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よろしくお願いします。
昼飯は外で食べることにした。場所は伯爵の城から近い所で警備の人に馬車で送ってもらった。行き先が分からないと後で呼びに来れないからな。食事が終わった頃を目途に迎えに来てくれるらしい。ぶらり街歩きはできないけど、侯爵の件もあるので贅沢は言うまい。送迎してくれるだけありがたい話だ。
そうそう暁の砂嵐も呼んでやったぞ。
暁の砂嵐のメンバーは伯爵家のお客として迎えられ今回は街に宿をとっていない。一件ラッキーとも思えるその状況は暁のメンバーからすると苦痛以外の何物でもなく、四六時中緊張を強いられるという半ば罰ゲームの状態となっていた。まだ1日だけというのに頬がこけたんじゃないのかと思うほどだ。で、昼飯に連れ出したわけだ。伯爵の相手はじいさんに丸投げした。
「で、少し窮屈に感じていると。部屋にいれば大丈夫じゃないのか?」
「まぁ、そうなんですけど。場慣れしてないんですよ」
「そうか、慣れるしかないだろう? もっと名の知れた冒険者になればそれこそこういう機会は出てくるだろ?」
「そうですね、そう思う事にします」
「ところでダンの方はどうだ? 装備の方は問題ないのか? オークとの戦闘を見る限りは問題なさそうに見えたが?」
「はいヒロシ様、お陰様で動きが随分取りやすくなりました。両方の手で防御と攻撃が出来るというのは有り難い所です。某は素早い動きも必要ではありませんので、盾役としても十分機能できると思ってます」
「そりゃ良かったよ。じゃぁ、次はロビンだな」
「アニキ!お、オレにも何かあるのかい?」
「ルナにも関係のある事なんだが」
「私にも?」
「お前らのパーティーはバランスが取れているとは思うんだ。だが決定的に足りてないものがある。コビー、なんだと思う?」
「マジメな話ですよね...えーと...攻撃力ですかね?」
「そうだ、流石コビーだ。実質攻撃しているのはコビーと魔法のロビン。ダンは盾役で主に防御特化。じゃぁルナは?状況を見ながら回復魔法を掛けているとはいえ、攻撃には参加していない」
「そうですね」
「オーク二体を相手に完封したのは大したもんだが、それ以上を目指すとなると、もっと効率よく相手にダメージを入れるようにならないとダメだ。じゃぁ、どうするか?」
「ルナとロビンの攻撃力アップですか?」
「そうだ。ルナの場合は回復だから四六時中回復魔法を使う必要はない。だから弓などの武器を使えば良いと思う」
「でも、私の力じゃ攻撃力のある弓は引けないわ」
「それはいま、俺の商会で考えているモノがある。試作品が出来たら試してみないか?」
「別にいいけど?」
「良かった。サティにも話したら良いかもって言ってたよ」
「お、お姉さまがそう言ってるなら間違いなくやるわよ。他の子に言うんじゃないわよ?」
「はいはい、わかったよ。で、ロビンだが。お前にも新しい武器を薦めたいと思ってるんだ。どうだ、使ってみる気はないか?」
「間違いなく使わせて頂きます。」
「はやいな、おい。内容は聞かないのか?」
「聞きたいけど聞きません。アニキの言う事なら間違いないっすよ。待ちます!」
「まぁ、確かにルナと同じで作ってる最中だからな。じゃ、楽しみにしておくがいいさ。最後にコビーだが、お前には何もない。聞いたところでは、シンディと一緒にお前もクロから色々教えてもらっているそうだな?だからお前はまずクロから色々と教えてもらった方が良い。その上で必要ならクロと相談するよ」
「分かりました、ありがとうございます!」
「シンディも同じだ」
「分かりました」
そんな話をしていると、エミリアさんが俺たちを呼びに来た。
「クロードさん、侯爵様が到着なされました。会談はもう少し後からになりかと思いますが一度城の方へお戻り下さい」
「わかりました、わざわざありがとうございます。」
「とうとう来ちゃったよ」
「来ましたね」
「ドキドキする」
「まぁ...頑張って下さいね」
「完全に他人事だよね?」
そうして城の部屋へと戻り、俺たちは紅茶を楽しんでいる。じいさんとも侯爵が来る件について話したが心当たりはないという。時間的に侯爵との面談は夕食を通して行われる事になるようだ。レイヴン卿は軍部を取り仕切っている人であるが規律一辺倒ではなく広い視野を持つ人格者と言う話だ。そこに俺は賭けたい。いきなり説教とか無礼討ちとかやめて欲しい。
「準備が整いました、皆さま食堂の方へお越し下さい」
「ああ、すまんなエミリアさん。じゃぁ行くかの」
流石にこの席に同席できるのは四名、男爵、セバスさん、オレ、クロだ。他の皆は別の場所で食事が用意されているらしい。コビー達はこっちの気も知らないで本当に嬉しそうだった。
食堂に入ると既に伯爵と侯爵様は席に着いて談笑している。
「おお、ゾイド男爵。待っていたぞ、それにヒロシ殿もな。さあこっちに来られよ」
アルバレス伯爵は機嫌よく俺たちを迎えてくれた。着席する前に侯爵へ挨拶を済ませる。もちろんじいさんの後だぞ。
「初めまして、レイヴン侯爵様、私はロングフォードから来たヒロシと申します。よろしくお願い致します」
「うむ、そなたがヒロシか。まあ座られよ」
「はっ、それでは失礼致します」
最初は雑談だった。でもその雑談も気を使うんだよ。変なこと言っちゃいけないとかはもちろん、言葉遣いも然り。
そんな話をうまく流しながら食事を進めていた。すると突然と言うかようやくと言うか侯爵が本題へと口火を切った。
「で、ヒロシよ。聞きたいのだが、ニホンとはどこにあるんだね?」
来やがったか!しかもそっち系か!!今まで問題になってなかったから正直忘れてたぞ。
どうする?これは転生した中で最大のピンチだ。考えろ、ワインを飲むふりをして考えるんだ。ちょっと飲み込むのに時間が掛かっているふりをしろ。
冗談ではなく、回答を間違えたら良くないだろう。
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