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ローザはスヴァルツと庭園の四阿で膝に乗り身体を寄せている。


「愛している俺のローザ」


ローザの指を食みチクリと甘い痛みと共にスヴァルツがローザの血を吸い上げる。


「私も愛しているわ」


その姿を恍惚と見つめるローザもスヴァルツの首筋へ赤い証を残そうと唇を寄せた。


「スヴァルツ様。こちらへエストレア国の王子二人が向かっていると影から報告が入りました」


どこからとも無く現れたのは、スヴァルツの執事であるシャテンだ。あの老人を若くした姿で、ローザはシャテンの事は怖がらない。


ローザはシャテンとアリア以外の人間には、心を開かない。

スヴァルツがどうしても離れる場合でも、この二人のどちらか居なければスヴァルツから離れられないのだ。


「ローザ、すぐに戻る。アリアを呼べ」


スヴァルツの言葉に、シャテンが恭しく頭を下げ、その場から忽然と消える。


「すぐ戻って来て。私を1人にしないで…」


ローザの瞳から涙が溢れれば、それを受け止めるようにスヴァルツが指を這わす。黒い羽と力強い腕でローザを包み込むと、ローザは安心したかのように眠ってしまう。


スヴァルツはローザを抱き上げ翼をバサリと羽ばたかせ、二人の住まう部屋に降り立った。宝物を扱うようにローザをゆっくりと豪華なベッドへ寝かす。


額にひとつキスを落としたが、スヴァルツは離れ難くいつまでも白銀の髪をクルクルと指へ巻き付けていた。


「スヴァルツ様。そろそろ行きませんと皆が待っております」


扉付近にシャテンとアリアの姿を認め、チッ。と舌打ちをしながらローザの傍から離れるスヴァルツを、二人はクスクスと笑いながら見守る。


「ローザ様がお目覚めになられましたら、ご連絡致します」


アリアは軽く頭を下げ、スヴァルツを見送った。


「王子達は何をしに来るのだ」


苛立った様子のスヴァルツに、シャテンからの返答は無い。




バン!!


重厚な扉を叩くように開ければ、スヴァルツを待っていた者達が椅子から立ち上がり、片手を胸に当て頭を下げる。


苛つきながら上座へ座るスヴァルツを確認してから、部屋の中央にある長テーブルへ、5人の異形の者達も席に着く。


「カルマン、奴らの始末をしたのでは無いのか!!」


カルマンと呼ばれた頭に牛のような角を生やした男が、スヴァルツへ報告する。


「我が主。王子達はローザ様が居なくなり初めて事実を知ったようで、我が主とローザ様へ謝罪したいと」


カルマンの言葉が気に入らないスヴァルツへ、


「恐れながら、我が主。発言を宜しいでしょうか?」


声を上げたのは、長い尻尾を持つ豹の男。


「バルサ。申してみろ」


スヴァルツの言葉にバルサと呼ばれた男が口を開く。


「あの王子達なら、話し合う価値があるかと、我が国を取り戻せるかも知れませぬ」


バルサの言葉に集まった異形達が頷くが、スヴァルツただ1人は顔を歪める。


「そんな事の為にローザを虐げた者達と話し合いだと?バカを言うな!」


もう話は済んだと席を立つスヴァルツを止めたのは、細い体躯の白い翼を持った初老の男。


「我が主。ローザ様は確かに唯一のお方。しかし、亡くなれば新たにローザ様の魂を受け継ぐ者が産まれまする。


あれは単なる器でしかないのです」


その言葉にカッとなったスヴァルツは、初老の男の首に手をかける。


「あれが俺の唯一の花嫁だ。二度と申すな!」


バン!!と床に男を投げ飛ばすと後ろを振り向かず部屋から出て行った。



残された者達は、初老の男へ駆け寄り話し出す。


「メデオ殿。我が主は、やっと見つけたローザ様を手離す事はなさらないかと」


バルサが初老の男メデオへ言うが、メデオの瞳は仄暗い。


「王子達二人にローザ様の器を壊して頂こう。さすれば我々に都合良い器を持った魂を我が主へ差し上げられる」


スヴァルツが居なくなった部屋でメデオの不穏な言葉に否を唱える者は居なかった。



ローザは、まだベッドの上で微睡んでいた。ふわりとした浮遊感に目を開ければ、スヴァルツの蕩けるような笑みが見え、胸に顔を埋めながら甘えた声を出す。


「スヴァルツ寂しかった」


すり寄るローザの旋毛へキスを落とし、スヴァルツはローザの温かさを堪能すると、ソファへ座りローザの顎へ手をかけ上向かせた。


薄く開いた唇からローザの赤い舌が見えると、後頭部へ手を回しローザの唇を嘗める。するとねだるようにローザからスヴァルツへ唇を寄せた。


スヴァルツはわざと自身の唇を噛み血を流せばローザへ嘗めさせる。その間にスヴァルツはローザの唇を噛み血を流し嘗めとるのだ。


血の契約が強くなればなる程。二人の魂は絡み合い、離れられなくなると知るのはスヴァルツのみ。


ローザの甘い血を嘗めとると、口の周りをペロリと嘗める。スヴァルツの身体が喜びに震え、我慢が出来なくなったのか潤んだ瞳を向けるローザを抱き上げ二人はベッドへ向かう。


アリアとシャテンは、二人に気付かれないように退室した。


「我が主は、我慢が出来ないようだ」


シャテンの言葉にアリアもクスクス笑いながら頷く。


「私の可愛い子ども達が、メデオ殿の行動を見張っています。ローザ様へ害を為すなら、この命に代えてお守りします」


アリアの言葉にシャテンも苦い顔をする。


「あの老害を早くどうにかしなければ」


シャテンとアリアは、スヴァルツの憂いを無くす為に動き出す。


各々の思惑など知らない二人は、お互いの温もりに溺れていた。

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