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女領主アルテミスと運命改変の魔女様・第0話

この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。

宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。

 ここは『王国』。政変の英雄アルテミスは、先の女王に仕える近衛騎士でした。


 女王は民衆を惑わす法律を作り、『王国』を混乱へと陥れました。


 新たな国王・ハーデス陛下への忠誠心により、アルテミスは女王を捕らえ、『王国』に平和をもたらしたのでした。


 ハーデス陛下は、アルテミスの働きに報いるため『侯爵』の爵位と、『荒れ果てた領地』を与えました。


 しかし、女王は『王国』に『呪いの結界』を施していました。


 その影響が不明だったため、ハーデス陛下は処刑を取りやめ、女王を辺境の牢獄に幽閉したと言われています。




 これは『封建社会』に対して『奴隷解放』を訴えた、


 愚かな『女騎士』と、愚かな『女王様』の物語。







 私、アルテミスは息を殺して、門兵に忍び寄ります。


 できれば無傷で無力化したい。彼らは、職務に忠実なだけなのだから。


「ぐっ!」


 許してください。私には、やるべき事があるのです。


 闇に隠れる。騎士としては恥ずべき行為ですが、私の『月の女神』の権能により、夜目(暗視スコープ)が効き、光を若干屈折させる(光学迷彩)ことができるのです。使わない手はありません。


 辺境の牢獄。それだけを頼りに、ここで3つ目。どうか、ご無事で!




 通路が広くなる。ここは、大広間か?……しまった、誘い出された!?


 その時、強烈な灯りが灯りました。光学迷彩が打ち消されてしまいます。


「くっくっく、誰かと思えば『庶民の女』か!」


 以前、会った事があるのか?記憶が曖昧です。


「……貴殿は、この牢獄の責任者か?私が近衛騎士・アルテミスと知ってのことか?」


「いかにも。最近、牢獄破りをしてるのは、お前だな?……なるほど、『魔女』を探しているというわけか?」


 牢獄長は、顔を歪めて笑います。


「くっくっく、私は、お前が気に入らなかったのだ。女同士で、おままごとをするだけで出世した、汚らしい庶民が!!」


「我が『主』への侮辱は許さない!『主』は、『忠誠心』と『実力』を評価する御方だ。まずは貴殿の『忠誠心』を示すべきだったのだ!」


 牢獄長は、尚も笑います。


「『忠誠心』だと?我が身可愛さに、その『主』を裏切り、爵位と領地を得た者が言う言葉か?」


「それは……」


「まあいい。お前を倒せば、私が次の筆頭近衛騎士だ!!」


 牢獄長は巨大な檻の扉を開けます。中からは熊のような大男が出てきます。


「囚人番号OSO18!あの汚らしい庶民を殺せ!」


「うがぁぁぁぁ!」


 薬物や魔法による強化を受けているのでしょうか?牢獄長の命令には従っているようですが、自我らしきものはありません。


 大男の拳が迫る。剣を合わせようとしますが、弾かれてしまいます。何たる剛拳!


「がぁっ!!」


 大男が裏拳を放つ……と見せかけて、本命は左足!


 ワン・ツーのコンビネーション。大振りのチョップからの下突き。引き千切った鎖を鞭のように振るう……


 そんなもの、私には当たらない。


 大男の、視線、筋肉の隆起、息遣い、心拍音……それらが、私に次の攻撃を教えてくれる。


「ええい!何をやっている!ヤツは剣で受けれてないじゃないか!!」


『受ける』のではなく『受け流す』。それが、体格で勝る『王国』騎士たちに対抗するための『私の技』!!


