パキラ
ぐっすり寝ていた。
ユニアはうーんと伸びをする。
ここがどこかはわからない。
「ここを白銀の植物園と呼ぼう」
昨日ここに辿りついた時にひとりごちたのを思い出した。
辺り一面、白かった。地面は硬く石みたいだった。
だけどそこには一本の植物が生えていた。
高く伸びた緑の幹に大きな葉が生え丸い影を落としている。
ユニアの身長の数十倍だろうか。
その植物の木漏れ日の下で眠っていた。
リュックを枕にしてピッケルはすぐに手が届く所に。
時折遠くから知らない音楽が流れてくる。白い空の向こうから。ユニアは音楽も風も同じと結論していた。どちらも遠くから来て見に見えない。
ユニアはお腹が減っていた。だけど食料はもうない。水筒に少しの水とカチカチのクッキーだけだった。
ユニアにとっては特に危機的という訳ではない。
探せば食料は見つかる。
その心配よりはと、ユニアは立ち上がりそばに佇む植物を見上げた。明るい緑の葉と幹の植物は瑞々しく透き通り、水に潜って輝く水面を見た時の様だった。
よしと、ユニアは手を伸ばし枝を握ると右足を蹴り上げ、スムーズに枝に登った。枝は軽くしなっただけで軽々ユニアを乗せていた。次々とユニアは歩むように登った。植物の白い産毛を掴み、枝を足がかりにする。
段々と茂みの向こうに見える風景が広がる。
まだまだ中腹だ。頂上では知らない世界が見えるはずだ。
ユニアはいつも何かを登攀する時には胸が高鳴る。
登る事が何よりも好きだった。高い所に登り見た事ない世界が見える。それが何よりの楽しみだった。
だんだんと幹は細くなり頂上に近づいていく。
ユニアは若い芽を踏まない様に、かつ落下しない様に慎重に登る。もう頂は見えている。
最後の足がかりの枝に足をかけ、頂上の1番高い葉に上がった。頂上の幹は細くなり、ユニアは細くなった幹を握り葉に座った。
ふぁーっとため息が出る。高くて素敵な光景だった。
見渡しても白い世界はまだまだ続いている。所々植物が生えてるだけで、何もなくても素敵だった。
ユニアはずっと一人でこの世界を旅していた。
寂しいという感情さえなく、風景だけと少しの植物だけがユニアの友達だった。疲労感も痛みも楽しみも心の中を彩ってくれていた。何かが足りないなんてなかった。
でもユニアはずっと孤独だった。
遠くを見ていたユニアの視界に何かが見えた。
ずっと向こうに三角形の影が小さく見える。
それがユニアには何なのか分からなかった。
ただ正体不明の影は白い平面の世界の終わりを示しているのだとユニアは思った。




