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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第3章・女騎士アルテミスと徹底抗戦の女王様
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『徹底抗戦』第4話・春の女神と冥界の王

 6面体のサイコロは転がり……『2』を指し示す。


 『荒れ果てた領地』の北の山地。多分、廃坑跡。


 『予想』は付いていた……だけれど、『予想』では、


 1()0()0()%()()()()()()()()()()()


 騎士団が動くとなると、気取られ、逃げられてしまうかも知れない。速やかな包囲が必要なのよ。


 また、『全ての騎士団』を、ハーデスがいる『荒れ果てた領地』に送るのは、『()()()()』が起こる恐れがある……


 チラリと、ペルセポネを見る。




 『啓示』の権能により、急激に『生命力』が奪われるのがわかる。


 ああ、完全に、やばいやつだわ。




「『女王様』!!」


 その時、ペルセポネが、私を抱き締める。


「『春の女神』よ!我が友を救う力を、私に!!」


 そして、暖かな春の日差しのような力が、ペルセポネから伝わってくる。


 それは、春の女神『ペルセポネ』の、癒しの波動。


 全てを癒し、『生命力』を授ける、女神の力。


 ああ……あたたかい……




 『生命力』を回復した私に、アルテミスが詰め寄る。


「なぜ、あのような『無理』を!?ペルセポネ様がいなかったら、どうなっていたことか!!」


「……私も、初めて使う権能だったかしら?」


 うっ!?でも、そもそも、私もペルセポネが回復してくれるとは、思ってなかったし。


「心配をかけてしまって、ごめんなさい。でも、囚われているハーデスのことを考えれば、居ても立ってもいられなくて」


 権能で『タイムリープ』してるだとか、『運命律』がうんたらとか言ってたら、さすがに精神性を疑われそうなので、適当に、はぐらかす。


 尚一層、ペルセポネが抱きついてくる。アルテミスも抱きついてくる。


「……怖かった!あなたまで、私の前から居なくなるのかと思って!」


「『女王様』が居なくなったら、私も生きていけません!」


 私は、いい仲間を持った……




 私は、アルテミスに向き直り、『女王』として告げる。


「アルテミス!『女王』として『勅命』をもって命じるわ!騎士の中の騎士『王下十字騎士』の権限をもって、『王国』左軍騎士団、ならびに右軍騎士団を率いて『北の山地』を包囲しなさい!」


「かしこまりました、『女王様』!」


 アルテミスは、騎士団を招集するため、直ちに動き出す。


「さあ、私達も行きましょう!ハーデスが、待っているわ!」


「ええ、『女王様』。私もあなたの側にいて、支えますわ。ハーデスを、無事に助け出しましょう」


「何を言ってるの?きっと、あなたが『主役』よ?」


 ペルセポネは、きょとんとして、首を傾げている。




 アルテミスは、鋭い目つきで命令を出す。


「騎士団は即座に出動準備を整え、北の山地を包囲せよ!クーデター派は、坑道跡に潜んでる可能性があるから、注意するように。『女王様』と私は、現地に向かうので、すぐに集結地点に向かいなさい!」


 アルテミスは、私に向かって礼をし、報告する。


「女王様、準備が整いました。現地に向かう準備も万全です。」


「そうね。行きましょう、アルテミス!」


 アルテミスが、怪訝な顔で聞いてきます。


「……恐れながら、『女王様』。『荒れ果てた領地』の地理に、随分詳しくないですか?土地勘があるというか……」


 アルテミスは、訝しんだ。


「ああ、たまたま、昨日の夜に読んだ資料が『荒れ果てた領地』についてのものだったのよ。咄嗟に隠れ家に、できそうな所を上げてみたけど、結果オーライね」


 『()()()()()』で『領地経営』してる、なんて言えないから、適当に、はぐらかす。


「そうかな……そうかも……」


 アルテミスは、頭を捻っていた。この娘は、妙に感が鋭いのよね。




 ここは『荒れ果てた領地』の北の山地。


 祖父の代に『やらかした』領主から、領地を取り上げた場所。それ以来、王家の直轄領となっているが、管理できてない状態が続いている。


 王都を出立した、左軍騎士団、ならびに右軍騎士団は、夕方頃に陣地設営を済ませ、交代で警戒にあたっている。


 彼らには、中にいるクーデター首脳陣を『逃さない』ようにと、厳命している。


 日は既に落ち、『月』の光が辺りを照らす。


 そう、『彼女』の出番である。


「『女王様』、包囲は完了しました。北の山地のハーデス殿下がいると思われる坑道に、侵入する入り口を発見しました」


「アルテミス、あなたの『光の屈折』と『暗視』の権能を、私達にも付与して。攻撃をあなたが防ぎ、ペルセポネが魔法で無力化する。私は『時間』を司るの権能で、数秒先の未来を見て危険を知らせるわ」


 我ながら完璧な作戦!大気流突撃とでも名付けましょうか!


