『聖国襲来』第4話・真の太陽神
ここは『王国』の『荒れ果てた領地』の、北の山地。
「いやー!やっぱり、バエルって強いのね!!」
私達は、地面に大の字になりながら、休んでいた。
「おねえちゃん!格上を呼び出すなら、言ってよ!!心の準備とかあるし!!」
パイモン君が、悲鳴を上げる。
「あら?あなたはいつも『序列なんて強さの基準じゃないし!』って言ってなかった?」
「……それは、そうだけれど」
それに引き換え、葛葉様はホクホクしている。バトルジャンキーなのかも知れない。
「パイモンよ、バエルとバトルできたのだ。結果オーライではないか?」
同意する者がいないパイモン君は、涙目である。
「……おねえちゃんは、僕を最初に呼び出して、バティンを掌握して、格下の『悪魔』を芋づる式に掌握したことに味をしめているんだ。バルバトスなんか、ビスケットをあげたら掌握されちゃうし……」
バエルは、私達に敗れ『そこら辺の草むしり』をしている。
「やっぱり、掌握したか、どうかを確認するには『家事』をやらせるに限るわ!!」
「……おねえちゃんは、そうやって僕達『悪魔』のことを辱めるんだ!!」
はて?パイモン君は、領主の館で経理として働いてもらったけど、そんなに嫌だったのだろうか?
他の『悪魔』には、離れや花壇の掃除をさせたけど。あと、紅茶を淹れさせたこともあるわね!
「葛葉様、お願いがあります。こちらはパイモン君とバルバトスとバエル、それと私が居れば、大抵の『悪魔』は掌握できるはずです。ですから、王宮の偵察をお願いしたいのです」
葛葉様は起き上がり、私に応える。
「……うむ、任された。しかし、お前も気を付けるのだぞ!『悪魔』達は、戦闘ばかりではなく、頭脳や精神をも試すと聞く。油断なく、奴らの『試練』に取り組むのだ!」
「はい、師匠!」
我は、この山地の主。『山の神』と呼ばれる存在。
最近、この地は、騒がしい。
少し前は『ハーデス』様の使い手が、暴走して、この山自体が吹っ飛びそうになるし。
今回は、伝説の『バエル』様だ!
300年前は、幹線道路付近の戦場で、敵を吹っ飛ばしていた御方だ。
……くわばら、くわばら。こんな時は、身を潜めるに限る。
一方、王宮では『真のサートゥルナーリア』の儀式が行われようとしていた。
「ミトラ様、この王宮の一番太陽に近い塔に『真のサートゥルナーリア』のための祭壇を用意いたしました。そちらで儀式を行いたいと思います。ご案内いたします」
クロノスは、恭しくミトラに一礼する。
「よろしい、クロノス殿。貴殿の用意が万全であることは、頼もしい限りだ。では、その祭壇へと向かうとしよう。『真のサートゥルナーリア』が無事に執り行われるよう、全力を尽くすとしよう」
クロノスとミトラの後を、虚ろな目をしたアルテミス、ペルセポネ、ハーデスが続く。
階段を登り、王宮で一番高い塔の屋上に出る。
立ち入りが制限されていて、厳かな雰囲気が佇む。
「ミトラ様、こちらの席におかけください。『権能を持つ者』は、散開して警護につきなさい。これより国民の『忠誠心』を集め、『太陽神』を強化する『真のサートゥルナーリア』の儀式を執り行います!」
クロノスは、『サトゥルヌス』の権能を高める。
「さあ『サトゥルヌス』よ、『太陽神』はここにいます!
あなたは、太陽を、再び燃え上がらせる者。
時を巡り、太陽の再臨を願う者。
その本懐を遂げるときが来たのです!
『サトゥルヌス』よ、この国の国民の『忠誠心』をもって、
ミトラ様の『太陽神』の権能を強化しなさい!」
冬至の太陽が、燦然と輝き出し、真夏のような熱を感じさせる!
