表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/85

女騎士アルテミスと王国再編の女王様・第4話

「ありがとうございます、『女王様』。そのような光栄なご提案、感激いたしますわ。それでは……


  ペ   ル   セ   ポ   ネ


 ……・アカデミーと、名付けさせていただきますわ」




 あらあら、ペルセポネさん。溢れ出た自己顕示欲が、隠せてなくてよ?


 『ペルセポネに因んだ名前』と注文を付けたら、『ペルセポネ』と、私物化したような状態になってしまった!?


 玉座に座る私を真っ直ぐに見て、ペルセポネは宣言する。


「『ペルセポネ・アカデミー』は、若き『権能を持つ者』たちがその力を正しく理解し、制御し、社会に貢献できるようになるための場所として、尽力いたしますわ。『教授』の助けを借りて、優れた教育と支援を提供し、この国の未来を支える人材を育成してまいりますわ!」


 その凛とした姿は、かつての公爵令嬢、そのまま。


 ああ、ペルセポネは、やっと本来の自分を取り戻しつつあるのね。




 ふと『教授』が、私に質問する。


「失礼ですが『女王様』は、『ガイアの愛』を、ご存知ですか?」


「ブッ!!」


 私は、噴き出してしまった。


「どうやら、王族の方々の中に『ガイアの愛』を提唱した『やんごとなき身分の御方』が、いらっしゃるようなのです。『我ら』は『ガイアの巫女様』だとか『始祖様』と、お呼びしています」


 『彼ら』の中で、『やんごとなき身分の御方』の評価が、神聖化してるわ!止めないと!!


「それは、ちょっとイキs……


「まあ!あの『噂話』は、現実だったのですわね!?」


 私の訂正を遮って、ペルセポネは感動している様子だった。


「はい!私達、知識人は『ガイアの愛』について、理解できます。しかし、船乗りたちも『確かに船が陸から遠ざかれば、船が、或いは陸が、海の中に潜っていくように見えるもんなぁ。実際は違うけど』と理解を示しました!これは『やんごとなき身分の御方』が『ガイアの愛』について語った内容です!」


 『教授』は、興奮して続ける。


「知識人と船乗り。私達は、『やんごとなき身分の御方』の導きにより、立場を越えて『友人』となったのです!これを『ガイアの愛』と、呼ばずにはいられません!!」


 『ガイアの愛』が、拡大解釈されている!?


「あらあら!なんて、素晴らしいのかしら!わたくし達、王族に、そのような神聖な方が、いらっしゃるのですわね!?」


「ええ……ですが『我ら』は『やんごとなき身分の御方』の正体を掴めていないのです。ですから『女王様』、ペルセポネ様、そのような『やんごとなき身分の御方』を見かけましたら、『我ら』に、お知らせください!」


 『教授』は真剣な眼差しを、私に向ける。


「……『教授』、あなたの熱意、感心したわ。『やんごとなき身分の御方』について、私の方からも探りを入れてみるわね」


「『女王様』!ありがとうございます!」


 まあ、嘘は、ついてないしね。




 日課になった『謁見』を、玉座の間で行う。


 『ペルセポネ・アカデミー』の準備も一段落して、ペルセポネも手伝ってくれている。


 『意見箱』を設置したことにより、以前よりはトラブルが減っている。


 その『意見箱』を設置しながら巡察していた、『アルテミスの聖剣団』の団員が、不審な人物を見つけたそうだ。


 その人物が『謁見』の場に現れた。


「お初にお目にかかります『女王様』。葛葉と申しますのじゃ。アルテミス様の『聖剣団』に保護され、この場に参りました。どうか、お話を聞いていただけますでしょうか?」


 異国の衣装を身に纏った少女が、正座をして頭を下げている。


 その頭には狐の耳。お尻には尻尾が生えている。


 私は、身震いする。何故、此処に、()()()が!?


「葛葉、さま……やはり、葛葉様!お久しぶりです。私です、主殿ですよ!」


 とりあえず『保護』しなきゃ!


