『運命改変』第13話・炎の神の最後
ここは『王国』の『クロノシア侯爵領』です。
春播きの麦の収穫作業が終わり、秋播きの麦の種播きの準備に追われています。
そろそろ涼しくなってもいい時期ですが、『クロノシア侯爵領』は、暑い日が続いています。
「『魔女様』、これは『異常気象』でしょうか?」
『異常気象』は、領民一丸となって『サトゥルヌス』様にお願いして、解消してもらいました。
それなのに、暑い、のです。
「あー!もう、あなたは!!元々『異常気象』を何とかしようとしたのは、あなたが私に『異常気象が!異常気象が!』っていう陳情ばかり言ってきたからでしょ!?私だってヤケになるってもんでしょ!!」
確かに、昨年の不作の経験から、領民達は『異常気象』が枕詞となっていました。
当初『魔女様』も、冷静に「気象には波があります。常に同じ気候の年が続くとは、限らないのです」と領民達を諭していましたが、その時は、我慢の限界がきたのでしょう。
『王国』全体が大不作という、未曾有の災害規模だったこともあり、大地『ガイア』の気候を『運命改変』するに至りました。
「私だって、何もしてないわけじゃないわ!」
そう言って『魔女様』は、権能の覇気を高めます。
「我が信奉を捧げる神、『サトゥルヌス』よ!
運命を読み解き、我に『啓示』を与え給え!
コインが表ならば『異常気象』!
コインが裏ならば『問題は無い』!」
そして、おもちゃのコインをトスします。
ぴーーーん、ぼろ、ぼろ、ぼろ……
おもちゃのコインは、床に落ちることなく、粉々に砕けて風に飛ばされていきます。
「……ずっと、これなのよ。これって、どういうことなの!?」
うーん。謎です。
『暑い日が続く異常事態』が、『異常気象』でも『問題は無い』でもない。
一見、この二つは、コインの裏表のように感じますが……
「『魔女様』、試しに、表が『異常気象が原因』と裏が『異常気象が原因ではない』で、やってみませんか?」
「なるほど。あなたは『場合分け』が正確じゃなかった、と考えているのね?わかったわ、やり直してみるわね……『サトゥルヌス』よ!我に『啓示』を与え給え!」
再び、おもちゃのコインをトスします。
ぴーーーん、ころ、ころ、ころ……
おもちゃのコインは放物線を描き、床に落ちます。
出たのは『裏』。すなわち『異常気象が原因ではない』!
「……『異常気象が原因ではない』ことは、わかったけど、結局、原因はわからないわね」
『魔女様』の『啓示』の権能は、擬似的な『千里眼』であるために、連続での使用は、生命に関わります。
「アルテミス、タロットによる『啓示』だと、『なろう』に投稿したときに滑稽になr……じゃなかった、100%の確率が担保されないから、領民への聞き込みをしてみましょう!」
領民への聞き込みの結果、朱雀湖付近が、特に暑いことがわかりました。
何か原因があると思った私達は、朱雀湖へ向かいました。
「……暑い。領都とは比べ物にならないくらい、暑いわ」
「そうですね。それに……」
異常に強い、権能の覇気を感じます!
「ええ、何かいるのかも……『サトゥルヌス』よ!運命を読み解き、彼のものの正体を暴け!」
『啓示』の権能の応用して『鑑定』として使っているのでしょうか?
「『魔女様』!あそこです!」
朱雀湖に浮かぶ小島。祠の近くに、何か倒れ込んでいます!
「ええ、行ってみましょう!」
小島には、飛石のように足場が続いていて、渡ることができます。
小島に近づくと更に暑く、倒れているものは翼を持ち、全身が燃えているように感じます。
『魔女様』が問いかけます。
「この地の古き神と、お見受けします。私は『魔女』と名乗る者で、こちらは領主様です」
『……おお、「サトゥルヌス」様の使い手じゃな?……お初にお目にかかる、儂は『炎の神』じゃ。儂は、炎を纏い、空を駆け、燃え過ぎた身体を、この湖の風で冷やす……そのような神なのじゃ』
おおよそ、領民から聞いた話や、古い文献の記述に当てはまります。
「お身体の具合が悪いようですが、いったい何があったのでしょうか?最近の、この地の異常な暑さと、あなたの体調は、関係があるのですか?」
『然り。儂の寿命が、尽きようとしているのじゃ。おぬし達にもわかるように例えると、ロウソクが一番激しく燃えるのは無くなる間際なのじゃ。儂も、何とか湖の風で身体を冷やそうとしているが、周りへの影響が抑えられないようじゃ……儂の身体が、いよいよ保たなくなった時は、空高く飛び上がり散ろうと思う……おぬし達は、それまでには、ここを立ち去るがよかろう』
私は、叫ばずには、居られませんでした!