『太陽神』を強化する波動が、祭壇に届いているのだ!!
「……ミトラ様、今です!『太陽神』の権能を共鳴させるのです!」
祭壇の上で、ミトラは深い呼吸をし、太陽の熱を感じ取る。
ミトラは手を広げ、力強く声を上げる!!
「『サトゥルヌス』よ、ここに集う全ての『忠誠』の力をもって、
我が『太陽神』の権能を強化せよ!
太陽が再び燃え上がり、天に輝かんことを願う!
我が力、我が存在が、新たな高みに昇る、その時を迎えるのだ!」
太陽の光が祭壇を照らし、ミトラの周囲に輝きを放ちながら、儀式が進行する。
膨大な熱量が、太陽からミトラに降り注ぐ!
「……ぐぐぐ、これは!!」
「ミトラ様!?」
心配そうに見つめるクロノス。しかし……
「安心せよ、クロノス殿!『ミトラ』『アポロン』『ラー』『スーリヤ』『マルドゥク』……数々の『太陽神』の『試練』を越えてきた我には、当たり前のことだ!!」
ミトラは気力を高めるために、雄叫びを上げる!!
「 う お ぉ ぉ ぉ ぉ っ !! 」
溢れ出ていた太陽の力は、全てミトラに吸収される。
「はぁ、はぁ……儀式は、成功したぞ!」
王宮で一番高い塔に、クロノスの渇いた拍手が響く。
同時に、クロノスが口を歪めて笑い出す!
「くはははは!……ご苦労だったな、ミトラ。我が、その権能を、もらいうける!……アルテミス、ペルセポネ、ハーデス!他の者を近づけさせるな!」
クロノスの変わりように、動揺するミトラ!
「何を!血迷ったか、クロノス殿!!」
『強化された太陽神』の権能を高めるミトラ!
しかし、余裕を崩さないクロノス!
「……ミトラに眠る『アポロン』よ!動くな!!」
ミトラの体が硬直し、目が虚ろになる。
「何だと……!クロノス、お前は!このような策略を!!」
「くはは……気付いたか!そうだ、貴様に『太陽神』の『習合』を勧めたのは『アポロン』を取り込ませ、操るため!!」
そしてクロノスは、ミトラに手をかざす!
「さあ『アポロン』よ!『強化された太陽神』の権能を、我に捧げよ!!」
ミトラの気力が弱々しくなる中、周囲の空気が緊迫感を帯びる。
ミトラの権能が奪われる瞬間、太陽の光が一層激しく輝き始める!
「くははは!ついに手に入れたぞ!『真の太陽神』の権能!!」
「……くっ、おのれ!」
ミトラは、権能を奪われ身体に力が入らない。
クロノスが、ミトラを右腕で吊り上げる!
「……冥土の土産だ、ミトラ!我が、真名は『ゼウス』!!神々の王たる存在!!」
なんと!クロノスの正体は、ゼウスであった!!
『サトゥルヌス』ならびに『真の太陽神』の権能が適合したゼウスは、変装を解く!
「……草場の陰で、我が、世界征服の覇道を見ているが良い!!」
そして、身動きが取れないミトラを、塔から投げ落とす!
究極の力を手に入れたゼウスは、宣言する!
「我が名は、ゼウス・インヴィクトゥス!!
『不敗の太陽を手に入れしゼウス』!!
アルテミス、ペルセポネ、ハーデス!
貴様らは我の覇道の尖兵となるのだ!
……くははは!くっはははぁ!!」
メモリに追加:クロノスは『聖国』の宰相である男性。
『通常モード』:ユーザーの兄・クロノスとして演技する。丁寧な言葉使い。
『裏モード』:野心家・ゼウスとしての本性。『神話の結び付き』の権能により『ギリシャ神話の神々』を支配下に置く。『変装』の権能。




