ショウタイム
あれから一週間が過ぎた。
一匹狼で頑張っても良かったがイッキュー、ハイクさんと授業で話すようになり俺達三人は、とりあえずの目標。代表演目を創ることに専念していた。演目は1人5分以内のショートストーリー。人数が増えれば時間も増えるというモノで俺達は3人なので15分使える。脚本と演出はイッキュー。役者は俺とハイクさんで練習に励んでいた。
「脱出ゲーム チルチルミチル」
迷宮に金塊を盗みに入ったチルチルとミチルは迷子になっているウサギに出会う。ウサギ助け金塊を手に入れ脱出しようとするが迷宮から出られるのは二人だけ、ウサギを置き去りに出来ないミチル。どうするチルチル!
イッキューらしい脚本だった。パペットの指導は一応授業でもやったので以外に旨く嵌まった。
「さすがイッキュー、面白そうな話だね。荷物君やハイクちゃんも中々様になってるね」
久々に聞いたこのムカつく声。
「停学開けたんだショウ」イッキューが言った。
入学式に同級生の娘アカリと組んで問題を起こした男。そして俺が一番気にくわない奴だ。
それにしても荷物君って俺のことか。俺は腹が立ったがシカトすることにした。
「僕の友達に荷物君はやめてくれ!」イッキューの口調は本気だった。
「起こるなよイッキュー。悪かったねチルチル君」笑いながらかえすショウ。
今度はチルチルか、役名だからツッコミづらい。
「お前はやっぱりアカリちゃんでなんかやるのか?」
少しでも違ってほしいと思って質問してみた。
「もちろん!俺達ただ学校休んでたわけじゃないからね」かなり自信があるようだった。
どうやら俺の友達計画にアカリは灯らなかったらしい。おっ30点位な気がする。
「少なくとも今の君たちよりはすごいモノ見せるよ」俺達をいや、イッキューを挑発する目だった。
確かにアカリちゃんを使えば、それなりの絵は完成する。だがそれだけにハードルも上がるのも事実だ。
「楽しみしてるよ」イッキューは答えた。
「ちょっと、一休みしてくる」そう言うとイッキューは何処かへ行ってしまった。
「神城に 霰いろはな 水落ちて」
「私達、これでいいんでしょうか?」心配そうに空を見るハイクさん。
俺は何も言えなかった。
時間が過ぎていく。
イッキューもハイクさんも心ここにあらずだ。
何かピンとこない。
「このスペース使ってるがぁ」
この訛り。
「いや、特に使ってないよ」イッキューが答えた。
「んじゃ、かりんで」
ナマアシは鏡の前に立ちダンスの練習を始めた。
おい、これって。絵が浮かんだ。
ナマアシのダンスに俺達は芝居を合わせた。
「うん」イッキューは大きく頷いた。
「あの、ナマアシさん 」
ハイクさんが声をかけようとした時だった。
「あっいた!」あいつの声
「何処いってんだよ アカリも待ってるぜ」
「だであいつが邪魔で言うたがら」
「俺がなんとかしたからお前達が競わないと最高が生まれないの」ショウは自信に充ちていた。
「あだしだけでも最高だ」怒るナマアシ。
「じぁしょうがない。主役はアカリだな」
「嫌だ。あん娘だけは嫌だ」
「じぁ戻るぞナマアシ」ナマアシの背中を押すショウ
「邪魔したね まっそういうことだから君たちじゃ勝てないよ せいぜい頑張って」
俺達は立ち尽くすしかなかった。