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女領主アルテミスと運命改変の魔女様・第3話

 第1回の『調達班』の成果は素晴らしく、冬の労働に向けての食料確保に、手応えを感じました。


 近隣の植生を調査し、採取できそうな木の実や山菜の目星を付けました。


 また、メインとなる狩猟においても、連携を構築し、罠を活用しながら、確実に成果を上げています。


 若い領民たちが獲物を追い込み、私が『狩猟の女神』の加護を受けた弓矢で、仕留めます。


 途中、バルバトスと名乗る青年が、強烈な弓矢の技量を示し、二組に分かれて行動できたので、効率が向上しました。


 『荒れ果てた領地』と侮っていましたが、あれほどの腕前の領民もいるものなのですね。


 狩猟を生業としてるのか、身なりから何処かの貴族の子息が、流れ着いたのか?







「おかえりなさいませ、『領主様』。狩猟の成功、おめでとうございます」


 『領主様ごっこ』の『魔女様』が出迎えてくれました。


 黒く長いローブのフードを目深に被っていて、魔女のような雰囲気が出ています。『魔女様』なのですが。


「出迎えご苦労。今回の成果は、鹿が4頭、猪が6頭。狼は見なかったが、熊を1頭、仕留めた。領都付近に、まだいるならば警戒が必要だな」


 『領主様ごっこ』で応えます。フードの中で笑いを堪えてるのが見えます。


「しかし、熊は『冬眠』するものだと思っていたが……」


「『領主様』、これは私の推測ですが『クロノシア侯爵領』は、森林が豊かではありません。ですので、冬眠するだけの『食い溜め』が、できない個体が多かったのでしょう。そうしているうちに『冬眠しない』熊の方が、生存に有利となったのでしょう」


 自領の不甲斐なさが、野生動物である熊にまで、影響を及ぼしているとは。


「悲しい進化だな」


 解体のために、倉庫に入れられる熊を見ていると、風が冷たく感じられました。


「お寒うございましょう?離れで、お茶を用意いたします」


「ああ、よろしく頼む」


 『調達班』の成果はなにも狩猟ばかりではありません。


 木の実はもちろん、クルミやドングリなども貴重な栄養源となりますし、キノコやタラの芽なども見つけることができました。


 これら森や大地の恵みに感謝しながら、『荒れ果てた領地』を再生していかなければ。 


 自然と人の営みが調和する、そんな美しい領地に。


 ……そう、私は決意を新たにするのでした。







 領主の館の離れ。ここは、立ち入りが制限されていて、主は『魔女様』です。


「アルテミス、改めてお疲れ様でした。あなたが無事に帰って来たことが嬉しいわ!」


 二人で紅茶をいただきます。この前の紅茶とは違うように感じます。


 おそらく、こちらが『魔女様』自ら淹れてくださった紅茶……やはり、私は試されているのです。


「やはり、『魔女様』が淹れてくださった紅茶は、私にとって『最高のご褒美』です!」


 言外に、あなたの企みは関知してますよ、と意志を込めます。ん?なぜそこで身悶える?


「……ごほん!アルテミス、『調達班』が確保した食料や物資について、おさらいしましょう。猪の肉は豚に近く、比較的受け入れやすいでしょう。問題は鹿の肉です。鹿は身が締まっていて、全体として硬い印象を受けました。私は、ミンチにしてハンバーグのようにして食べるのが、おすすめだと感じました」


 随分、実感を伴った説明が続きます。食レポかな?


「皮を鞣して、角を加工すれば、街道沿いで商人に売れるかも知れません。毛皮の端材は、防寒具にしたり、防具の裏地に使ったりできるかもしれません」


 確かに、肉以外の部分も、有効活用すべきですが……


「ジビエですので、寄生虫などのリスクがあります。火は十分に通して、調理器具なども清潔に保つ必要があります」


 『魔女様』、その知識を何処から?現実チート?


「……読者への、注意喚起?」


「私の心の声を、読まないでください!!」


 その後も、『魔女様』と『調達』した物資の扱いについて確認しました。




 そして話は、中長期的な領地経営に、移ります。


「この冬に、新たな農地の開墾を行うわ。でもそれは、領民が満足に食べていくための施策に他ならないわ!荒れた農地でも育ちやすい芋類やかぼちゃ等の救荒作物を奨励して、不作に備える必要もある」


「確かに、この冬の食料不足は、麦を偏重した農業体系が仇となりました。食品の多様化という面でも、主力の麦の増産を目指す一方で、救荒作物の導入は、理に適っています」


 『魔女様』は満足そうに頷き、続きを話します。


「私は、『クロノシア侯爵領』東側の荒地を『王国』有数の穀倉地帯とすべく、領都の東側に流れる河川の改修と用水路の敷設を、領主アルテミスに進言いたしますわ!」


「『魔女様』!それは総大ですが、素晴らしい計画です!この『クロノシア侯爵領』の荒地が蘇り、『王国』の経済に参入できるのならば、それは領民や、私達の誇りとなることでしょう!」




 その話し合いの中、『魔女様』の左手の人差し指に付けている『指輪』が気になりました。あれは確か……


 『魔女様』が王宮の混乱に乗じて、ちゃっかり『王家の秘宝』を盗んd……いやいや、パクっt……いやいや。


 そう!『継承』していたなんて、私は気付きませんでした!!……ですが、これからも気付かないフリをしましょう!


 うん、それが平和でしょう!!




 『指輪』に気を取られていて、途中の『魔女様』の話を聞いていませんでしたが、『魔女様』は、確かに、こう言いました。




「領都の周りに、1から12の数字の名前の街を、造るわ!」


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