『聖国襲来』第1話・聖国の王と宰相
この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。
宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。
ここは『王国』の王宮、玉座の間。
私の正面で、きらびやかな鎧を着た男性が話す。
「これはこれは『王国』の『女王』よ。面会の機会を得て、我は、嬉しく思うぞ!」
声の主は、隣国である『聖国』の王、ミトラ。
しかし、周りには、ピリピリとした緊張感が走る。
「……随分と手荒な訪問ね、ミトラ王。我が『王国』に、あなたが何の用かしら?まさか『侵略』という訳ではないのでしょうね?」
玉座の間では『聖国』の戦士達が周囲を警戒し、ミトラ王には、『王国』の騎士達が手を出せない状態。
「我が目的は、単純明快!我が『聖国』と貴殿の『王国』との間に、真の太陽の下での、協力関係を築くために参上したのだ!」
『聖国』にも、『王国』の『王国法』に似た法律があり、『第9条・戦争の放棄』が機能してるはず……
さらに『王国』では『サートゥルナーリアの大結界』によって『敵意』ある者を通さないはず……
法の抜け道を、通られたか!?
「我の目的は『親善のための訪問』!戦士達は、我の『護衛』のために『派遣』されているのだ!太陽に誓って!断じて『侵略』では無い!!」
抜け抜けと!『聖国』の戦士2000人規模を伴って『訪問』などと嘯くとは!!
私の両脇には、アルテミスとペルセポネが、控えている!
私達は、権能の覇気を高め、身構える!!
「詭弁を!あなたの行いは、戦争行為にあt……
その瞬間、聞き覚えのある声に、頭が真っ白になる!
「妹よ!ミトラ王の言葉には、耳を傾ける価値があります!!」
ミトラ王の背後から、懐かしい人影が現れる……
「我々が共に手を取り合うことは、両国の繁栄と安定に寄与するでしょう。ミトラ王の提案を一考してみるのも悪くはないはずです」
それは、双子の兄・クロノスだった!!
「……クロ、ノス……兄、様……?」
『事件』。未だに『王国』では、深い爪痕を残す出来事。
私の両親である、当時の国王陛下と王妃殿下。それに、親戚である多くの王族が犠牲になった。
私の兄・クロノスは遺体が見つからなかったため、行方不明となっていたが……
「……そんな、クロノス兄様は、数年前の『事件』で……」
クロノスお兄様は微笑みながら、私に話す。
「妹よ、その通りです。あの『事件』から幾年月……ミトラ王の寛大な配慮により、私は『聖国』に身を寄せていました」
ミトラ王も、兄妹の再会に目を細める。
「貴殿の兄上を、宰相として、我が『聖国』に迎え入れた。今こそ、我々の国を、より強固なものとする時が来たのではないかと考える。我々が協力することで、さらなる繁栄を手にすることができるだろう!」
……クロノス兄様が『聖国』に協力しているのは驚いたけど、『王国』と『聖国』が同盟を結ぶ?それだけのため?
いいえ!裏があるはず!探らなきゃ!!
「ミトラ王よ、私は『禁忌』を犯したわ。『違う世界線』の、一時ではあるけれども、この大地を『権能』の支配下に置いたのだわ。これは大地『ガイア』に対する『支配欲』と捉えられても不思議ではないわ!……『太陽神』の権能を持っている、あなたならば、見過ごすことができない冒涜でしょうね!!」
お天道様は、お見通しのはず。『噂話』通りなら、ミトラ王は……
「貴殿が『大地の運命を改変したこと』は、確かに太陽神として見過ごすことはできぬ!」
やはり『噂話』は、本当みたいね。
『聖国』のミトラ王は、『ミトラ』ばかりではなく、数々の『太陽神』を『習合』して、権能を強化している、と。
「……だが、貴殿が過ちを認め、反省しようとする意思があるならば、我は寛容な心で受け入れることもできる!さあ、共に手を取り合い、この大地に新たな光をもたらそうではないか!!」
「妹よ!ミトラ王は、このように仰せです。あなたの過ちは、大事の前の小事です。『聖国』と『王国』、両者が手を取り合い、新たな時代を作るのです!」
ミトラ王とクロノス兄様は、異口同音に私を諭そうとする……だけれど!!
「確かに、あなた方の発言は耳触りが良い。だけれど、外交的措置にて、私と対面することもできたはずだし。何なら、私があなたの元に赴くこともできたはず!それを『聖国』の戦士達2000人で『王国』の平和を脅かすなんて!あなた方の発言には、矛盾があるわ!!」
こちらは、私とアルテミスとペルセポネで3人!
ミトラ王とクロノス兄様だけならば、無力化できるかも知れない!!
「アルテミス、ペルセポネ、力を貸してちょうだい!!」
しかし、アルテミスとペルセポネは、私に返事をしない!
そして、虚ろな目でミトラ王の側に歩いていく!!
「……そんな!二人ともしっかりして、何故、ミトラ王の側に付くの!?」
さらに、ミトラ王の後ろには、ハーデスの姿もあった!!
「貴殿の勇気は称賛に値する。しかし、我が『計画』は既に進行中だ。アルテミスとペルセポネとハーデス殿を、我が側に引き入れたのだ。彼女たちの力もまた、我が『計画』必要不可欠なものだ」
「妹よ、抵抗しても無駄です。アルテミスとペルセポネ、そして、ハーデス殿下も、我々に加わっているのです!今こそ『計画』を実行し、この世界に新たな秩序をもたらす時です!!」
虚ろな目のままのアルテミスとペルセポネが、近寄ってくる。
二人に取り押さえられる、私!
「二人とも離しなさい!クロノス兄様、あなたはミトラ王に与して、何があるというの?あなたが生きているのならば、王位継承の序列は第一位であるはず!この『王国』を混乱に陥れてまで、何をしようというの!?」
クロノス兄様は、ゆっくりと近付いてくる!
「妹よ。確かに、私の王位継承の序列は高いですね。しかし、私が求めるのは、単なる地位や権力ではないのです!」
そして、クロノス兄様が、私に手をかざす!!
「……何を!!」
クロノス兄様の目が、一瞬、怪しく光る!
「私の『計画』には、『サトゥルヌス』の力が必要なのだ!!」
確かに『サトゥルヌス』と同一視される『クロノス』の名を持つ、兄様ならば『サトゥルヌス』の権能が適合するかも知れない!
「……まさか!このために!!」
「ええ。この世界を真の秩序と光で満たすための力が必要なのです。『サトゥルヌス』の権能を、私に渡せば、私の『計画』は完遂される!!」
「貴殿の犠牲は無駄ではない。我らの『計画』が成功すれば、この世界は、新たな光で輝くことになるのだ!!」
クロノス兄様が手をかざし、『サトゥルヌス』の権能を引き出し始めると、アルテミスとペルセポネはさらに私を強く押さえつけ、抵抗を許さない!
私の中から、何かが、抜け落ちた……
「妹よ、私の行為を許してください。だが、これも全て、この世界のため……アルテミス、ペルセポネ、妹を『処分』するのです!」
ミトラ王とクロノス兄様は、私のもとを去り、『王国』の完全な統治に向けて、動き始める。
アルテミスは少し私から離れ、ペルセポネは依然として私を拘束する。
ペルセポネの虚ろな目が一瞬、私の目と合ったような気がした。
アルテミスが剣を抜き、振り上げる!!




