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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第4章・女騎士アルテミスと王国再編の女王様
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『運命改変』第12話・対決、山の神!

 『クロノシア侯爵領』の東側。


 青龍川の灌漑水路の予定地にあった祠は、計画を少し変更して、そのまま場所で祀ることができました。


 私達は、大工の心得がある領民を伴って、祠の修繕をしました。


「儂の親父が、言っとった。『森の神』様が祀られている祠は、大事にしろ、とな……ああ、ここがそうじゃったんじゃなぁ」


 一人の老人が感慨に浸り、目に涙を浮かべながら、お参りしています。


「この領地にとっては、古くから信仰がある祠だったみたいね。アルテミス、このような古くからの信仰がある場所を、調べてみましょう!」


「ええ。このような場所は、きっと、領民たちの心の支えとなってくれるはずです」




 領都に戻り、古い資料を調べたり、領民たちに聞いてみたりしました。


 いくつか、そのような祠があり、清掃や修繕の指示を出しました。


 特に有名なのは、南の朱雀湖に浮かぶの島にある祠と、西の白虎道沿いにある祠です。


 朱雀湖の祠は、『炎の神』が燃え過ぎた身体を冷やすために舞い降りると言われています。


 また、白虎道の祠は、『戦の神』の魂を鎮めると言われています。現在では、道祖神信仰と結び付いて、旅の安全を祈念する場所となっているそうです。




 『クロノシア侯爵領』では、青龍川の灌漑水路の主流部分が完成しました。


 今は、テストのために水を流しています。


 例えば、雪解け水や大雨で川が氾濫しそうなときは、こちらに流すことによって軽減することも可能です。


 工事に携わった領民たちは、差し入れ(タバコ)をいただきながら、水が流れる様子に歓声をあげていました。


 ちなみに、本日の差し入れ(タバコ)は、クッキーと紅茶です。


 今しばらく身体を休め、『クロノシア侯爵領』は、春播き麦の収穫期を迎えようとしています。




 ある日、私と『魔女様』は、玄武山の廃坑跡に視察に訪れました。


「この鉱山は、取り尽くしたから廃坑になった訳ではなく、地質が硬くて、掘削が難しかったから廃坑になったと、文献に書いていたわ」


「なるほど。では『サトゥルヌス』様のお力を借りれば……」


 『魔女様』は、頷きます。


「ええ。私が『サトゥルヌス』の権能で、地質を柔らかくすれば、掘削可能のはずよ!もしかしたら、強化された魔法を使うことで、効率化も見込めるかもね!」


 いよいよ、男達にも『権能』によって強化された魔法を、覚えてもらう段階に来たのかも知れません。


「さっそく始めるわ、領主様!」


 『魔女様』が、領主としての私に、許可を求めます。


「はい、よろしくお願いします!」


 『魔女様』に権能の力が渦巻き、存在感が増していきます。


 そして『サトゥルヌス』様を、讃える祝詞を捧げます!



「我が信奉を捧げる神、『サトゥルヌス』よ!


 我らの願いを叶え給え!どうか我らを救い給え!


 廃坑となった鉱山に、かつての賑わいを!


 あなたの『農耕』の権能をもって、我らを救いください!


 ああ、あなたは『農耕の神』!


 岩を穿ち、石を砕き、土を掘る!


 その本懐をもって、我らに大いなる奇跡を与え給え!」



 権能が増大し、玄武山全体に作用したように感じました。


「……領主様、これにて祈祷を終了します」


「ありがとうございます、『魔女様』」


 私達は、互いに礼をします。


 その時!玄武山全体が揺れ動きました!


『グォォォォッ!!』


 咆哮!?そして、何か、巨大な存在を感じます!!


『汚らわしい人間共め……我が苦しみと、憎しみを知るがいい!!』


「ぐっ、これは!……さぞかし名のある山の主と、お見受けいたしますが、なぜ、そのように荒ぶるのですか!?」


 『魔女様』が問います。この山の、玄武山の主でしょうか?


『如何にも!人間よ、貴様らの過ちを忘れ、また、この地を搾取しに来たのか!?森を切り、動物たちを追い回し、水を汚し、挙げ句に人間同士で殺し合う……』


 玄武山の主……『山の神』は、怒りに震えているようです!


