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よろしくお願いします。

「ゾイド男爵様、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、この度の報告もありますのでこのまま伯爵家へ同行願う形でもよろしいでしょうか?」


 今、俺たちはローランドの街を見下ろしながら最後の休憩をとっている。ここからはあと二時間程度らしい。見たところのどかな田園風景が広がる美しい街だ。真ん中に大きな城みたいなものがある。


 エミリアさんはじいさんにそうお願いしているが、昨日すでに打合せ済みの事だ。形式上改めて頭を下げてお願いをしているのだ。当然、じいさんもその辺りは弁えている。


「うむ、このまま行くとしよう。ただ、向こうに着いたら着替えだけはさせてもらえんかな」


「もちろんです。護衛は先に走りましたので街には問題なく入れますのでこのまま城へと参りましょう」


「伯爵家って城なんですか?」


「伯爵家以上はもう規模からして屋敷、いや城と言っても良いだろう。アルガスを治める中枢じゃからの。城内には全てのアルガスの機関部がそれぞれ入っておる。ギルドや警備、衛兵、商店やパスの管理、様々じゃ。ただ機関は入っておるが、その者達は住んでいる訳ではない。毎日伯爵家へ働きに来ておるのじゃよ」


「なるほど、それは大きくなるはずだ」


 つまりお役所の大元ってことだな。イメージとしては都道府県庁に相当するってところだろうか?


「国王様や公爵、侯爵家は本当に城だ。一族の関係者だけが住んでおる」


「そうかぁ。ふーん」


 俺は目の前に映る景色を見ながら曖昧に答えた。



-------------------------------



「エミリア様!ご無事で何よりです!これより警備の者が城までご案内させて頂きます!また、ゾイド・ロングフォード男爵閣下並びに従者の方々も我々に着いて来て下さい」


 エミリアさんたちは用意された新しい馬車に乗り換える。デルモントさんも一緒に行くようだ。当然だが説明義務がある。


 俺たちは通りを抜け眼前に見えるアルバレス伯爵家へと入った。伯爵との面会は着替えをしたらすぐに行われるとの事で俺たちは慌ただしく着替えを済ませる。


 慌てたのは暁の砂嵐である。このようなことを予期していない本来なら入城せずに城外で待つつもりでいたのだが伯爵家の三女を救った功績から伯爵との面談の場に一緒に出るように通達があったのだ。今着ている戦闘服はかなり汚れていて流石にこのまま伯爵の前に出るのは憚られる。


 男爵とは別部屋に通され暁の砂嵐は途方に暮れていた。護衛達は男爵が外食する際に外の警備をするので街中用の警護服がある。言わば警護に当たる際の正装なのでこれで問題ない。問題は暁の砂嵐であった。


「ヤバいぜコビー、オレTシャツと短パンしかない」


「お前は海水浴にでも来たのか?」


「某は一応服はあるが、正装とは言えぬ」


「私はブラウスとスカートね...ちょっと伯爵様の前に出るのはダメな気がするわ。コビーはどうなのよ?」


「実は俺もズボンとシャツしかない。シンディは?」


「私はヒロシ様が街を歩く際にお供をするようサティさんから言われてましたましたので、一応持ってきております」


「流石、商会のお付きになろうかとする冒険者だけあるな」


「フフン、流石お姉さまね!」


「なぜお前が得意げなのか分からんが...要するにだ。今回来たものの中で人前に出られる服を持ってきていないのは某達だけ。暁の砂嵐だけと言う事だ」


「これはあれだぜ、コビーの責任だな」


「なんだとぅ!」


「うむ、お前がこういう事態を想定していれば避けられた案件だな」


「ちょっと思慮が浅いとしか言いようがないわね」


「それでリーダー面してるとか何考えてんだよ?」


「あの、ちょっちょっと皆さん...」


「ぬぐぐぐぐ、お前ら言わせておけば好き勝手ぬかしやがって! なんだ? 俺が全部決めないとダメッてか? おやつの上限も俺が決めるのか? 俺が死ねって言ったら死ぬのかよ?」


「話の内容が幼稚すぎてついていけないわ」


「なんだよおやつって?」


「死ねと言われて死ぬわけが無かろう」


「あの...私がヒロシ様に聞いてきますから...ねっ? ちょっと待っててくださいね?」


 とシンディが部屋に飛び込んできたので、俺はいまコビーの部屋に来ている。コビーは壁に向かって膝を抱えている。なんかブツブツ言ってるぞ。


「で、服がないからどうしようもないと、、、仕方ねぇなお前らは。まぁ、確かに今回は予期してなかったしな。シンディは別としても正装服入れる位なら食物を入れるわな普通」


「あの、、、ヒロシ様。暁の皆さん何とかなりませんか?」


「ならんな! お前たちは男爵家の顔に泥を塗ったのだ! その責任はコビーにある! 死をもって償え!」


「ええええ!」


シンディ絶句である。


「ちょ、ちょっと待ってくれアニキ、それは違うぜ。コビーだけの責任じゃねぇんだ。想定できなかったのは皆も同じなんだ」


「ヒロシ様、コビーだけでなくサポート役の某にも責任はございます」


「私もお姉さまにもっと話を聞いておくべきだったわ。コビーだけと言うのは違うの!」


「うむ。と言うのは当然冗談だ。そんなもん伯爵家に借りたら良いだろう?コビー、ちょっと廊下に出て誰か捕まえてこい」


「は、はい!」


「ちょ、ちょっと、アンタ!冗談にしてはキツイわよ!」


「はは、ルナ、まぁそう怒るな。お前らにとっちゃ普通のやり取りでもシンディはビックリしたんだぞ? ちょっとした意趣返しさ」


「あっ...ごめんねシンディ」


「そういう事さ。着替えが終わったらじいさんの部屋に集合だ」


 俺はそう言うとじいさんの所へと戻るのだった。コーヒーをまさに飲もうとした所を呼び出されたんで意地悪したとは言わなかった。




お読み頂きありがとうございます。

皆さん、コロナには十分に気をつけてくださいね。

手洗いうがいに加えて、あと目を洗うのも良い予防法だそうです。

引き続きよろしくお願いします。

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