表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/362

70

よろしくお願いします。

 その時助け船を出したのはシンディだった。


「さぁ、聞き間違えじゃないでしょうか?さ、そろそろお弁当ですよ。シェリー様もシャロンも行きましょうか」


「「うん」」


 シンディはこちらに軽く会釈して歩いて行った。どこかの駄狼より彼女はよっぽど空気を読める女性であった。


「いや、聞き間違えじゃないでしょ。ねぇ?ヒロシ様、絶対にロイ様は...痛ててて...ちょっ耳を引っ張らないで下さい」


「クロードくんよ、ちょっと君にはじっくり教えてあげないといけないようだね」


「な、何をでしょうか?」


「難聴系と鈍感系主人公がもたらす周りへの影響度についてだよ」


「別に私は難聴でも鈍感でも、、、痛ててて」


 俺は懇々とクロに言って聞かせるのであった。



------------------------------------------



「おお、ヒロシ、クロードまっておったぞ。さぁ昼飯にしよう。いつもはテーブルを並べて食べるんだが、こうやって地面に座るというのもなかなか良いもんじゃの」


 じいさんはうっすら赤い顔で手招きしている。飲んでるな。俺も飲もう。飲みたい。


「いや、ヒロシよ。いまカールとアンジーとも話しておったが、元気に頑張っておるらしいの」


 じいさんは向こうでレザリア様(じいさんの奥さん)と話している2人を見ながら言った。


「えぇ、頑張ってくれてますよ。彼らの製作する品々は大変人気を集めてましてね。各契約先の商店だけではなく、最近は商会ギルドからも取引の打診が来ています」


「仕事は本当に楽しい、ヒロシに恩返ししたいとずっと言っておったわい。給料もスラム時代では夢にも思わなかった額を貰えているとな。シンディも喜んでもらえて幸せだと」


「それなら良かった。若いから色々あると思うけど、レイナが上手くやってくれているようなんだ」


「彼女もまた張り切っておるようじゃの。ソニアから聞いたぞ。しかし、あれじゃ、ヒロシよ。ロイヤリティはそんなに男爵家に入れる必要はないぞ?お前の稼いだ金じゃ。好きに使わんかい」


「好きに使うのなら、ロイヤリティもそのうちの一つさ。前にも言ったけど俺はじいさんには本当に感謝しているんだ。お金以外でも何か返せればいいんだが思いつかなくて...悪いんだけど」


「そうか、そんなに気にする必要はないんじゃがの。まぁいい。それで話は変わるんじゃが、今度一緒に領主の所へ行ってくれんか。最近のお前の活躍が耳に届いているようでな。一度連れてこいと使者が伝えに来た」


「領主様か。そういえば近いって聞いてたけど行ったことが無いな。俺なんかが行って良いのかな?」


「領主様は地位で言えば伯爵様だ。粗相がないようにな。それだけだ」


「で、今度とはいつ頃になるんだろう?」


「準備もあるだろうから、3か月後じゃな。伯爵との会合に参席するのはワシ、ヒロシ、セバス、クロード。基本4名じゃ。伯爵家まで同行する護衛に関してはこちらで勝手に決めてよい。まぁ男爵家から出すからヒロシがどうこうする必要はないぞ」


「そうか、ありがとう。じゃぁ、クロード、レイナと相談してその辺りの計画の調整を頼む」


「畏まりました」


 その時ケビンさんが話しかけてきた。居たのかこの人。とか言ったら怒られちゃうな。ケビンさんとサティが抜けてギルドは回るのか。コロナも大変だな。まