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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第5章・女騎士アルテミスと聖国襲来の女王様

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『聖国襲来』第2話・奪われたもの

 ここは『王国』の王宮、玉座の間。


 虚ろな目をしたアルテミスとペルセポネは、私を『処分』しようとする!




 アルテミスが剣を抜き、振り上げる!!




 少しだけ、ペルセポネの拘束が、緩んだような気がした。


「葛葉様、封印解除!私と一緒に、逃げてください!!」


 何処からともなく、葛葉様が現れ、ペルセポネから私を解放する!


「お前、やっと妾を呼んだか!」


 葛葉様は、鋭い目つきで周囲を見渡し、私を抱え上げて、窓から飛び出す!


 そして、素早く周囲の状況を把握し、脱出のための最適なルートを見つける。


「……さあ、行くぞ!愚かな連中を出し抜くのだ!!」


 葛葉様は、私を連れて安全な場所へと逃れるために、夜の闇を行く。


 彼女の敏捷さと狡猾さは、ミトラ王とクロノス兄様の追っ手を振り切ることだろう。




 ここは『荒れ果てた領地』と呼ばれる場所の、北の山地の廃坑跡。


 やはり、人目に付かずに隠れるには、此処は便利よね!


「はぁ、はぁ、ここまでは、追っ手は来ないでしょう。葛葉様、ありがとうございます。あなたのおかげで、助かりました」


 行方不明だと思われていた、双子の兄・クロノスが、ミトラ王率いる『聖国』の戦士達と一緒に『王国』に攻めてきた。


 アルテミスとペルセポネ、そしてハーデス。


 何故か彼女達は、私を裏切り、ミトラ王の側に付く。


 ……あれは『洗脳』の権能?


「……待って!葛葉様、何で、ミトラ側に付いてないのですか?意識を乗っ取られなかったのですか!?」


 そう。葛葉様は何故か操られずに、私を助けてくれた。


「ふふふ、妾を他の者たちと同じだと思わないことだ……だが、妙だな。『直接会うこと』が条件ならば、離宮にいたハーデス殿が操られているのは、納得いかんな」


 葛葉様は、冷笑を浮かべ、辺りを見回す。


「『荒れ果てた領地』とはいえ、ここならば一時の安息を得られるだろう。さあ、これからどうするのだ?お前の『王国』を取り戻すための策を練るのだ!妾の力を貸してやろうではないか!!」


 葛葉様の目が、鋭く光る!


