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女従者アルテミスと絶対遵守の女王様・第3話

 私、アルテミスは、貴族を召集する会合『女王会議』の準備に追われていました。


 全ての貴族に招待状を送り、人数分の料理の手配、会場の清掃など。


 特に、気を付けなければならないのが『お酒の銘柄』です。


 ワインだと、赤と白?産地?あと、年代?


『王国』では、あまり知られてない、ショーチューだと、麦と芋と米?


 全然わかりません!


 もちろん、それらを指南する職業もあるのですが、その指導料は安くはないですね。とほほ。







 『女王様』に呼び出され、貴族の『忠誠心』を測る手筈を確認します。


 紅茶を淹れて『女王様』に差し上げてから、話し始めます。


「全体会議に先立ち、即位したばかりの『女王様』へ個別に挨拶する場を設けます。その部屋で貴族たちの『忠誠心』を確認します」


 『女王様』は紅茶を一口飲み、おいしい、と言ってから答えます。


「ええ、そこで私の『権能』に従うかどうかで、『王権に協力的な貴族』、『自領のみの利益を追い求める貴族』、そして『王族の打破を目論む貴族』に分別するわ」


 私は、顔をしかめてしまいました。


 『王族を打破する』。


 そのために「『事件』の黒幕は、王位簒奪の『女王』だ!」とか「『女』である『女王』に、国家運営はできない!」などといった言説を流布する。


 そのような行為には『忠誠心』の欠片もない!


 私の心の中を察してか、『女王様』は声を掛けてくださいます。


「……アルテミス、『貴族』とは、本来そのようなものよ?自分に属する者たちを食わせるためなら、何でもやる!……それが、大きくなったものが『王族』なのだから」


「ですが!!」


 私は、大声を上げてしまします。


「ふふふ、あなたの気持ちは嬉しいわ。でもね、人の上に立つとは、そういうことなのよ」


 私は、どうしても納得できませんでした。







 『女王会議』の日。


 『女王様』に挨拶する部屋には、万が一のために、貴族には1人ずつ入ってもらい、物陰に衛兵を配置します。


 私も『女王様』の側に控えることになりました。


 愛用の『柄の太い箒』を、ギュッと握ります。


「あなた、いつも、その『柄の太い箒』を持っているのね?お気に入りなの?」


 ふふふ、と笑いながら『女王様』が尋ねてきます。


「はい!私の『仕事道具』です!」


 そう、私は胸を張って答えました。




 大勢の貴族が、順番に『女王様』に挨拶します。


 そして『女王様』は【命令】をしていきます。


 最初は戸惑うも、『忠誠心』が高い貴族は順応し、自ら【命令】に従います。


 『女王様』に対して、敵意がある貴族は反発し、【命令】に抵抗します。強制力を抑えているので、その様子で判別できます。


 それら『忠誠心』が低い貴族も『女王様』は、貴族として当然の振る舞いとして、寛大に許しました。


「すまぬ、我の戯れであった。貴殿の『胆力』を、測りたかったのだ。見事、我の『試練』に打ち勝ったな!」


 ですが、ある伯爵などは「『女』の言う事など、従えるか!」などと言って、退出してしまいました。


 その後も【命令】により、『腕を「こ」の字にして片足(ショー——!)を上げる伯爵』や『ガニ股開きになり手を股下から(コマチネ!)クイッとやる子爵』など。


 少しずつ【命令】されてるから、変なポーズをさせられていても、気が付かないものなのですね。


 『女王様』を見ると、プルプルと震えている……絶対、楽しんでいますよね?




 終盤に差し掛かり、ある男爵の番になりました。


 扉が開かれると、傲慢な足取りで入室し、吐き捨てるように言います。


「フン、これが『女王』か……」


 金髪に青い瞳を持つ若き男爵。


 新興貴族の家柄でありながら、『女王』批判を利用して、急速に発言力を増していった人物だった。


「これは陛下、御即位おめでとうございます。自分は、ゼウス・アゲアシトル男爵と申します」


 慇懃無礼といった感じで挨拶します。


 『ゼウス』や『ユピテル』という名前は、『王国』では珍しくありません。


 領地経営や人心掌握のために、偉大なる神の名前を名乗ることは、理に適っています。


 実際、今日も何人もの『ゼウス』様や『ユピテル』様が、いらっしゃいました。


 もしかすると『王国』の人混みで、適当に石を投げれば『ゼウス』様に当たるのかも?


 『女王様』は、冷静にゼウス男爵を見据えます。


「ご足労感謝する、ゼウス男爵。貴殿のような若き貴族の力は、この『王国』にとって重要なもの。今日は、貴殿の意見を聞かせてもらえればと思っている」


 ゼウス男爵は口の端を歪め、皮肉げに笑いました。


「はっ!『女』である、あんたよりも、俺はこの『王国』の未来を考えているよ!!」


 ゼウス男爵の気配が増大し、私は、無意識に愛用の『柄の太い箒』を握りしめます!


「【動くな!】」


 今にも飛びかかりそうなゼウス男爵に、『女王様』が【命令】をします。


 ゼウス男爵の身体がピタリと止まる。


 しかし、ゼウス男爵は余裕を見せている。


「あんたの情報は集めている。これは『サトゥルヌス』の権能。『サトゥルヌス』の祭典の『遊び』の再解釈。『絶対遵守の命令』とやら、だろ?」


 『女王様』は、苦い顔をしながら叫ぶ!


「よく調べてるようね!だけれど、その拘束から逃れられないのなら、意味はないわね!」


「……なめるなよ!」


 ゼウス男爵の覇気が高まり、筋肉が隆起していく。『権能』の力を、膂力を高めるために使っているのか!?


「うがぁっ!!」


 ついには『女王様』の【命令】の拘束を解いてしまいます。


「あんたが『サトゥルヌス』つまりは『クロノス』ならば、俺は『ゼウス』様がついているんだ!……あんたにとっては『天敵』、だろ?」


 ゼウス男爵は、くっくっく、と笑って続けます。




「さあ、バトルの始まりだぜ、『女王』さんよぉ!!」


 ゼウス男爵は暗雲を纏い、黒い雷が室内に迸ります。


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