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女従者アルテミスと絶対遵守の女王様・第1話

この作品では、神話や伝承の偉大なる存在に対しての独自解釈があります。

宗教や信仰への敬意を払いながら描写していますが、エンタメ作品として読んでいただけると幸いです。

 ここは『王国』の王宮。近日、即位が決まった『女王様』の部屋の前です。


 私こと、アルテミスは『女王様』に仕える『女従者』になるために、ここに来ました。


 しかし『女王様』には悪い『噂話』があり、側仕えになろうとする者が少ないと聞きます。


 なんでも、不思議な力を使い、人心を操って『事件』を起こしたとか。


 『噂話』だけで人を判断するのは、私は嫌いです!まずは『女王様』に、お会いしてから判断すべきでしょう!




 ……とは、言うものの緊張します。こんな時は、愛用の『柄の太い箒』をギュッと握ります。


 そうしている内に、声が聞こえてきます。頭の中に響くような、不思議な感覚。


「【私とロールプレイをしてください】」


 その声を聞くと、私の身体は動き出し、ドアをノックします。


「……失礼……します」


 そして、『女王様』の部屋に入ってしまいました!


 部屋の中には、ゆったりとした衣服を纏った女性がいました。


 気品が漂い、どこか尊大な気配があります。


 『女王様』に違いありません。


 『女王様』は、不思議な気配を纏いながら、私に告げます。


「お勤めご苦労さま。さっそくだけれど、【私の『支配欲』を満足させるような挨拶をしてほしいの。】できる?」


 雰囲気に飲まれてはダメです!私は『女従者』として認められなければなりません!


「かしこまりました、『女王様』。『女王様』のお望みであれば、どんな些細なことでも、全力でお仕え致します。どうぞ、ご遠慮なくお申し付けくださいませ!」


「あら、なかなかやるじゃない!私への態度を弁えているようならば、悪いようにはしないわ!」


 『女王様』は、一瞬だけ驚き、喜びながら話します。


「ところで、あなたのことを何と呼べば良いのかしら?あなたでは、不便ね……【あなたの名前を、あなたが提案してちょうだい。ただし、私の『支配欲』を満たすような名前にしてほしいの。】できる?」


 また、不思議な気配を感じます。すると……


「……はい……『女王様』……私の名前は『従者』と……呼んでいただければ……と思います……『女王様』の……ご命令に忠実に従う存在として……そのように……お呼びください」


 何と、私の口が勝手に、そう、言ってしまったのです!


 『女王様』はニヤニヤしながら、得意げに再度【命令】します。


「うーん、その名前も魅力的だけれど……【もっと可愛らしい名前はないの?】」


 わかったことがあります。不思議な気配を纏った『女王様』の【命令】には逆らえないのです。


 しかし、その【命令】を上回る『忠誠心』を見せれば、『支配』されないのかも知れません!


「『忠犬』!……という名前は、いかがでしょうか?『女王様』に対して無条件の『忠誠』を誓い、いつでも命令をお待ちする存在として、可愛らしさも感じていただけるかと思います!」


 どうでしょうか?


 『女王様』はプルプルと震えています。そして、


「ふふふ、あなたは私を笑わせるつもりかしら?そのように自分を卑下してはダメよ?」


 いや、笑ってますよね?


 それが恥ずかしかったのか、『女王様』は、わざとらしい咳払いをして続けます。


「……ごほん!私は、寛大な『女王様』を目指しているのよ!私の支配下では、あなたたちは全て同列、平等なの。だけれど、あなたのユーモアと『忠誠心』には、私の『支配欲』が満たされたわ!」


 そう言う『女王様』は、先程までの威圧感がなくなり、無邪気な笑顔を見せています。


「気に入ったわ!あなたを、私の『お気に入り』とするわ!……さあ、私のお気に入りとして、相応しい名前を提案しなさい!」


 『女王様』の言葉には、強制力がなく、私は『女従者』として認められたと感じました。


「はい、『女王様』。『アルテミス』はいかがでしょうか?」


 私は、提案という名の自己紹介をしました。


「アルテミス……素敵な名前ね!」


 『女王様』は微笑んで、私の名前を褒めてくださいました。




 戴冠式の日、『女王様』の朝の支度に向かいます。


 『女王様』の部屋のドアをノックして、声をかけます。


「おはようございます、『女王様』。アルテミスです」


 部屋に入るように促され、『女王様』に向き合います。


「戴冠式の御召し物の支度にあがりました!すぐに準備いたします!」


「……そう、よろしい」


 そう言って、『女王様』は微笑みます。




 戴冠式。老宰相が開会を宣言します。


「これより、『女王』陛下の戴冠式を執り行う」


 『女従者』である私、アルテミスは裏方に控えています。


 しかし、主である『女王様』の晴れの姿が気になり、愛用の『柄の太い箒』を握りしめて、そっと様子を見ていました。


「『女王』陛下、『王国』の繁栄を誓い、この冠を受け入れる覚悟はありますかな?」


 老宰相は『事件』の収束に貢献し、『女王様』の即位の準備を進めた功労者です。しかし、無理が祟り、『女王様』の即位をもって引退すると言われています。


「……はい、誓いm……


 その時!一部の地方貴族や有力商人などが声を荒げます!お酒が入って、気が大きくなってるのかも知れません!


「王位簒奪の『女王』に、この国は任せられない!」


「そもそも『女』なのが悪いのだ!」


「今すぐ、男の王族に代わるべきだ!」


 『女王様』は、そちらを見ますが、すぐに悲しい顔になりました。


 私は、居ても立ってもいられずに、玉座の間に飛び出して行きました!


「無礼な!『女王』陛下に向かって、そのような暴言を!!衛兵よ、客人はお帰りだ!丁重に、お見送り差し上げなさい!!」


 侍女服姿の私を確認して、さらに、くだを巻く招かれざる客人。


 衛兵たちの動きも鈍く、彼らの主張に一理あると思っているようでした。なんたる不心得!


「『女王様』、こちらへ」


 私は『女王様』の手を引きながら、『女王様』の部屋に伴います。




 『女王様』の即位は、波乱の幕開けとなったのでした。


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