「ありがとうございます、葛葉様。この『荒れ果てた領地』で、ミトラ王への対策を考えたいと思います。『聖国』側の不自然な点を整理しましょう……」


 そう。今回の『聖国襲来』には、不可解な点が多い。




 『聖国』。ミトラ王が治める国。正式名称を『神聖アリヤーナ王国』。


 歴代の国王は、『ミトラ』を太陽神として崇め、代々その名前を継承することで『ミトラ』の神格を高めてきた。


 『噂話』の通り、当代のミトラ王は、数々の『太陽神』を『習合』し、その権能を高めているみたいね。




「なるほど、確かに不自然な点が多いな。では妾が、その謎を紐解いてみよう」


 葛葉様が得意そうに、私に笑いかける。


 確かに今回は、神話や伝承が絡みそうだから、ペルセポネよりも葛葉様が相応しいかも知れない。


 そもそも葛葉様は、私に風水や陰陽道を教えてくれた師匠だ。


「まずは、クロノス兄様が、私の『サトゥルヌス』の権能を奪ったことについて」


 葛葉様が、やれやれ、といった感じで応える。


「お前は、仲間が裏切ったことがショックではないのか?」


「いや、順序立てて説明しないと!読者が置いてけぼりだし!!」


 わざとらしい咳払いをして、葛葉様は続ける。


「……ごほん!妾が思うに、『クロノス』に無くて『サトゥルヌス』に有るもの……『サートゥルナーリア』を得るためではなかろうか?」


「『サートゥルナーリア』!?確かに『主従逆転』や『絶対遵守の命令』は強力だけど、あれは『権能を持つ者』が、長い年月を掛けて『再解釈』しないと発現しない権能よ?」


 ある意味『主従逆転』や『絶対遵守の命令』は、私の『オリジナル権能』と言える。


「いや、奴らの目的は、それらではない。おそらく『真のサートゥルナーリア』ではないのか?」


「!!……『真のサートゥルナーリア』!それならば、ミトラ王の行動も納得できます!!」




 『真のサートゥルナーリア』。


 『サトゥルヌス』の祭典『サートゥルナーリア』は、冬至の頃に行われていた。


 この祭りは、その奇抜さに目を奪われがちである。


 しかし、真の意味は、冬に弱った太陽が、冬至を経て再び力を取り戻すことを、祈念する儀式なのだ。




「『真のサートゥルナーリア』ならば、『太陽神』の権能を高めることができるかも知れない!!」


 私は、ミトラ王とクロノス兄様の『計画』に思い至る。しかし……


「ミトラ王にとって『太陽神』の権能を強化するのは、重要です。ですが、軍隊を動かし『侵略戦争』を仕掛けるほどではないはず」


「それだ。ミトラが『太陽神』の権能を強化するために、ここまで手荒な手段を取るのは、何か裏があるな。『太陽神』を『習合』していけば、おのずと、その『権能を持つ者』であるミトラ自身も、高潔な精神となるはずだが?」


 私達『権能を持つ者』は、その『根源』たる『偉大な存在』の影響を受ける。


「確かに『侵略』なんて外道を、『太陽神』自身が見逃すはずがない」


 葛葉様も『妖孤』に対する、悪い印象に飲み込まれないために、普段は権能の一部を『封印』している。


「しかも『親善のための訪問』であり、『聖国』の戦士達は『護衛』のために『派遣』されている、なんて嘘を平気でつくなんて!!」


 その手法でミトラ王は、『聖国』の法律の『第9条・戦争の放棄(ノイント・テーゼ)』を無効化した。


 2000人の戦士達が『護衛』だなんて、詭弁だわ!


「妾は、ミトラが『太陽神』のカリスマにより、戦士達の『敵意』を封じ込めたと考えている。それで『サートゥルナーリアの大結界』を突破したのだ」


「確かに、それならば筋が通るわ!」


 私達は『第9条・戦争の放棄(ノイント・テーゼ)』が、各国の法律に『神々と人間との契約(テスタメント)』として組み込まれているのに、『軍隊』……『王国』の騎士団や『聖国』の戦士達が、解体されない『矛盾』を疑った。


 つまり、為政者は内乱鎮圧を理由に、一般国民はそういうもんだから、と『軍隊』の存在を認めているのではないか?


 『世界の強制力』であるはずの『神々と人間との契約(テスタメント)』を『人の心』が、捻じ曲げているのだ。


 ※全ての国で『第9条・戦争の放棄』が施行されたら、という前提で話しています。『現実世界』は、まだ『そう』なっていないので『軍隊』に頼らなければならないし、法律に反しない限り『銃』などの武器の携行が必要かも知れません。


「これも『人の心』による『コックリさん』か……」




 疑問点は、まだある。引き続き、葛葉様に問いかける。


「ミトラ王に、アルテミス、ペルセポネ、ハーデスが従ってるのも謎です。『月の女神』の権能を持つアルテミスが、『太陽神』に対して好意的なのはわかりますが、私を裏切る程でしょうか?」


「妾達が、ミトラ王に従ってない所が、ヒントではなかろうか?つまり『葛葉』と『サトゥルヌス』には関係がなく、『アルテミス』『ペルセポネ』『ハーデス』に共通する事象があるのだ」


 そう考えると、頭の中を整理しやすい。さすが、葛葉様である。


「また、我が兄・クロノスは、生きていることがわかった今、王位継承序列・第一位です。私は『王国法』において、成人である継承者がいたら速やかに女王を辞し、王位を譲らなければなりません。また、民衆の前で即位を宣言をするだけで、『世界の強制力』により、私は王位から排除されたでしょう。このことは、兄であるクロノスも知っているはずです!」


「確かに、『王国法』の男系継承の原則を考えたら、クロノスの行動は不自然な点と言えるな」


 そうだ。『女王』である私を排除して、『国王』として『聖国』と同盟を結べばいいはず。


 なのに、クロノス兄様は、しなかった!


 クロノス兄様の不自然な点は、まだある。


「クロノスは、私の双子の兄であり、私の『真名』を知っています。何故『真名』で呼ばなかったのでしょうか?」


「……確かに。妾も、幼い時のクロノスを知っているが、お前を『名前』で呼んでいた!」


 私達は、互いに頷き合い、同じ結論に至る。


「クロノスが、私の『サトゥルヌス』の権能を欲したということ。それは、ミトラ王の『太陽神』の権能を強化すること。クロノスが、私の『真名』や『王国法』に詳しくなかったこと」


 これまでの話し合いを総括して、私は一呼吸置く。




「これらから、ミトラ王よりも、クロノスの方が危険なのではないかと考えられます!」


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