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今日はこれで終わりです。
「ケビン、これはどういう事じゃ?」
「いやぁ、こんなケースは初めてだなぁ。読めねぇ文字がある。水晶がおかしいってことは無いと思うんだが。って、この小僧、国籍がここリンクルアデルになってんぞ? 知らないどころかリンクルアデルの国民じゃねぇか!」
俺は横からカードを覗き込んだ。ヤダ、なにこれ?
「いや、ホントに知らないんですってば。いや、その、あれぇ?」
一体どうなってんだよ......突っ込みどころ満載で理解が追い付かん。落ち着いて順番に見ていこう。若くなってると思ったら年齢が25歳になってんぞ。出身はニホンか。地図に載ってないけどいいのかな? 創造神の加護ってなんだ?
あとは、家内安全に無病息災とか......ふざけてんのか? 技能って所に言語理解があるな。字や言葉が分かるのはこれのおかげか。ありがとうご都合主義。何はともあれ、創造神様には感謝しなくちゃな。と、パスをじーっと見ていると隣でゾイドとケビンが話していることが聞こえた。
「一、当たる......老いて寿......嬉しいのか? 何のことかさっぱり分からんぞ?」
「あぁ、字が読めない所もそうだが、閲覧不可ってなんでだ? あと、読めないけどそこに字があるってことだとすると、この加護の部分、こいつ何かの加護持ちだろ」
「うむ、その考えであってるように思うの。サティはドルスカーナで見たことはないか?」
「いえ、ドルスカーナでもこのような字は使っておりませんね。しかもこの称号の欄ですがこれが気になります。何かの卵ですね。何の卵なんでしょうか?」
「色々とおかしな内容になっておるの......どうしたものか。小僧、お前この字が読めるか?」
と突然ふられて俺は固まった。そうだ、前述の通り俺にはこの字は全部読めてる。サティさんの出身地の言葉でもないという。そりゃ当然だろう。
彼らの読めてない場所だがこれは全て日本語で書かれている。彼らにとっては文章の中で色んな字体が混在している状態だ。初めて見る字体なら水晶がおかしいと感じるだろうな。正直俺でも読みづらい。
で、俺はどうこたえるかだが......
「いえ、よく分かりません。バグってんですかね?」
「バグ?」
「ええ、文字化けと言いますか、字体が上手く書かれていない状態の事です。私の国でも良くありました。ソフトが違うとメールの字が全く読めないとかありましたからね」
「小僧の言ってるソフトだのメールだのはよく分からんが、その文字化けって状態やもしれんな」
「ケビンよ、出身地がニホンだと何か問題があるのか?」
「まぁ、どうだろうな。地図に載ってない国だからな。まぁ、聞いたことがない国で済む話かもしれんが、問題が発生する可能性はゼロではない。だが方法がないこともない」
「つまりどういう事じゃ?」
「これを話すのはゾイド、お前が連れてきた人間だからだ。もう一つは加護持ちは確定だろう。最後に犯罪歴。これがないってことも大きい。それを踏まえて言うと、お前が保護する形とするなら上への説明としても問題ないだろう。後ろ盾としてはお前は最高だからな」
「まぁ、ワシならあるいはの?」
「本来パスはどの国でも読めるはずなんだ。出身についてはニホンという国でゾイドの言う通り聞いたことのない国だ。でもこれは大丈夫だとは思う。魂歴があるって言ってんだからな。そこは国王様でもひっくり返すことはできない。おまけに国籍がリンクルアデルになっている」
「ふむ」
「じゃぁ、文字化けは? 可能性としては全て加護にあるのではないかと思う。加護については見ろ、文字化けではなく明らかに閲覧不可と明確に書いてある。これは加護を与えた神が意図的に内容を伏せているのだと思う。誰の加護かは分からんがな」
「うむ、ワシもそう思う」
いえ、どうもそれ俺のスキルで文字化けにしてるみたいなんです。とはとても言えなかった。でも半分は当たりなのかもな。創造神の加護とか簡単に見せちゃダメな気がする。でも、神様って本当にいるんデスネ。
「あと、能力についてだがよく分からん。文字化けしているようだが、俺の知っている能力が一つもない。もしかしてこっちは本当にダメなのかもしれんな。技能も≪≫だらけでよく分からん」
「小僧は少し特殊なのかもしれんな、まぁ良いわい。保護しても良いし何なら後見人でも良いぞ」
「どうしたんだゾイド? えらく積極的じゃないか?」
「別におかしい事ではない。働く場所と寝床を提供するだけじゃ。あとは知らん。幸いその両方ともワシなら提供できるからの」
あ、そうか、宿屋と食堂だもんな。
「はいはい。そういう事にしておこうか、今の所はな?」
その後もゾイドさん、ケビンさんとサティさんと話をしたのだが、クラスとレベルは冒険者になると表示されるようになるらしい。また、通行時にチェックされる場所はパスの上から名前、年齢、国籍、種族、犯罪歴が表示され出生地やら能力云々は表示されないそうだ。
そこはプライバシー的な保護と関係しているらしい。意外としっかりしてるな。冒険者になるとその5つ以外にクラスとレベルが表示されるという事だ。
犯罪歴も色々あるようだけど重犯罪者については処罰が済んでいても他国へ行くことはできないらしい。出国はもちろんできないし、他国も受け入れしないみたいだな。もちろん悪いやつはどこにでもいるから完全に制御できているかと言うと疑問だ。
ちなみにパスは他人が使用することはできない。悪用するとその時点でアウトだ。不正使用には厳罰があるようなので素直に警備か衛兵に渡すことが望ましい。
警備と衛兵の違いは、警備が街を巡回してたりして街の中の安全を見張る人たち。衛兵は街の出入り口や特権階級、この街で言うと男爵家や士爵家の警備が主な仕事だ。
逮捕権については警備、衛兵どちらも行うことが出来る。どちらも国家公務員だが、直接の給与は領主から出る。ちょっと複雑だ。
ちなみに階級制度によるものか無礼討ちもあるようなので注意が必要だ。いつの時代だよ? その際にはいかなる理由があろうとも特権階級は守られるという暗黙の了解があるようだ。
特権階級って怖いよな。
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