』の戦士達と、迷惑を掛けてしまった『王国』の騎士達や人々を、ゼウスの『支配』から解放したい……頼む、手伝ってくれ!!」
我が内なる『アポロン』の権能は、陽光の様な波動を放つ。
ああ、あたたかい……
「……ありがとう、『アポロン』!!」
ピューティア祭の準備が整ったのか、『女王』と葛葉殿が近寄ってくる。
我に、『女王』が語り掛ける。
「ゼウスに操られていたとは言え、あなたの『太陽神』の権能を強化したい、って意志には、邪念がなかったわ。あなたの要請があれば、私は喜んで聖国に行ったと思うわ!」
顔を上げて『女王』の目を見る我に、『女王』は続ける。
「あなたは、本当に太陽のような人。人々を惹きつけ、人々を導く事ができる人」
『女王』に続き、葛葉殿も語る。
「ミトラ様、主殿の言葉通りでござります。あなたの本質は、太陽のような光を放つ存在です。ゼウスに対抗するためには、その光を最大限に輝かせる必要がありまする」
『女王』も、葛葉殿の言葉に頷く。
葛葉殿は、我に手を差し伸べながら、告げる。
「共に力を合わせ、ゼウスを打倒し、この『王国』と『聖国』を取り戻しましょうぞ。必ず成功します!」
我の視界が、涙で滲んだ。我自身が、泣いていることに戸惑う。
こんなこと『太陽神』の『試練』では、なかった!
「……ありがとう、『女王』、葛葉殿。貴殿らの言葉に、我は力を得た。ゼウスから奪われた仲間達を解放し、再び我らの力を結集させよう!」
そうだ!我には『アポロン』がいる!『女王』と葛葉殿がいる!!
ゼウスから『聖国』の戦士達と、『王国』の騎士達や人々を解放する。
……それから詫びよう!その上で、罪を償おう!
今、此処こそが、我の『冬至』なのだから!!
決意を新たにする我に、『女王』が朗らかに宣言する!
「さあ、『72柱の仲間達』を紹介するわ!みんなで、ミトラのために祭を開くのよ!太陽神『アポロン』の祭典・ピューティア祭を、みんなで楽しみましょう!」




