女騎士アルテミスと王国再編の女王様・第2話
「新しい騎士団の名前、それは、アルテミスの……
聖 剣 団 !!
……です」
決して、穢れない、聖なる剣!?!?!?
『アルテミスに因んだ名前』と注文を付けたら、『アルテミスの……』と、取って付けた状態になってしまった!?
アルテミスは、後を振り返り、玉座の間に響き渡るように宣言する。
「我こそはと思う者は、我が『聖剣団』に参加ください!『聖剣団』は、『女王様』に仕え、民の安寧を守る騎士団です!!」
その瞬間、玉座の間に割れんばかりの歓声が響く!
アルテミス!アルテミス!と、讃える声が絶えなかった!
私室に戻った私は、アルテミスとペルセポネを呼んだ。
『王国』を『強制労働や差別を廃止する法令』に、適合するように『再編』する。
それに対する意見を、話し合うためだ。
決して、みんなで紅茶を飲みたかったから、って訳では無い!
「アルテミス、ペルセポネ、よく聞いてちょうだい。クーデター派が結成されたのは、私の『改革』が性急すぎたせいだと、反省しているわ」
開口一番、私は、自らの反省点を告げた。
二人は、驚いていたようだけれど、静かに続きを待ってくれた。
「もっと国民に寄り添った、寛大な『女王様』に、私はなりたいのよ!だから、広く国民の意見を取り入れるために、陳情を受けるための謁見の場を設けたいと思うわ!……あなた方には、その補佐と相談役をしてほしいのよ。お願いできるかしら?」
アルテミスとペルセポネは、顔を見合わせて互いに頷いてから、私に応える。
「もちろんです、『女王様』。私たちは、常に『女王様』を支え、国民の声をしっかりと受け止める、お手伝いをいたします。『女王様』の改革が進むことで、『王国』全体が、より良くなることを信じています」
「うふふ。『女王様』の意志に従い、私たちは国民の陳情を受け付け、彼らの声に耳を傾ける準備ができていますわ。どうか安心して、私たちにお任せくださいませ」
二人からの同意を得て、私は安心した。
「ありがとう、二人とも!」
私達は、紅茶をいただいた。
私は、何が正しいか、わからない。
でも、苦しんでいる人の声を聞き、問題を一つ一つ解決していくこと。
それが、全ての人が幸せな国に、繋がる道と信じている!
「……アルテミス、ペルセポネ、聞いてほしいことがあるの」
そう、私は既に知っている。
『奴隷制度』を廃止しても、貴族と庶民の間には、まだ壁があることを。
「私は『権能を持つ者』を探し、保護すべきだと考えているわ。また、『権能』に関する知識を一般に共有し、この力を活用していくべきだと思っているわ」
「ですが、いたずらに『権能』の知識を公開すれば、まt……
アルテミスの指摘を、手で遮る。
「アルテミス、あなたの指摘は、もっともだわ。多くの王族が犠牲になった『事件』。それは『権能』が存在する社会では、どこでも起こり得ることだと、私は考えているわ」
ペルセポネが、顔を背ける。辛い過去を、思い出させてしまったわね。
「……けれども、それは、常に王族だけが犠牲となるとは、限らないわ!」
ペルセポネは、はっ、とし、私の方に向き直る。
そう、王族や貴族など権力者に向くならば、その『暴力』に『大義』は、あるのかも知れない。
だけれども、無差別な人混みや、自分よりも力が弱い者に向くのならば……そのような事はあってはならないのだわ!!
アルテミスは、決意をもって発言する。
「『女王様』に、同意します。私たちが持つ『権能』は、正しく管理されなければなりません。まずは『権能を持つ者』の情報を集めることから、始めるべきです。私が先頭に立ち、彼らの保護と導きを行います!」
ペルセポネも、同意しつつ発言する。
「『女王様』の、お考えは非常に賢明ですわ。私たちが持つ『権能』は『王国』全体の力の源となり得ます。彼らの心のケアと、正しい知識を教える……『権能』を、ただの『暴力』で終わらせない取り組みに、わたくしも協力いたしますわ!」
私は、いい仲間を持った……
「ありがとう、二人とも!」
私は、ぬるくなった紅茶で、口を潤す。
「私は『権能』の普及を実現する上で、正しい知識と心を育てる『教育機関』と、『権能』に対する正しい運用と管理で対処する『治安組織』が必要だと考えるわ!」
私は、アルテミスの目を真っ直ぐに見つめる。
「そこで、アルテミスは『アルテミスの聖剣団』に『権能を持つ者』を、率先して入団させてほしいの。彼らの力を正しく使い、『王国』の治安を守る組織として欲しいわ!」
「かしこまりました、『女王様』!」
次に、ペルセポネの目を見つめてる。
「ペルセポネには、まだ若い『権能を持つ者』の候補者に、権能の制御を学ばせる『学園』を作って欲しいの。そこにはハーデスも通わせて、同年代の人たちと学べる場所になればいいと思っているわ」
「うふふ。『女王様』の願い、しかと承りましたわ!」
私達は、お互いに顔を見合わせる。
活動の方針が決まり、確かな連帯感を覚えた。
ペルセポネを、宰相に据えても問題ないと感じたけれど、私は『教育機関』の設立を、お願いしたかった。
「それでは、アルテミスは『アルテミスの聖剣団』の設立、ペルセポネは新たな『学園』の設立。それらを通して『権能を持つ者』を優先的に採用し、『権能』の活用と制御を学ばせる。それと同時に、メンタルケアや倫理観の教育の場としていきたいと思うわ。二人には苦労をかけるけど、どうか私と、この『王国』のために、力を貸してちょうだい!」
私は立ち上がり、二人に頭を下げる。驚く二人。
構うもんか!公式の場ではないし!
それに、頭は立場が上の時に下げてこそ初めて効果がある。違うかしら?
「……だけど『学園』を作るとしても、『教員』がいないのが問題よねぇ」
もちろん『女王』の権限で、人員を集めることはできるかも知れないけど、今度は『王国』の教育体制が崩壊する。
その時、ペルセポネは、得意げに話す。
「……わたくしに、いい考えがありますわ!」