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よろしくお願いします。

 馬車に戻ると商会の会長と思しき人物が男爵と話をしている。


「そうなんです、それでロングフォードからローランドまで戻る途中だったんです」


「男爵様、向こうは落ち着いた。あと、ちょっとそこの商人さんに聞きたいことがあるんだが」


「ん?ヒイイイ!」


 部外者が居る時は俺も男爵様と言うようにしている。こういうのはケジメが大事だ。


「おお、そうか。こちらはローランドの商人でデルモントさんだ。ん?どうしたデルモント?」


「デルモントさん、少し聞きたいんだけどここに居る人間で誰か重要人物と言うか階級の高い人間が入ってないかい?」


「あ、あ、あの、ゾイド男爵様、こちらの方は?」


「彼はワシの賓客での。ヒロシと言う。Nameless商会の社長だ」


「ええ、こちらがあのNamelessの?」


「ああ、すまない、仮面を外してなかった。よいしょと。初めまして。Namelessのヒロシと言います。よろしくお願いしますね」


「そうだったのか、ビックリした。私はてっきり盗賊か何かと...」


「すみません。ちょっと説明している時間がなかったもので...で、先ほどの話なんですか」


「ヒロシよ、それは先ほど聞いておる。あそこに居られるのが伯爵家の3女である、ローラ・ローランド様じゃ」


「そうですか。また後で挨拶をさせてもらいましょうか」


 ローラと言われた子供は他の侍女達に囲まれている。確かにショックは大きだろうな。


「ローラ様に代わり、私の方からお礼を申し上げます。この度はご助力ありがとうございます。危ない所でしたが本当に助かりました。突然の事で何が何やら分からず、ローラ様も怯えてしまって」


「いえ、これもゾイド男爵のご命令でございますので。私は命令に従ったまででございます。あと、驚かしてしまったようで申し訳ありませんでした」


「緊急時ですので仕方のない事です。それよりゾイド様、彼は本当に商人なのですか?冒険者ではなく?」


「はい、本当に商人ですよ。この度ローラ様が行かれたNameless、そこの会長ですよ。この商会では会長の事を社長と言っておりますがな」


「Namelessにお越し頂いたのですね。それは誠にありがとうございます。お気に召したものはありましたでしょうか?」


「なかったの」


 そこで途中からこちらへと来ていたローラが初めて口を開いた。怖くて泣いていたのだろうか、目の周りにはまだ涙の跡が残っている。


「ローラはアロマって言うのが欲しかったけどなかったの」


 ローラは10歳位だろうか?シェリーと同じくらいの年に見える。もう気持ちを切り替えているようで安心した。馬車にいたお陰でオークや人の死ぬところを目の当たりにしてないのが幸いしたか。ただ馬車も攻撃された訳だから相当怖かっただろう。


「そうですか、それは残念でした。でもご安心下さい。私たちはこれから伯爵家に行くところでして、そのお土産としてアロマもいくつか持ってきております」


「ホントに?」


「ホントでございますよ」


「やったー!聞いたエミリア?アロマあるんだって!」


「それは大変よろしゅうございました。ヒロシさんありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ喜んで頂いて嬉しいです」


「で、先ほどの魔物ですが、どういった経緯で襲われたんですか?」


「経緯も何も突然前から飛び出してきた感じだったみたいで...」


「それじゃった。ヒロシよ、何か気になる事があるのか?」


「ええ、実はオークとゴブリンの首にコレが巻かれてましてね、、、これと似たものを一度ロングフォードのレストランで見たことがあるんですが」


「隷属の首輪...ではなくこれは従属の首輪じゃな。なんと...」


「な、なんですって!?」


「隷属と従属の違いとは?」


「隷属は奴隷に落とされたものが嵌められるものじゃ。だが自我は残っておる。例えばレストランで働いている者は自分の意思で生活することが出来る。従属の場合は魔獣などに使う事が多い。これを嵌められた者は主人の命令に背くことが出来ぬ。またその強制力の強さから人間、獣人その他に使用する事は禁止されておる」


「と言う事は、伯爵家の娘を意図的に誰かが狙った可能性があるって事かも知れませんね。または男爵家を狙ったか?俺としては...」


「言い難い事ですが、恐らく伯爵家のご令嬢を狙ったものと考えるのが妥当でしょう」


「セバス、どういう事じゃ?」


「いえ、単純にこれだけの魔物を森に潜ませておくのです。いつ来るのか分からない男爵家を待つのは難しいでしょう。ローラ様一行は日程がはっきりしておりますので、待ち伏せすることも比較的容易です。街から近い所を選んでいるところも理由の一つですね。恐らく従属の首輪を取り付けて命令を下したものは男爵家を見てすぐに逃げたのではないでしょうか?」


「ふむ」


「男爵家が狙われた可能性として我々が街を出る前に一足先に知らせに走った輩が居るかもしれませんが、ロングフォードの人間で我々の武を知らない者はいないと言っていいでしょう。私と護衛達、さらにはクロード、暁の砂嵐、そしてヒロシ様。これだけ揃っている所に準備したのはオークとゴブリンとは...正直意味がありませんな」


「俺もセバスさんとほぼ同意見だな」


「逆に商会の馬車を襲うだけならオークは過剰です。十分に目的を達成することが出来るでしょう。以上の事から狙いとしてはこちらのデルモント商会か、または伯爵家ゆかりの者か」


「うむ、よく分かった。しかし、嫌な感じじゃのう。いずれにせよ直ぐに出発した方が良いだろう。念のため、ヒロシとクロードはローラ様と同じ馬車に乗っておいてくれんか。大丈夫かとは思うが万が一の時は頼む」


「ああ、了解だ」


 そして俺たちはアルバレスへ向けて出発した。


 ローラ様は眠っている。


「たまにロングフォードへは来るのですか?」


 間を持て余した俺はエミリアさんに聞いてみた。


「いえ、ほとんど行く事はありません。行くなら王都の方が多いですね。王都へは半日で行けますから。今回はアロマの噂を聞いたローラ様がどうしてもという事で。そんな折、懇意にしているデルモント商会の彼がロングフォードへ行くと言うので道案内の意味も含めて同行させてもらったのです」


「そうだったんですか。折角来て頂いたのに売り切れてたようで申し訳なかったですね。でもそれなら商会の誰かに声を掛けてもらえば良かったのに」


「そうしようかと思ったのですが、ローラ様が突然来て品物を渡せとは言えないと仰られて」


「へぇ、まだ小さいのにしっかりしてますね」


「普段は普通の子供と変わらないんですよ? ただ小さいながらでも権力の持つ意味をしっかり考えているようですね」


「素晴らしい事です。クロードもそう思うだろう?」


 と会話を振ったら舟を漕いでいてた。何でお前が寝てるんだよ...まぁ良いけどさ。



 そして俺たちはローランドに到着した。




お読み頂きありがとうございます。

ご面倒でなければ下部より評価を頂ければ嬉しいです。

引き続きよろしくお願いします。

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