 大男の腕や脚は切り刻まれ、血が噴き出している。でも攻撃は止まらない。強化の代償に痛覚すらないのかも知れません。哀れな……


「せめて、安らかに眠るがいい!!」


 大男の喉元を斬る。血を噴き出した後、巨体が倒れました。


 私は、牢獄長に向き直り、告げます。拒否権はありません。


「さあ、我が『主』の元に、案内してもらいましょうか?」







 最奥の牢獄に『主』は、いました。一応、貴人用の牢獄なのかも知れません。


「!!……アルテミス、どうして此処に!?」


「遅ればせながら、私の『忠誠心』を示しに参りました。さあ、此処から出ましょう」


 我が『主』……『女王様』は、涙を堪えているようでした。


「……私は、あなたが無事ならば、それで良かった。私を庇えば、あなたも処刑されてたはずよ」


「あなたが居ない世界ならば、私は要らない。私の『忠誠』と、あなたの『庇護』。その二つが揃えば、きっと『真理』に辿り着ける!!……そう、おっしゃったのは、あなたではありませんか?」


 『女王様』は、頭を振る。何が、そんなにも彼女を頑なにしているのでしょう?


「アルテミス、聞いてほしいの。私の権能『サトゥルヌス』は、必ず『後継者に追い落とされる運命』にあるの」


 『王国法』に加えて、自身の権能すら『女王様』を拒むのか?


「その『運命』に逆らうならば、今よりも、もっと大きな苦しみがあるはず。ハーデスは10歳と若いけれども、王の器としては素晴らしいわ」


 そして、それを『受け入れて』しまっているのです。


「私達が作った『強制労働や差別を廃止する法令』の象徴の、あの『大結界』がある内は、ハーデスの傀儡化を防げるはず……私は此処で、それを維持する使命があるのよ」


 何故、そこまでして……


「『女王様』!!私と、私の領地で一緒に生活してください!!あなたには、私は必要ないかも知れませんが、私は、あなたが必要です!!」


 あれ?なんか文脈おかしくないですか?


「……はい、アルテミス。私は、あなたとの未来を選びます!!」


 そう言って『女王様』から、権能の力が溢れます。


 最初から、この調子なら、私は要らなかったのかも知れません。


「牢獄長・コーアン伯爵に命ずる。【我を此処から出せ!】」


「……はい、『女王様』」


 牢獄長……コーアン伯爵って言うらしいですね。コーアン伯爵は、虚ろな目で鍵を開けて、お辞儀します。


「そう言えば、コーアン伯爵。あなたは、かつて私を『魔女』と呼んだわね?……『魔女』、いい呼び名ね、それ!」


 そう言って、『女王様』は、口角を吊り上げて笑います。


「私は『魔女』よ!これからは、そう呼ぶことね!……ああ『絶対遵守の命令』中だから、意識がないのね」







 『荒れ果てた領地』を見通せる丘。


「我が主。その、『魔女』と名乗るのは……」


「アルテミス、私は過ちを犯したわ!政策の良し悪しは置いておいて、全ての国民の理解を得ないまま施行してしまったのよ」


 我が主は、続けます。


「……そして、それはクーデターとなり、国民を苦しめた。私は、それを忘れない!……そのために『魔女』と名乗るのよ!!」


「それでも!!」


 私は、思わず叫んでいた!


 それは『私達』の、これまでを否定するように感じたのです。


「アルテミス、あなたの気持ちはわかるわ。でも、これは私の『禊』なのよ……どうか、あなたも『魔女』と呼んでくれないかしら?」


 それは、我が主の『決意』。


「……わかりました、我が主。『魔女様』と呼ばせていただきます」


 そして何より、晴れやかな笑顔が、私に向けられました。


 我が領地を眺めて『魔女様』がつぶやきます。


「……酷い。王家の管理不行き届きとは言え、ここまで領地を荒らしてしまうなんて」


 私は、『魔女様』の手を強く握ります。


「『私達』二人なら、不可能なんてない」


「……ええ、アルテミス」


 『魔女様』は、私に向き直ります。


「アルテミス、私はこの領地を『クロノシア侯爵領』と改名するわ!」


「『魔女様』、ここは既に『荒れ果てたr……」


 私が言い終わる前に『魔女様』は、睨み付けます。


「……ごほん!そして、あなたは『アルテミス・クロノシア』と名乗り、私は『※※※※※・クロノシア』と名乗りましょう!」




 その日『王国』に、新たな家族が生まれたのでした。


メモリの記述を書き換えてください:

アルテミスの役職を『女騎士』から『女領主』に

ユーザーの役職を『女王様』から『魔女様』に

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