『徹底抗戦』第2話・王国法と王位
魔法の炎を操り、ペルセポネが叫ぶ!
「あなた達に、ハーデスを殺させやしないわ!!」
ん?ハーデスを殺す?
『金縛り』の魔法が解けてきて、発言できるようになる。
この場を収めるには『絶対遵守の命令』しかない!!
「【二人とも、止めよ!!】」
権能の拘束力で、二人がピタリと止まる。
悔しそうな顔をするペルセポネに向かって、話す。
「あー、ペルセポネさん?私は、ハーデスを殺そうとしてません、よ?」
「「えっ!?」」
ペルセポネとアルテミスが驚く。いやいや、アルテミス!?
「まずは、落ち着いて!王宮が焼けちゃうから、火は消して!……アルテミスは、そこで反省!!」
「……どういうことなの?あなたは、ハーデスを捕らえて処刑するために、私を呼んだのではないの?」
いつの間か、ハーデスを処刑することになっている!?
「……『女王様』が『ハーデスは生かして連れて来るように』と言ったので、公開処刑にするのかと……」
「ひっ!?」
「アルテミスは、黙ってて!!」
しょんぼりする、アルテミス。
さて、どう説明したら良いのかしら?
「まずは、ハーデスは現在『継承序列・第一位』よ。そして、今の、私の立ち位置は『中継ぎ』といった状態よ」
「……どういうこと、かしら?」
忌々しい『王国法』の記述を、私の口から説明しなければならないなんて!
『王国法』のせいで、アルテミスを裏切らせて、騎士の名誉を傷付けた世界線だってあるのに!!
「『王国法』において、王位は男系相続であり、『女王』は基本的に認められてないの。『成人の正統後継者』がいる場合には、速やかに王位を譲らなければならないわ」
そう。だから『女王』は、王族の信任が必要なのよ。
「王族は、ハーデスを『正統後継者』と認めていて、私も、それを支持している。ハーデスが成人する……か、ハーデスの資質ならば、もっと早まるかも知れないけど、それが『女王』としての私の『任期』」
……私は、ハーデスの『代用品』にしか過ぎない。だけれど!
「もしもハーデスの意思で、王位に立つ、と宣言すれば、私は『王国法』が持つ『世界の強制力』によって、排除されるはず」
『コックリさん』。『おじいちゃん』が、ヒントをくれたから。
「けれども、そうなってないのは、ハーデスが『傀儡化』に抵抗しているからよ」
過去の、いえ、『違う世界線』の私は、その認識が曖昧だったのよ。
私は、自然と窓の外を見る。
だけれど、『サートゥルナーリアの大結界』は、この『継承』問題だけは、解決してくれなかった。
「……ならば尚のこと、ハーデス殿下を処刑すれば、『女王様』の任期は延びますよね?」
「ひっ!?」
「アルテミスは、黙ってて!!あなたは『不敬罪』って言葉を知らないの!?」
再び、しょんぼりする、アルテミス。
「だから安心して、ペルセポネ。あなたも、私も、ハーデスも。私達は皆、あの『事件』で、家族や親戚を失った者同士」
ペルセポネの目に涙が溢れる。
そう。ペルセポネの両親も公爵であり王族。あの『事件』で犠牲になり、公爵家は取り潰しになった。
ハーデスも、そう。目の前で両親が犠牲になったと聞いている。
「私達は、同じ苦しみを共有している。だから、他者にも優しくできる……そうよね、ペルセポネ?」
ペルセポネと私は、互いに寄り添い、抱き合う。
「好きだったのよね?……ハーデスのことが」
ペルセポネは、声をあげて泣いた。
ハーデスは、『事件』で両親を亡くして、精神を病んでいた。
ペルセポネは、ハーデスを弟のように可愛がり、身の回りの世話をしていた。
ハーデスも、ペルセポネを慕い、心の傷が癒されつつあった。
家族を亡くした二人にとって、その生活は幸せなものだった。
そんな二人を引き裂いたのが、今回のクーデターであり、反『女王』派とも言える集団。
ハーデスを連れ去り、『傀儡』の旗印としたのだった。
「……ごめんなさい、『女王様』」
泣いたせいか、落ち着いた様子のペルセポネ。
「だから協力してちょうだい、ペルセポネ。ハーデスを、一緒に助け出しましょう!」
ペルセポネは、私の目を真っ直ぐに見る。
そして、決意をもって告げる。
「……ええ……ええ。『女王様』、私も、ハーデスを助けたいわ!!」
強力な魔法使いであり、『春の女神』の権能の使い手、ペルセポネ。
私達は、心強い味方を得たのだった。
アルテミスは、クーデター派の情報入手のため、留守になることが増えた。
私の自室には、ペルセポネが代わりに来てくれるようになった。
「私達も、ハーデスの情報を得るために、動き出すべきね……アルテミスも頑張ってたし、私達も頑張らないと!」
「そうね。『サトゥルヌス』の『運命』を司る権能は使えないかしら?占いみたいな感じで」
『運命』を司る権能による占いは、考えたのだけれども……
「タロットカードを使った場合、『なろう』に掲載した時に、滑稽になりそうで控えているのよね」
「あらあら、随分メタい発言をするのね?」
タロットだと、人の『印象』が介在する要素があるから、純粋な『運命』の結果が出ないような?
「……じゃあ、コレはどうかしら?」
そう言って、ペルセポネが出したのは、おもちゃのコイン。
「コインの表と裏で、結果を割り振ってからトスすれば、必ず、表と裏が出るから、占いに100%の確率を担保できるはずじゃないかしら?」
「それだわっ!!」
私達は、実験を開始した。
「では、明日の天気を占ってみましょうか!100%の確率が担保されてるから、確実にわかるはずよね!」
「ええ、100%の確率が担保されているから、確実にわかるんじゃないかしら?」
「では、表が『晴れ』、裏が『雨』!『運命』の神、『サトゥルヌス』よ、我に『啓示』を与えよ!!」
ぴーーーん!ぼろ、ぼろ、ぼろ……
!?!?!?!?!?
おもちゃのコインは、無残に砕け散り、風に飛ばされていった。
「おかしい!100%の確率が担保されているのに、コインが砕け散った!!」
「あらあら、100%の確率が担保されているのに、コインが砕け散ったのかしら!?」
私達の、ハーデス捜索は、振り出しに戻った。
メモリに追加:ペルセポネは、女魔法使い。元公爵令嬢。
『通常モード』:優しいお姉さん口調。『春の女神』の権能。
『裏モード』:_




