俺のスキル『 』は最強です!!よくわからないけど、どんな相手でも負ける気がしません!
「よくきたな」
目が覚めると少年は目の前の老人にそう言われた。「え?」と言いながら辺りを見回す。黒い背景でポツンと老人がいるだけだ。
「えっと?」
「お前は死んだ。これから異世界に行ってもらう」
「は?異世界?ってあの?」
そういうのは好きでよく読んでいるのでよくわかっている...のだが、突然そんな事を言われても困るのだ。少し困惑しながら心を落ち着かせる。少年は死んだ。その瞬間は覚えている。よくありがちなトラックに...という奴だ。
「じゃあ、何かのチート能力とか?」
「ああ、お前にふさわしいものを用意してあるぞ。チート能力をな」
「それって!!」
「『 』だ」
「えっ?」
それは口パクで何を言っているかわからなかった。きっと冗談か何かで言っているのだろうと思ってもう一度聞いてみる。だが結果は同じだった。口パクで何を言っているかがわからない。名前があるのか無いのかもわからない。少年から見たらただの口パクなのか?
「お前はこれからこれで戦って行くのだ」
「待ってください!全くわからないんですが!
「何がじゃ?」
「えっと...」
どう説明していいかわからず口籠る。なんて言えばいいんだ...?そう思っていると老人は笑顔でこう話かけてくる。
「大丈夫だ。そのうちその力を使いこなせるだろう。さあ、行って来い」
そう言い手をあげると少年の体はフワーっと浮かんで舞い上がって行く。まだよく分かっていないのに、「待ってください!」と言うが待つ事なく視界がが真っ白になった。
「ここが...異世界ってやつか?」
目の前には草原が広がっていた。周りにはウサギの魔物とスライムの魔物がウヨウヨとしている。少年は手をみる。少年に本当にチート能力とやらが備わっているのだろうか...?
「グオオオオオオオ!!!」
その鳴き声と共に大きな熊が少年に襲いかかってくる。少年より数倍は大きく鋭い爪と茶色い毛むくじゃらの体。襲われたらたまったものではないだろう。
「こうなったら一か八かだ!!ウオオオオオオオオ!!!」
どうせ襲われるならもうやけだ。少年に本当に力があるというならこの熊ごときなら一撃で倒す事だって容易いだろう。
ドン!という音と共に熊の腹に拳が入る。そして大きく熊は吹き飛ばされた。
「これこれが...『 』?すごいな。名前はわからんけど」
そう言いながら自分の拳をみる。何を言っているのか全くわからなかったが、とりあえずチート能力とやらはある事を確認する。
「すごい!よくわからないと思っていたけどこれはすごい!!」
何だかこれによって自信がついてきた。少年は最強なのだという自信だ。
「よーし、どんどん行くぞ!!!」
そういいながら近くの街を目指すことにした。行き着いた街は人ががいっぱいいて賑わっていた。
「おおー!!」
賑わっている道を進みながら歩いていると向こうからやってきた大男にぶつかった。少年は「すみません」と言ったが、向こうの大男は激昂していた。
「おい!どこ見てんだ!!」
「すみません!!」
「すみませんで済む問題じゃねーだだろうが!慰謝料だよ慰謝料!」
「ええ...」
いきなり面倒なやつに絡まれた。「慰謝料を払えないってなら...」と続けた大男が襲いかかってくる。こうなったら...少年は拳を勢いよく大男にぶつける。少年は『 』という名前がよくわからないがチートなスキルがあれば大丈夫だとたかを括っていた。
「ふっ、甘いな」
そう言いながら大男はあんま効いていないようで少年に蹴りを加える。ぐっ...と言いながら少年は立ち上がる。
「どうした?」
「俺は強い...チート能力を持って...俺は強い....チート能力で....!」
「何だ?1人でブツブツ言って」
「うわアアアアアアアアアア!!!!
少年は勢いよく襲いかかって行った。
「あれなんなの?」
その女性は少年にチート能力を与えた老人にそう尋ねた。だがその老人は「ん?」というだけだった。
「ん?じゃ無いわよ。あのチートスキルのこと!」
「ああ『 』か??」
「そう。そんな存在しないものを言って何も与えないなんて!!」
「でも見てみろ。かなり自分は強いとおもっているようだぞ。そのおかげでかなり面白いことになっている」
画面には少年が大男を倒す姿が映し出されている。
「プラシーボ効果というんじゃったか?なかなかそういうので強くなったと勘違いして本当に強くなるというのは面白いでは無いか...」