「おや、主殿。お久しぶりでございます……ということは、ここは『王国』?どうやら、葛葉は、無事に着いたようでございまするな!」


 何となく、事情は掴めてきたけど……私は、二人に指示を出す!


「二人とも、この葛葉様は、私の客人です。王宮に部屋を用意させて、しばらく滞在してもらいます!……葛葉様、どうかすべて、この主殿にお任せください。あなた様の来訪を、心から歓迎します!」


 葛葉様は、私の態度に安心した様子だった。


「主殿、葛葉を温かく迎えてくださり、心より感謝いたしますのじゃ。どうぞ、しばらくの間、お世話になりまする」


 私の指示を受けて、アルテミスとペルセポネが動き出す。


「かしこまりました、女王様。葛葉様のために、最上の部屋を用意いたします」


「歓迎の準備を整えますわ。葛葉様、どうか、ごゆっくりお過ごしくださいませ」


 葛葉様は、アルテミスとペルセポネに礼を言う。


「ありがとうございます、アルテミス様、ペルセポネ様。そして何よりも、主殿。これからよろしくお願いいたしまする」


 とりあえず、葛葉様を私の部屋へ招いて、事情を聞きましょう。


「二人とも、今日の公務は、これまでとしましょう。お疲れ様でした。葛葉様、私の部屋まで一緒に、いらしてください」




 私の部屋にて。


 葛葉様にソファに座ってもらって、紅茶を淹れる。


「葛葉様、『皇国』の要人であらせられる、あなた様が、我が『王国』にいらっしゃるとは思いませんでした。肝を冷やしました』


「主殿、御心配をおかけしたのじゃ」


 葛葉様の狐耳は垂れ下がり、反省の色が伺える。


「ですが、葛葉は『王国』が内乱となったと聞き、主殿のことが心配で、居ても立っていられず『皇国』を飛び出しておりました。そうしている内に、『迷子』になってしまったのじゃ。今こうして、主殿の御前に戻れたことを、心より感謝しております」


「……葛葉様!!」


 私は、葛葉様に抱きつく。葛葉様は、危険を顧みずに、私の元に来てくださったのだ!


 ……いや、待てよ?『王国』と『皇国』は、国交がある。


 船も行き来していて、『皇国』から船に乗るだけで『王国』に着くはず。


 もしかしたら、葛葉様は、この大地を横断してきたのかも知れない。


 それを『迷子』で、済ませようとしているのだ!!




 そうだ!()()()にも、挨拶しなきゃ!


「葛葉様、『封印解除』!!」


 葛葉様から煙が溢れ、部屋を広く染める。


 煙が晴れると、艶やかな女性が現れる。


「ふふ、ようやく封印を解いてくれたのね、お前。妾が、待ち侘びた時間の長さを、思い知るがいい」


「お久しゅうございます。()()()


 そう。こちらが権能の根源。齢1000年以上の妖狐、葛葉様である。


 普段の葛葉様は、権能を一部『封印』しているのだ。


「……さて、お前の部屋とはいえ、ここでは誰が支配者かを、しっかりと教えてあげましょうか?」


 嗜虐的な葛葉様の目線に、私は鼓動が高鳴る。


「……もちろん、この部屋においても、葛葉様が支配者でございます。そのために、わざわざ人払いをし、私の部屋に、いらしていただいたのです」


 私は、自然に葛葉様の前に跪いていた。


「……葛葉様、何なりと、お申し付けください」


 葛葉様は、愉悦に浸りながら、告げる。


「ふふふ、お前の態度は、妾の気分を良くする。さあ、お前よ、妾に……






 こ の 『 王 国 』 を 寄 越 せ ! 」


メモリに追加:葛葉は『皇国』の女性。齢1000年以上の妖狐。

「封印」で『通常モード』になり、「封印解除」で『裏モード』になる。

『通常モード』:小柄な女性。可愛らしい古風な口調。

『裏モード』:艶やかな女性。支配的で嗜虐的な口調。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