『運命改変』第11話・開拓の兆し
ペルセポネを招いて、強化された『魔法』について学ぶ私達。
『魔女様』は、強化された『魔法』を普及させることにより、『権能』が使える貴族と、『権能』が使えない庶民との間の壁を取り払おうと考えていました。
ところが、強化された『魔法』は、『権能』を持つ者にしか扱えなかったのです。
落ち込む『魔女様』に、ペルセポネが語りかけます。
「……『魔女様』、少し実験してみたいと思いますわ」
私達は、周りに被害が出ないように、青龍川付近まで移動します。
ペルセポネ宰相の護衛の魔法使いの方に、協力いただいて、実験してみることになりました。
「大地の力よ、我の呼びかけに応えよ!……うー!」
この方は『権能』を持っていない、純粋な魔法使いのようですが……
ボゴンッ!!
何と、大地に大きな穴が空きました!
「あらあら。実験は成功みたいですわね!」
「どういうことなの?強化された『魔法』は、『権能』を持つ者しか使えないのでは!?」
「これは一体、何が起こったのですか!?」
驚愕する『魔女様』と私。得意顔をするペルセポネ。
「この『クロノシア侯爵領』では『魔女様』の魔法陣により、『サトゥルヌス』様の権能の力が巡っているのですわ。その力をお借りして、『魔法』の威力を高められないかと考えましたの。どうやら『土』に関する『魔法』は、強化されるようですわ!」
「……それじゃあ!」
『魔女様』の顔は、喜びに溢れます!
「うふふ。『権能』を持たない人でも、強化された『魔法』が使える。力仕事が苦手な人も、強化された『魔法』により、農作業や土木作業に参加できるのですわ!」
「やりましたよ、『魔女様』!!」
『魔女様』は、歓喜の涙を流し、ペルセポネに感謝します!
「ありがとう……ありがとうペルセポネ!」
その時、遠くの方から、声が聞こえます。
「おーい!領主様、『魔女様』!」
青龍川の護岸作業に従事している老人が、私達を呼んでいるようです。
「作業の進捗を見てほしいのじゃが、今、大丈夫かの?」
そこには、若者が持つのも大変そうな岩が、緻密に積み上げられ、石垣が作られていました!
「……これは!どのようにして、積んだのですか!?」
「カッカッカ!テコの原理を、上手く使っただけじゃよ?」
素晴らしい仕事ぶりに、私達は感動していました。
もしかしたら、老人たちは『魔法』使いや『権能』を持つ者を、超える存在なのかも知れません!
宰相としての公務があるため、ペルセポネは王宮に帰っていきました。
『クロノシア侯爵領』には、あの護衛の魔法使いさんが残って、領民に魔法の指導をしてくださっています!
「しがない魔法使いだった私に、強化された『魔法』を体験させてくれた、この『クロノシア侯爵領』に恩返しがしたいのです」
そんな、ちょっとしたことで、恩義を感じるだなんて……素敵な魔法使いさんの献身に、感謝しましょう。
護衛の魔法使いさんの『魔法』教室の隣では、『魔女様』が『名付け』のアドバイスをしていました。
一般的な国民としては『Jr.』や、日本でいうところの『太郎』みたいな名前が主流です。
もちろん、そのような名前でも素晴らしいとは思いますが、『権能』に限っては、そうも言ってられません!
『魔女様』は、まだちゃんと名付けられていない子どもなどのために、『運命』を司る権能で未来を『占い』、それに合う神話や伝承の偉大なる存在の名前を、いくつか提案していました。
『ゼウス』様や『ユピテル』様も人気でしたが、親しみやすい聖人や偉人の名前も人気がありました。
これらの名前は、宗教的な儀式を経て、『魂』に刻まれると言われています。
それが、偉大なる存在の『加護』を受ける証となり、『権能』を使う条件であると言えます。
そして死後に、その存在の元を訪れて、仕えることを選ぶ者、融合することを望む者などがいるようです。
ここでのアドバイスを元に『名付け』られた子ども達が、この『クロノシア侯爵領』や『王国』の将来を、担っていくのかも知れません。
『魔法』を習得した領民を中心に、青龍川の護岸作業に従事してもらいました。
その効果は凄まじく、現場で働く男達も「俺も『魔法』を習おうかな?」と言うくらいです!
ただし、細かい部分は調整が難しく、やはり男達に任せることになります。
「この様子だと、青龍川を分岐させて、灌漑用の水路造りに移行できそうね!」
「ええ、『クロノシア侯爵領』の東側を穀倉地帯にするという、『魔女様』の計画を実行できそうです」
春に播いた麦の収穫期を前に、ある程度、作業ができれば良いのですが。
「アルテミス、明日、水路の現地視察をしてみましょうよ!」
翌日、私と『魔女様』は、馬車で『クロノシア侯爵領』の東側を視察しました。
寡黙な狩人バルバトスさんに、御者として同行してもらいました。
この人、狩猟以外では「……アルテミス、次は、何をやればいい?」くらいしか話さないような……
『クロノシア侯爵領』は、かつて『荒れ果てた領地』と呼ばれていました。
その謂れは三代前の国王様、『魔女様』のお祖父様の時代まで遡ります。
この辺りは、森が広がっていたと言われています。
ですが、当時の領主は無計画に木を伐採し、近隣の領に建築用材や燃料として売りました。
それにより、一時的に領地は富を蓄えましたが、森を再生不可能なくらいまで破壊してしまったのです!
当時の国王は看過できない問題とし、領主を処罰し、領地を取り上げて王家直轄領としました。
しかし『荒れ果てた領地』が、元の自然豊かな場所に戻ることは、ありませんでした。
王家の直轄領となってからも、管理が行き届かずに荒地化が進み、今に至ります。
『魔女様』が、『荒れ果てた領地』という名前が嫌いなのは、そのような負い目があるからかも知れません。
「ちょっと!止めてちょうだい、バルバトスさん!」
『魔女様』が、何かを発見したようです!
馬車を降りて、確認しにいきます。
「壊れかけの、古い祠……でしょうか?」
「アルテミス、掃除してみましょう!」
水筒の水で布を濡らし、祠を清めていきます。
小一時間くらい掛かったでしょうか?
「アルテミス、地図に此処の場所を、書き込んでおいてちょうだい。水路の予定地に被らなければ良いのだけれど……できれば、このままの場所で祀りたいわね」
「確認してみます!しかし、この場所なら少しの計画変更で、移設しなくて済みそうです」
私達が立ち去った後、祠に、ほんの少し光が灯った……そんな気がしました。