『貴様ら、人間の所業には、ほとほと嫌気が差した!即刻、立ち去るがいい!!』


「待ってください、『山の神』よ!私達は、この地の自然を、再生させようとしているわ!」


「どうか、『山の神』!私達の身の振り方を見て、判断してください!」


 私達は、『山の神』の『説得』を試みますが……


『くどい!立ち去らぬのならば、実力で追い返すまで!!』


 『山の神』は、頑なに私達の話を聞き入れません!


「アルテミス、相手は権能の根源たる『神』よ!こちらが受け手に回っていたら、ジリ貧になるわ!積極的に仕掛けていきましょう!」


「はい、『魔女様』!」


 私達は、人の身で『神』の力、権能を扱う。しかし、あちらは『神』そのもの。


 権能の力の容量が、違い過ぎる!!


「いきます!」


『山の神』の懐に飛び込む!剣を、逆袈裟に切り上げる!


 ガツッン!!


 あまりの防御力に、剣が弾かれてしまう!


 タタラを踏んでいると、『山の神』が仕掛けてくる!


『グァァァァッ!!』


 大振りの前足が振られるが、この程度なら避けられる!


 しかし、防御力が厄介だ。


「玄武山の地質が硬くて……まさか、あなたの権能は、『凝固』なのね!!」


『……少しは見所があるようだな、人間!だが、それを知ってどうする?貴様らに、この防御力は破れやしまい!!』


 『凝固』。無尽蔵の権能の力を持つ『神』が、徹底的に守りを固める。確かに厄介な権能だ!


「アルテミス!月は……月は、出ているわよ!!」


「!!」


 新月。太陽の光に、かき消されていても、()()()()()()()()()()


 私は、剣を収め、月光の弓を召喚する。


 この弓は、女神『アルテミス』の権能により、月の光を浴びるほど、強力な矢を放てる!


「くらえ、我が奥義!月・光・弓・砲!!」


 弓から放たれた矢は、月光を纏い、巨大な光の束となる!


 しかし『山の神』は、覆い被さるように、攻撃を受け止める!


『……残念だったな、人間!我が防御力の前には、少し足りなかったな!』


 私は、女神『アルテミス』に、()()()()()()



「我が、守護神『アルテミス』よ!


 我に月の輝きを!夜を照らす、導きの光を!


 その光は、細けれども!我の信念を、示すもの!


 立ち塞がる全てを退ける、加護を与え給え!」



 矢が、尚も光り輝き、『山の神』の巨大を押し上げる!


『グゥ!なんと、人間ごときに、我が破れるのか!?』


『山の神』の体躯に、亀裂が走り、巨体が倒れる。




「『山の神』よ、謹んで申し上げます。この地に祠を建て、あなたの御霊をお祀りします。恨みを忘れ、鎮まりください」


 『魔女様』が『山の神』を『説得』するようです。


『……我の防御力を破ったのだ。貴様らの、言い分を聞こう』


 『山の神』は、渋々といった態度ですが、私達の話を聞いてくれるようです。


「あなたは、地元住民から愛される、古き神ではないのですか?……だけれども信仰を忘れ、自然を顧みない人間たちに、恨みを募らせていた」


『……如何にも』


 『山の神』は、感心したような声で応えます。


「私は、自然と人の営みが共存する、領地経営を目指すことを、ここに誓います!あなたを祀り、あなたに教えを請い、あなたに感謝を捧げる。そのような領地にしていきたいと、考えています!」


『……我を否定しないのか?我を追い出さないのか?』


 『魔女様』は、『山の神』に懇願します。


「私達には、あなたが必要です!どうか『クロノシア侯爵領』のために、力を貸してください!」


『……ふふふ、はははは!気に入ったぞ、「サトゥルヌス」の使い手よ!我も、貴様や、この地に住む人間のために、力を尽くそう!』


 『魔女様』は、喜びます!


「ありがとう『山の神』!きっと領民も感謝し、あなたへの信仰を新たにすることでしょう!」




 『山の神』と『魔女様』は、和解しました。


 終始『魔女様』は、低姿勢でしたが、『サトゥルヌス』様の威光をチラつかせて、威嚇していたのです。


 【精霊級】の『山の神』が、【絶対神級】の『サトゥルヌス』様に睨まれていては、『山の神』が可哀想な気もします。


 そもそも、最初から『魔女様』が『説得』していたら、穏便に済んだのではないでしょうか?




 『魔女様』は、約束どおり『山の神』ために、立派な祠を建てるのでした。


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