赤点
「なんか、もうどうでもよくなっちゃいましたね」ハイクさんが言った。
「そこも、俳句で」つっこむ力も出ない俺
「あの二人を使うなんて反則ですよ 勝てるわけないじゃないですか」
「あいつはそういう奴だよ。決められたルールの中で最高のショーを見せる まっナマアシさんにまで手を伸ばしているとは予想外だったけどね これで彼らの勝利は確実だろうね」イッキューが残念そうに言った。
「まっ、でも一番じゃないってだけだよ 僕達は僕達のショーを楽しもう」
手を叩くイッキュー。
ここは、現実だ。今からどんなに練習しても彼らを超えることはできない。実力差は雲泥の。
「泥だ」俺は呟いた。
「泥だよイッキュー!あいつらが雲の演技見せるなら、こっちは泥の演技見せればいいじゃねぇか。お前、言ったよな。俺を17点にできるんだろ。削いでくれよ。17点によ!」俺は役者を目指している。役者に平均点はいらない。あの人がテレビのインタビューで言っていた。
「やっぱり君を誘って良かったよ。でも17点なんて君には勿体無い。よろしく赤点!」
「雪の下 熱き芽隠し 白昼夢」
「私も削いで下さい。無くなるまで!」ハイクさんが力強く叫んだ。
「勿論!でも、あだ名は似合ってるから変えないよ」イッキューは笑って言った。
リサイクルショップ
テレビの修理に没頭する俺。どうやら画面に水滴のような模様が映りこんでしまうらしい。カバーから液晶部分を剥がし乾いたアルコールで撫でる。三回目。よし上手くいった。あっそういえば今日は火曜日だ。
「火星物語」
ここは火星。これは、レアメタル、マーズルドの炭鉱員の物語である。
マリー「あっユウさんに頂いたお米美味しかったです。出身AKITAなんですね」
ユウ「あぁ、冬は大変だぞ」
マリー「でも、今色々便利になってません。車とかも熱タイヤが主流ですよ」
ユウ「エンジンかけるまで熱はないからね。駐車場に停めて置くともうどれかわからない。間違えて他の車の雪落とししちゃってそれを持ち主らしき人に見つかったことがあるんだよね」
「あぁいう時、なんて言うのが正解なんだろうね?」
次の日
授業が終わり稽古場に向かうとハイクさんが携帯で何かを真剣に見ていた。
「何見てるの?」俺は訪ねた。
「ビューチューブだ」後ろからイッキューの声
「まずはこれ読んで」イッキューは新しい脚本を渡してくれた。
「これって」俺は驚いた。でもこれなら。俺も携帯を取り出し動画を見ることにした。
この役でどれだけ泥になれるか。勝負はそれにかかっている。
そして、その日はやってきた。