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協力者

駄目だ、お父様では話にならない。まったく取り合ってくれない。

悔しさをバネに、私はその足で領主様のお城へ向かった。


このリズノール地方を治めているのは、リズノール伯モーリス・バーソロミュー・ウェストブルック様だ。爵位は伯爵。国王陛下より拝領し、この地方一帯を治めている領主様。

そのウェストブルック家の補佐をしているのが、我が家や男爵家など位の低い貴族だ。


モーリス様やウェストブルック家の方々に会いたいと言っていきなり押しかけても、近衛兵に追い返されるのが関の山だが、所定の窓口を通して謁見申請を出せば、それなりの対応してもらえると聞く。


「えっ、1年半先……」

「最短でそれだね。謁見時間は5分。ああそれと、ご子息様の誰のファンかは知らんが、指名はできないからね。物を渡すのも禁止、話の要点はまとめるように」


ぶっきらぼうな窓口のおじさんの口調から察した。

私のような、ある程度裕福そうに見える若い娘がソワソワして謁見申請に来る場合、単に領主様のご令息方のファンだということが多いのだろう。


モーリス様には3人のご令息がいらっしゃる。ご長男には奥様がいらっしゃるが、後のお二人はまだ独身だ。何とかして見初められたいと願う娘は多いが、結婚というものは家同士の決めごとだ。万一個人的に気に入られたとしても、なれるのは愛人だろう。


「分かりました。けどもっと早くなりませんか? 急ぎの用件なんです」


「無理だね。順番待ちなんだよ。分かる?順番だよ順番。早くしろってことは、割り込ませろってことだよ? それならそれなりに頼み方ってもんがねぇ」


「ええ。何卒ご配慮願いますわ」


耳飾りを外し、おじさんの手のひらに握らせた。お父様のくれた金貨も一緒にだ。

お父様の名前を出せば、こんなことをしなくても優先的に取り次いでくれるだろうが、お父様には内緒で事を進めたい。


お父様を飛び越して、領主様へ苺の増産計画をプレゼンしたいだなんて、我ながら大それた真似を。お父様に知られれば、出過ぎた真似をするなと大変お怒りになるだろう。


でもねお父様、これはお父様の――我が家のためですのよ?

この先お父様が怪しい儲け話に乗って、大損をして、それを埋めるために借金をして首が回らなくなって、可愛い一人娘を売り飛ばすことのないように……。


ああそうだ、これで苺の増産計画は1歩踏み出せたとして、そっちの方も何とかしなくては。

むしろそっちのほうが急を要するのに。

美味しい苺をもっとたくさん作るという思い付きに興奮してしまった。


それよりも『怪しい儲け話』、これが問題なのよね。お父様が契約を交わす前に、お金を渡してしまう前に、おじゃんにしなくては。

お父様にはあれだけ言っても聞く耳を持ってくれなかったし……。お父様に話を持ち込んだ人も、同じように誰かから話を持ちかけられて、騙されている可能性も高い。


ああいう系統の詐欺は、最初のうちは約束通りの高額な報酬を払い、成功体験植えつけるそうだから、信じ込みやすいと聞く。何度か簡単に美味しい思いをしてしまうと、今後も同様だと思ってしまうらしい。


そして信じ切っている人の熱意で説得されると、少しくらいならと思ってしまうのだろう。

うーん、冷静に考えると眉唾物って分かるはずなんだけどなー。うーん。そうだ、こういうときはもっと冷静な、第三者に話を聞いてもらおう。


冷静で口の堅い、私の幼馴染みであり親戚。4歳年上のスティーヴン・コンラッド・ウェストンは、警ら隊に所属している。前世で言うところの、『お巡りさん』だ。

町の平和を守るため、定期的にパトロールし、どこかで騒ぎが起これば駆けつける、という仕事をしている。


職業柄色々なことに通じているが、口が堅く秘密主義、正義感が強く生真面目だ。

それゆえワガママ令嬢の私は嫌われている自覚があるが、そう客観視できる今となっては、とても頼れる相手のような気がする。




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