「!!……あなたは、自分の死より、領民への影響を気にしているのですか?何故、そこまでするのですか!?」
『魔女様』は、ハッとして、『炎の神』を見つめます。
『……お若いの、領主様じゃな?……今際の際となって、悟るものじゃ。「神」は、人間が「神」として扱ってくれて、初めて「神」となるのだと。おぬし達が、儂ら「古き神」を尊重し、人間たちに呼びかけていることは知っておる……儂は、それが嬉しかったのじゃ』
『魔女様』は『炎の神』の告白に感極まったのか、何処かへ走り去ってしまいます。
「『炎の神』よ!私達の『クロノシア侯爵領』には、あなたのような神が必要です。どうか、私達のために乗り越えてください!」
『領主様、儂は「炎の神」じゃ。「炎」は燃えて、いつか燃え尽きるのが「運命」。それには逆らえないのじゃ……』
その時、何処からともなく、炎を纏った鳥が現れます!!
不死鳥……『フェニックス』でしょうか!?
『心優しき、古き神よ!私が、助けに参った!』
『不死鳥「フェニックス」様と、お見受けしますじゃ。この老いぼれは、ここで燃え尽きる「運命」。願わくば、儂が亡き後の、この地の人間を見守りくだされ!』
『魔女様』が戻ってきて、『フェニックス』に告げます!
「『フェニックス』!『炎の神』を、あなたの権能で救ってあげて!!」
『御意。「新しい契約」の元、私の権能を、お見せしよう!』
『フェニックス』は『炎の神』に向かい、告げます!
『……「炎の神」よ!私の権能は「炎の再生」!!さあ、共に燃え上がり、滅びの「運命」を乗り越えようではないか!!』
『……おお、「フェニックス」様!!』
『フェニックス』と『炎の神』は飛び上がり、空で燃え上がります!
『ゆくぞ「炎の神」よ!私の権能「炎の再生」!!』
ひときわ強く燃え上がり、二柱は巨大な炎になります!
「『炎の神』よ!我が『サトゥルヌス』により、あなたの神格を昇格させることで、滅びの『運命』を乗り越えることができるはずです!どうか、私と契約して『クロノシア侯爵領』の守護神になってください!!」
『……おお、願ってもないことじゃ!「サトゥルヌス」様の使い手……「魔女様」、「フェニックス」様、そして領主様。儂は、この地を守り、人間達と共に歩むことを誓いますじゃ!!』
私達は『炎の神』の誓いを聞きました。
そして『魔女様』が『サトゥルヌス』様に願います!!
「我が信奉を捧げし神、『サトゥルヌス』よ!
ここに契約は成った!『クロノシア侯爵領』が新たな守護神を祝福せよ!
古き神『炎の神』の、滅びの運命を乗り越えるために、新たな神格を授けよ!!」
『サトゥルヌス』様の権能が膨らみ、『炎の神』も自身の権能で燃え上がります!
『さあ皆様!炎の中で、儂が生まれ変わる光景を、祝福くだされ!』
『炎の神』は、光り輝き、新たな姿を現します。
燃え上がる身体と翼を持ち、湖の小島に降り立ちます。
「さあ、新たな名前を差し上げましょう!あなたは『朱雀』!!『クロノシア侯爵領』の守護神よ!!」
『感謝いたしますじゃ、「魔女様」、「フェニックス」様、そして領主様。儂は『朱雀』!この地の守り神にして、人間と共に歩む神!!』
心優しき神は、新たなる名前と決意を、高らかに宣言します!
『フェニックス』は、その様子を見守り、何処かへ飛び去っていきました。
『クロノシア侯爵領』は、守護神『朱雀』を、お迎えすることができました。
メモリに追加:『炎の神』は【精霊級】から【人格神級】に昇格し、『クロノシア侯爵領』の守護神『朱雀』となった。




