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よろしくお願いします。
今、私は息を切らして走ってきたアンジーと話をしている。
「でね...ゴショゴショ」
「ええ!...それは...ポショポショ」
「今夜にでも幹部会を...コショコショ」
「そうね、それは必要ね...ボソボソ」
彼女はビッグニュースを持ち込んできた。明後日の夜、私たちは歴史の目撃者となるのか。
「それじゃアンジー連絡は任せておいて。その話だともうすぐこっちに来るわね?」
「ええ、間違いないと思うわ。隊長を含め幹部に連絡を飛ばして。私は直ぐにここを離れるわ!」
「分かったわ。あ、サティさんが来たわよ」
「ホントだ、じゃぁ私はこれで。今日の夜いつもの店でね」
「分かったわ。緊急幹部会を行うことは決定よ」
アンジーは走って出て行った。まぁ、彼と鉢合わせするのもまずいだろうしね。
「コロナちょっと良いかしら?」
「ええ、大丈夫ですよ。どうされました?」
「前にケビンに言われてたでしょ?早くやれって。あれどうなってるのかしら」
などと、現状の依頼の達成度やら何やらを話していると一人の男がやって来た。
ヒロシ様である。
「すぐに会えて丁度よかった、サティ。あのさ明後日の夜だけど、しょ、食事に行かないか?」
「夜になんて珍しいわね、どうしたのよ?いいわよ。皆にも声かけとくわね」
「いや、なんと言うか、えーと、たまには二人で食べるのも良いかなと思ってさ」
「え!二人で?」
「あ、ああ。どうかな?」
「べべべ、別に構わないわよ。ふ、二人なのね?全く問題ないわよ。ないったらないわよ」
「そうか、いつもサティにはお世話になってるしな。はは。えーと、それじゃ明後日の午後七時に海辺のレストラン、『海風色の貝がら』で良いかな?」
「え、ええ、良いわよ。お魚のお美味しい店よね」
「そ、そうなんだよね。じゃぁ、待ってるから」
そう言うと、ヒロシは急ぎ足でギルドから出て行った。
「サティさん、明後日の夜はヒロシさんとお食事ですか?」
「ま、まぁそうね」
「デートですね?」
「何言ってるの? 別にご飯を食べるだけよ」
「でも、二人でですよね?」
「何人でも一緒よ」
「ふーん」
違う。
全く意識してないように振舞っているが、そのしっぽは大きく揺れている。
「あ、ケビンさんのお願いについてどうしましょうか?」
「後回しで良いわよ」
ケビンさんのお願いは一瞬で後回しにされ、サティさんはハミングと共に去って行った。
私も忙しくなる。
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「明後日の夜は外食です」
リビングで俺は皆と話をしている。
「ヒロシ様、どちらへ?」
「明後日はサティと外食です」
「おと兄は家でご飯食べないの?」
「おと兄は外でご飯食べるの?」
もう俺の名前が一文字も入ってないではないか。しかし...俺は子供たちの頭をなでながら何を思うのか。
「そうなのね?」
「ソニアさん、ええ、そういう事です。俺は...」
「おめでとう。気にすることはないのよ。これもアザベル様のお導き。きっと上手くいくわ」
「ソニアさん...」
「ヒロシ様、明後日の手配はこのクロードにお任せ下さい」
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もうここまでくれば誰でもわかるだろう。
つまりそういう事だ。
お読み頂きありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。