ハイクさんの秘密
「サンダルの 鼻緒は翠 五月晴れ」
「おはようございます 赤点さん」そこには、緑のワンピースを着て白のハイヒール、ポニーテールに黄色のカチューシャ、青のピアス。なんか、レトロ?なハイクさんがいた。
これなら着物の方がいや、せっかく彼女なりに頑張ってくれたんだ。
今日は演劇の次の日ということで学校は休み。俺はハイクさんをデートに誘った。下手に考えさせて、あれは冗談とか言われないようにする為だ。
予想通り、OKを貰うことができた。とりあえず、ネットで今日やってるイベントを調べてそれを楽しんで貰うというのがいつもの俺の作戦だ。
限定のスイーツがある店も欠かせない。不味くても限定であれば味は関係無い。舌の肥えているハイクさんならなおさらだ。
「今日は何処へ行くんですか?」ハイクさんが嬉しそうに聞く。
「運がいいよ 今日公開の映画で試写会があるらしくて女優のカナがくるんだって」カナは中堅級の女優だ。正直、人ゴミに溺れることはない。そして、ハイクさんも名前位は聞いたことがあるだろう。
「あっ面白そうですね 映画館なんて久しぶりですし」ハイクさんは笑ってくれた。
映画館は予想より空いていた。まぁハイクさんと楽しめるからいいか。
映画の内容はOLドタバタ劇といった処だろうか。一通り笑わせて貰い舞台挨拶でカナがでてきた。どんな顔してるかなハイクさん?おっ嬉しそうだ。
カナが登場した。
「あっキモノちゃん!」カナの第一声
視線はハイクさんに向けられていた。
「あっカナさん、よろしいですか?」司会の女性が促す。
「すいません 懐かしい友達がいたもので」赤くなるカナ
「皆さん、どうだった?でしょうか?」心配そうに訊ねるカナ
「面白かった!」一人の子供の声が響き、会場が笑いに包まれる。
「ありがとう!お姉ちゃん、怖くない?」心配そうに子供に訊ねるカナ
「怖くない」と答える子供
「カナさん自身は会社で暴れ回ったりするんですか?」と見所の話へ繋げる司会者
気のせいかもしれないがカナが時々こっちを見ているような気がする。よくあることかと思ったが手を振ってきた。振り返した方がいいと思い手を挙げようとすると、ハイクさんがあかんべーをしていた。
カナのこと嫌いだったのかな。5点
そんなことを思っていると、関係者らしき人がインタビュー中、ハイクさんに何か話しかけてきた。
「俺がやれって言ったんです」必死で庇った。
関係者は不思議そうな顔をした。
「違うの赤点さん、カナが会いたいんだって」
「えっハイクさんに?」
「そっ私達、幼馴染みなの」
昔の仕事上、芸能人は何回も見ている。でも見ているだけなのだ。俺みたいな下っぱが話しかけていい人達ではなかった。
それと芸能人と雑用、雑用上と雑用下には見えない壁がある。
「俺、ケーキ買ってくるよ」ここは俺が引こう。
「赤点さんも一緒に来て下さい!カナに紹介したいんです」じっと見つめてきた。
「わかったよ」
楽屋
カナと話すハイクさんはとても楽しそうだった。俺はここへ来て良かったと思った。
「そちらは?」カナが俺の方を見た。
「彼氏です!」ハイクさんは頬を赤くしながら右手を寄せた。
「よろしくです」俺も照れてしまった。
ケーキは限定のではなくカナの差し入れのケーキを食べた。悔しいが旨かった。映画は5回も見た。3回目位から飽きてしまった。でも楽しいデートだった。彼女が嬉しそうだったから。
別れ際、目をつむる彼女がいた。
だよなと思い、近づけた時、思い出してしまった。
昨日のイケメガネの目を。あの目。
「どうしました?」心配そうに聞くハイクさん
「ごめん」俺はバカだ。