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転生していました!

前世で通り魔に刺されて死亡。近くにいた子どもをかばって、という点が神様に評価されたのか、愛読していた小説の世界へ転生することができました。


そう気付いたのはつい先日。高熱を出してうなされ、前世の記憶が蘇ったのだ。


なんてこと!

いま私がいるのは、あの世界か。

このタイミングで思い出したのは、幸か不幸か。

誰しも、自分が不幸になる未来なんて知りたくないものね。


そう、私――クレア・プリシラ・デイヴィー子爵令嬢は、この先不幸になることが決定している。


私は物語のヒロインではなく、悪役。

ヒロインは、エノーラ・アガサ・ウィットフォード。服飾デザイナーで、仕事を通じて事業家のパーシヴァル・クラレンス・ワイズと出会う。


惹かれ合う2人の恋には障害があった。パーシヴァルは既婚者だったのだ。

その妻が私、クレア・プリシラ・デイヴィー子爵令嬢だ。

パーシヴァルとクレアは政略結婚。夫は妻の実家の婿養子となり、爵位を得るのが目的、妻の実家は援助金目当て。


デイヴィー子爵家にあるのは家柄と名誉ばかりで、内実はすっからかんだったのだ。


甘やかされて育ったクレアも中身すっからかんのワガママ令嬢で、お家のために政略結婚をしたものの、夫と上手くいかない。


そして夫、パーシヴァルの気持ちが他の女に向いていることに気付き、ありとあらゆる嫌がらせをヒロインに仕向けるのだ。


倫ならぬ恋に苦悩するヒロインとヒーローの純愛が、読者をもどかしくさせる名作だ。

そしてオチを言っちゃうと、なんだかんだの末、クレアの嫌がらせが度を越してしまい自滅、実家もろとも粛清されるエンドなのだ。そしてヒロイン、ヒーローは晴れて結ばれて、めでたしめでたし。


――って全然めでたくないですから!


当の私にしてみれば最悪のバッドエンド。何とかして回避しなくては!


パーシヴァルとの縁談はまだ持ちかけられていない。パーシーとはまだ出会う前だ。

初対面の印象を良くするべく、高慢な態度を取らないよう気を付けよう。パーシーに気に入られるよう、可愛らしく媚びて媚びて――……いや、違うな。それじゃ根本的な解決にはならない。

パーシーには運命のお相手――この物語のヒロイン、エノーラがいるのだから。


そもそも、政略結婚で他人の財力にすがらなければならないという状況が、すでに詰んでいる。


実家ああぁ、実家よ!

首がガチガチに回らなくなるまで、借金を増し増しにした実家よ。いよいよどうしようもなくなって『爵位と娘を売り渡す』ことにしたのだものね。


うちにお金が無くなったことが、すべての不幸の始まりだ。

愛だの恋だのよりも、まずはお金!

お金を何とかしなくては。そもそも何で我が家はそんなに貧乏になったのよ?


前世の記憶を手繰り寄せ、首をひねった。

う~ん、ヒロインとヒーローの焦れったい恋の進展に熱中していた分、悪役令嬢の実家のことなんてさらっと流し読み、あまり覚えていない。


確か、人から持ちかけられた新しい商売に手を出して、それが大失敗するんだっけ?

そうだ、それが決定的なトドメとなって家計が破綻したんだわ。


思い出したからには即行動よ、クレア!




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