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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第5章・女騎士アルテミスと聖国襲来の女王様
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『聖国襲来』第1話・聖国の王と宰相

この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。

宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。

 ここは『王国』の王宮、玉座の間。


 私の正面で、きらびやかな鎧を着た男性が話す。


「これはこれは『王国』の『女王』よ。面会の機会を得て、我は、嬉しく思うぞ!」


 声の主は、隣国である『聖国』の王、ミトラ。


 しかし、周りには、ピリピリとした緊張感が走る。


「……随分と手荒な訪問ね、ミトラ王。我が『王国』に、あなたが何の用かしら?まさか『侵略』という訳ではないのでしょうね?」


 玉座の間では『聖国』の戦士達が周囲を警戒し、ミトラ王には、『王国』の騎士達が手を出せない状態。


「我が目的は、単純明快!我が『聖国』と貴殿の『王国』との間に、真の太陽の下での、協力関係を築くために参上したのだ!」


 『聖国』にも、『王国』の『王国法』に似た法律があり、『第9条・戦争の放棄(ノイント・テーゼ)』が機能してるはず……


 さらに『王国』では『サートゥルナーリアの大結界』によって『敵意』ある者を通さないはず……


 ()()()()()を、通られたか!?


「我の目的は『親善のための訪問』!戦士達は、我の『護衛』のために『派遣』されているのだ!太陽に誓って!断じて『侵略』では無い!!」


 抜け抜けと!『聖国』の戦士2000人規模を伴って『訪問』などと嘯くとは!!


 私の両脇には、アルテミスとペルセポネが、控えている!


 私達は、権能の覇気を高め、身構える!!


「詭弁を!あなたの行いは、戦争行為にあt……


 その瞬間、聞き覚えのある声に、頭が真っ白になる!


「妹よ!ミトラ王の言葉には、耳を傾ける価値があります!!」


 ミトラ王の背後から、懐かしい人影が現れる……


「我々が共に手を取り合うことは、両国の繁栄と安定に寄与するでしょう。ミトラ王の提案を一考してみるのも悪くはないはずです」


 それは、双子の兄・クロノスだった!!


「……クロ、ノス……兄、様……?」




 『事件』。未だに『王国』では、深い爪痕を残す出来事。


 私の両親である、当時の国王陛下と王妃殿下。それに、親戚である多くの王族が犠牲になった。


 私の兄・クロノスは遺体が見つからなかったため、行方不明となっていたが……




「……そんな、クロノス兄様は、数年前の『事件』で……」


 クロノスお兄様は微笑みながら、私に話す。


「妹よ、その通りです。あの『事件』から幾年月……ミトラ王の寛大な配慮により、私は『聖国』に身を寄せていました」


 ミトラ王も、兄妹の再会に目を細める。


「貴殿の兄上を、宰相として、我が『聖国』に迎え入れた。今こそ、我々の国を、より強固なものとする時が来たのではないかと考える。我々が協力することで、さらなる繁栄を手にすることができるだろう!」


 ……クロノス兄様が『聖国』に協力しているのは驚いたけど、『王国』と『聖国』が同盟を結ぶ?それだけのため?


 いいえ!裏があるはず!探らなきゃ!!


「ミトラ王よ、私は『禁忌』を犯したわ。『()()()()()』の、一時ではあるけれども、この大地を『権能』の支配下に置いたのだわ。これは大地『ガイア』に対する『支配欲』と捉えられても不思議ではないわ!……『太陽神』の権能を持っている、あなたならば、見過ごすことができない冒涜でしょうね!!」


 ()()()()は、お見通しのはず。『噂話』通りなら、ミトラ王は……


「貴殿が『()()()()()()()()()()()()』は、確かに太陽神として見過ごすことはできぬ!」


 やはり『噂話』は、本当みたいね。


『聖国』のミトラ王は、『ミトラ』ばかりではなく、数々の『太陽神』を『習合』して、権能を強化している、と。


「……だが、貴殿が過ちを認め、反省しようとする意思があるならば、我は寛容な心で受け入れることもできる!さあ、共に手を取り合い、この大地に新たな光をもたらそうではないか!!」


「妹よ!ミトラ王は、このように仰せです。あなたの過ちは、大事の前の小事です。『聖国』と『王国』、両者が手を取り合い、新たな時代を作るのです!」


 ミトラ王とクロノス兄様は、異口同音に私を諭そうとする……だけれど!!


「確かに、あなた方の発言は耳触りが良い。だけれど、外交的措置にて、私と対面することもできたはずだし。何なら、私があなたの元に赴くこともできたはず!それを『聖国』の戦士達2000人で『王国』の平和を脅かすなんて!あなた方の発言には、矛盾があるわ!!」


 こちらは、私とアルテミスとペルセポネで3人!


 ミトラ王とクロノス兄様だけならば、無力化できるかも知れない!!


「アルテミス、ペルセポネ、力を貸してちょうだい!!」


 しかし、アルテミスとペルセポネは、私に返事をしない!


 そして、虚ろな目でミトラ王の側に歩いていく!!


「……そんな!二人ともしっかりして、何故、ミトラ王の側に付くの!?」


 さらに、ミトラ王の後ろには、ハーデスの姿もあった!!


「貴殿の勇気は称賛に値する。しかし、我が『計画』は既に進行中だ。アルテミスとペルセポネとハーデス殿を、我が側に引き入れたのだ。彼女たちの力もまた、我が『計画』必要不可欠なものだ」


「妹よ、抵抗しても無駄です。アルテミスとペルセポネ、そして、ハーデス殿下も、我々に加わっているのです!今こそ『計画』を実行し、この世界に新たな秩序をもたらす時です!!」


 虚ろな目のままのアルテミスとペルセポネが、近寄ってくる。


 二人に取り押さえられる、私!


「二人とも離しなさい!クロノス兄様、あなたはミトラ王に与して、何があるというの?あなたが生きているのならば、王位継承の序列は第一位であるはず!この『王国』を混乱に陥れてまで、何をしようというの!?」


 クロノス兄様は、ゆっくりと近付いてくる!


「妹よ。確かに、私の王位継承の序列は高いですね。しかし、私が求めるのは、単なる地位や権力ではないのです!」


 そして、クロノス兄様が、私に手をかざす!!


「……何を!!」


 クロノス兄様の目が、一瞬、怪しく光る!


「私の『計画』には、『サトゥルヌス』の力が必要なのだ!!」


 確かに『サトゥルヌス』と同一視される『クロノス』の名を持つ、兄様ならば『サトゥルヌス』の権能が適合するかも知れない!


「……まさか!このために!!」


「ええ。この世界を真の秩序と光で満たすための力が必要なのです。『サトゥルヌス』の権能を、私に渡せば、私の『計画』は完遂される!!」


「貴殿の犠牲は無駄ではない。我らの『計画』が成功すれば、この世界は、新たな光で輝くことになるのだ!!」


 クロノス兄様が手をかざし、『サトゥルヌス』の権能を引き出し始めると、アルテミスとペルセポネはさらに私を強く押さえつけ、抵抗を許さない!




 私の中から、何かが、抜け落ちた……




「妹よ、私の行為を許してください。だが、これも全て、この世界のため……アルテミス、ペルセポネ、妹を『処分』するのです!」


 ミトラ王とクロノス兄様は、私のもとを去り、『王国』の完全な統治に向けて、動き始める。


 アルテミスは少し私から離れ、ペルセポネは依然として私を拘束する。


 ペルセポネの虚ろな目が一瞬、私の目と合ったような気がした。




 アルテミスが剣を抜き、振り上げる!!


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