「うふふ。さあ、行きましょう『女王様』。私たちの力を合わせて、ハーデスを救い出すのですわ」




 と言っても、さすがに権能の合わせ技に、敵はかなうはずもなく、私達は最深部に到達する。


「二人とも下がって。私の『サトゥルヌス』の権能で、ハーデス以外を、無力化するわ!アルテミスは、権能の発動が確認され次第、突入してちょうだい!」


 二人は、私に頷く。


「いい?権能を発動するわ!


 我が信奉を捧げる神『サトゥルヌス』よ!


 不届き者に、不自由の罰を与え給え!


 【我は『女王』!頭が高い、跪け!】」


 権能の効果が確認され、アルテミスが突入する。


 中では、貴族や有力商人たちからなる、クーデター首脳陣が、権能の効果で拘束されている。


 口々に、『女が!』とか『王位簒奪の罪人が!』と、つぶやいている。


 ()()()()の者たち。噂話に踊らされている、哀れな人達。


「『女王様』!ハーデス殿下です!牢に閉じ込められています!」


「……ハーデス!」


 報告するアルテミス、涙するペルセポネ。


 しかし、私は、権能の高まりを感じていた!


「待って!ハーデスの様子がおかしいわ!アルテミス、ペルセポネ、油断しないで!」


 その時、牢が衝撃でガシャンと音を立てる。


「ぐぐぐ……ぐがぁぁぁ!!」


 ハーデスが唸り声を上げ、牢を破ってしまう!


「二人とも警戒して、ハーデスは自我がないようだわ!!」


 きっと、薬物や魔法を使って『傀儡化』しようとした副作用。ハーデスは抵抗していたが、あと一歩遅かったか!?


「二人とも、お下がりください!ここは私が!」


 アルテミスが、前に出る。


 ハーデスの権能を纏った腕が、アルテミスを掠める。


「ぐぅ!!」


 あの、アルテミスが、()()()()()()()()!?


 『ハーデス』。冥界の神。


 ハーデスは、その偉大なる力を具現化し、暴走している!!


「ペルセポネ!私たちの権能は、名前の影響を受けるわ!そこで、『ハーデス』の伴侶の名前を持つ『ペルセポネ』!あなたに、ハーデスの説得をお願いしたいのよ!」


「私が、ハーデスを!?」


 そう。ペルセポネを仲間に引き込んだのは、『神話的な結びつき』を期待してのことでもある。


「『春の女神』の優しさと慈しみの力で、ハーデスを説得して、ハーデスの自我を取り戻すのよ!」


「わかったわ、『女王様』。ハーデスを説得します」


 ペルセポネから、優しさと慈しみの波動が溢れ出し、ハーデスに近づいていく。


「ハーデス、聞いてください。私は、あなたを守り、支えたいと心から思っています。どうか私を信じて、あなたの内に眠る『ハーデス』の力を、呼び覚ましてください。私たちはあなたを必要としています。共に、より良い未来を築きましょう。あなたの心の奥にある優しさと慈しみを感じて、私たちと共に歩んでください」


 しかし、ハーデスは唸り声をあげる。


「うぅぅ、がぁぁ!!」


 地面から、冥界の力を宿した鎖が現れて、私達を拘束する。


 くっ、しくじったか!?


 しかし、ペルセポネがさらに深く、ハーデスの目を見つめ、心からの訴えを続ける。


「ハーデス、あなたは一人ではありません。私たちはここにいます。そして、私たちはあなたを愛し、支えます。どうか自我を取り戻してください。私たちは、共に、この困難を乗り越えることができるのです」


 ペルセポネは自身の権能の力を高め、冥界の鎖をほどいていく。


 それは、固く冷たく閉ざされた心が、春の日差しで氷解していくよう……


「思い出してください、ハーデス。私達が二人で暮らした、あの穏やかな日々を!二人で助け会い、支え合った生活を!」


 ペルセポネは、優しい笑みを浮かべ、ハーデスに近寄る。


 ハーデスは、たじろぎ、ただペルセポネを見つめている。


「その調子よ!ペルセポネ!最後にハーデスに愛を囁いてちょうだい!あなたを慕ったハーデスならば、きっと、あなたの想いに応えてくれるはずよ!」


 ペルセポネは、私に頷く。


 ついに、ペルセポネはハーデスの元にたどり着き、優しく頬に手を添える。


「ハーデス、私は、あなたを愛しています。あなたの心の強さ、優しさ、すべてを愛しているのです。どうか、私の愛を感じてください。あなたの中の『ハーデス』の力を信じて、解放してください。私たちは、共に、未来を切り拓くことができるのです」


 ペルセポネは、ハーデスの額に優しくキスをする。


「ハーデス、私の愛を受け入れて、私たちと共に歩んでください。私たちはあなたを信じ、愛しています」


 ハーデスの目に涙が浮かび、自我が戻ったように感じる。




「……ペル、セポネ……お姉ちゃん?」


「はい!私達は、やっと『()()()』の、かしら?」


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