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お前なんか絶対に有名にならねぇわ  作者: ミヤコ トカイ
2/11

54点

 俺は「演出」のクラスへ向かった。現場を知っていたので、ある程度なら理解出来そうだったからだ。


 予想通り、コワモテの先生だった。

 初日とあって今日は「アングル」の授業だった。一人の生徒をカメラでいろんな角度から見る。人の感情は「アングル」でも変えることができる。

「とりあえずはこんな感じでやっていく。それと俺の授業の最後では代表者に喧嘩をしてもらう」

ざわつく教室。

「へーでら面白そう」一人の女生徒が立ち上がった。めちゃめちゃスタイルがいいが訛りが気になった。ナマアシ。

「じゃあ相手はお前だ」コワモテ教師は俺を指差した。

「えっ、ちょっと」引き出しを全開にする。

「テーマは別れたい女と別れたくない男」

「時間は10分」

「よーい、アクション!」

えーい、ままよ!



「もう、あんた支えんのマジで疲れたんだよ!」軽蔑の目で見るナマアシ。

俺、ヒモ役かよ。俺の知ってるヒモは決してイケメンではない。それに俺のキャラを配合。イメージはこんな感じか。

「何でだよ、この前のネタだって一回戦通ったじゃん!」これで舞台は整った。あとは言葉のセンス。

「あんネタ考えたの相方だろ!そんでも真面目に審査して54点!」

リアル。俺ならこいつと別れたいでもしがみ付かなければ。

「あれは、俺がアンケート調査員に似てたから生まれたネタなんだよ。だからこれをコンテンツに  、」


「はい、カット!」

「じゃ今日はここまでです」コワモテ教師は言った。

 続きがしたい。こんなので終わらせたくなかった。



 ここは学食がないので何台かのキッチンカーがやってくる。いろいろ迷ったが今日は「野菜炒め弁当」にすることにした。

「やっぱり54点だなぁ」

その訛り!予想通りナマアシ。

ナマアシがロコモコ丼をもって近付いてきた。


「なんで野菜炒め?あんなにすべって。あんたって裏切らない54点だなぁ」

「俺はカメラ見ると緑を見たくなるんだよ。それとなんだ54点って平均点採れりゃいいだろ」俺は54点というのがどうも気に入らなかった。低いと思って気に入らないのではない。俺は役者を目指している。役者に平均点は必要ないからだ。

「お前は、ロコモコ丼って、せっかくの人種なのに逆に平均点じゃねぇか」皮肉を込めて言ってやった。

「ロコモコ食べて何が悪い!ハイカラだろ!すげぇだろ!」ドレスを着て顎をあげる女王が見えた。

ここだ!常にアンテナは張っておくものだ。


「俺は!野菜ジュースも買ってるぞ!」さっきの演技は取り返した。俺は満足してしまった。


「あなたの演技は独りよがりだ」彼女は微笑んで言った。その言葉は訛りが消えていた。

「えっ」やられた。彼女はバイリンガルだったのだ。

ロコモコ丼が点数を上げていた。最初から負けていた。


「じゃあね、54点」



 両手で長方形を作って俺を覗いている奴がいた。

髪はボウズ、眉毛も剃っていてなかった。しかし、いかついというよりは童顔で幼い感じがした。

俺はこいつを睨み付けた。

「あわてないで下さい 私はあなたを撮りたいだけです」純粋な懇願

「俺を?撮りたい?」

お前、さっきの口論見てただろ。それに俺は、自他共に認める54点だぞ。

「僕は映画監督を目指しています。僕の求める映画のテーマは「削ぐ」です。あなたが54点なのはツッコミだからです。僕ならあなたを17点にまですることが出来ます」

俺は馬鹿にされているのか?不思議に思ったが俺は17点になりたかった。とんちにやられた。また、負けたのか。

「よろしくな、イッキュウ」

「あっはい!」



 午後の過程は、イッキュウの進めで「ダンス」にすることにした。しかしどうもついてない。そこにいたのは、ナマアシだったからだ。この学校の「ダンス」の授業は変わっていた。あるテーマを出題され、それを表現するというモノだ。今日のテーマは「人間」だった。音に合わせ皆がそれぞれの「人間」を表現していた。特にダンス経験者などの動きは面白かった。俺の番になり、いいと思った動きをとりあえずパクった。そして、ナマアシの番になった。そこで俺はナマアシの思う「人間」を知った。



 俺は、リサイクルショップで電子機器の修理のバイトをしている。ハンダ付けが主な仕事だが、有線放送が聞ける場所なのでカラオケ好きな俺には一石二鳥だ。それと、火曜日に流れるラジオドラマも俺のお気に入りだ。


「火星物語」

 ここは火星。これは、レアメタルマーズルドの炭鉱員の物語である。

ユウ「えっ、お前、元アイドルだったの?」

マリー「アイドルといっても地方のですけど、人気出なかったので2年でなくなりました。」

ユウ「なんかその頃の話聞かせてよ」

マリー「水着でパチンコを打つ仕事がお金が良かったです。只でパチンコ打てて儲かればギャラにプラスされたので」

ユウ「へー、どういう時に自分の落ち目って解んだよ」

マリー「仕事以外のパーティーが減るんですよ 黒い噂とかって若いウチは逆にないんです。パーティーにいっても何もしなくてもお金が貰えるんです 何かを要求された時が私たちの落ち目だと思います」

「聞きたいです。グラビアのゴールって何ですか?」



 午前2時 俺の部屋

今日も俺は珈琲を淹れる。

「よっ54点」遼さん登場

腹が立ったが微笑んでみせた。

「どうしようー俺、恋しちゃったよ」

「まさか、ナマアシにですか?」予想よ当たるな。

「他に誰がいんだよ あんなダンス見せられて好きになんねぇ奴なんていねえよ お前狙うなよ」

「狙いませんよ むしろ俺は嫌いです」俺は嘘をついた。

「そうだな54点だもんな」珈琲を飲みほす。

今度、塩入れてみよう。

「それはそうと、明日、先生が来るらしい 先生の授業を受けろ 解ったな?」遼さんの目が光る

「解りました」


消える遼さん。眠る俺。

































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