表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

手紙

ゆっくりしている暇はないらしく、私の誤解が解けたことに安堵したパーシーは、すぐに帰って行った。


私も家に帰り、コンテストで気負っていた分も含めてどっと疲れが出た。

そしてエノーラのことを思った。


エノーラに暴言を吐いたのは、パーシーに嫌われるためだ。そしてパーシーの気持ちがエノーラに向けばいいと思ったからだ。

なのに結果は全く違った。


パーシーは私に幻滅せず、それどころか「嫉妬しちゃって可愛いな」なんてことを言って、嬉しそうに私を見る始末。


これじゃ心を鬼にしてエノーラに暴言を吐いた意味がない。

単にエノーラを傷つけただけだ。


親しくなった覚えはない、身のほどを弁えろなんて、なんて酷いことを言ってしまったんだろう。

走り去ったエノーラをパーシーが追いかけて、抱きしめてくれれば良かったのに。


ううん、パーシーのせいにしても仕方ない。

悪いのは私だ。故意にエノーラを傷つけた。


翌日、居ても立っても居られなくなった私は、領主様のお城へ出向いた。

エノーラとスザンナに謝りたかったからだ。

しかし2人はすでに旅立った後だった。

時すでに遅し。がっくりしていると、


「おいお前、ちょっと来い。話がある」


顔を見せたのはマークス様だった。

顎で示された方へ付いていくと、部屋へ通された。


何だろう、何だか怒っていらっしゃるようだが、いつも怒っているような顔をしているから、通常通りといえば通常通りだ。


「滞在していた娘――付き添いの方の娘から、大方の話は聞いた」


「エノーラからですか? その話と言うのは……」


「お前昨日のあの後、見合い相手とあの娘との仲を疑って、ひどく怒ったそうだな。城に戻ったら娘が泣いている姿を偶然見かけてな、話を聞いたんだ」


そう来たか。そう言えばそうだった。マークス様は無愛想で冷たくて感じが悪いくせに、実は面倒見の良い、世話焼きたがり屋さんであることは承知している。


「お前に誤解されたままでは辛いと言うので、仲裁してやると言ったんだが、合わせる顔がないと言って帰っちまった。手紙を預かっているから、読め」


ずいと押し付けられた手紙をその場で開いて読んだ。

エノーラが一生懸命にしたためた文字を目で追ううちに、とめどなく後悔が押し寄せた。

エノーラ、本当にごめんなさい。

パーシーとくっつけるためにとはいえ、心無い言葉をぶつけるべきじゃなかった。


「……帰って返事を書くなり、燃やして灰を捨てるなり、お前の好きなようにしろ。何でもやっちまった後では変わらないが、今後どうしたいかは真剣に考えろ。後悔を重ねるなよ。言ってる意味は分かるな? 昔とは違うお前なんだから」


手紙から顔を上げて、マークス様を見た。

いつか見たときのような、乱暴だが熱意のある目をなさっている。


いつだったか見覚えのある。生徒に毛嫌いされていたが、誰よりも生徒思いだった生徒指導の教師の目を彷彿とさせた。


「はい……先生」

「は?」

「あっいえ、マークス様は人生の先輩ですから、まるで先生……師匠のようだなと」


「つまらん世辞はいい。じゃあな、話はそれだけだ」


途端にクールに戻ったマークス様に、素っ気なく返された。

ああやっぱり難しい。


決して悪い人ではないというのは最近よく分かってきたが、だからと言って付き合いやすいかと言えばそうでもない。


その後フィリスへのフォローは大丈夫だったのか等とこちらも余計な事が気になったが、気安く聞ける雰囲気は勿論ない。


マークス様との付き合いづらさを噛みしめつつ、エノーラからの手紙を握りしめて帰宅した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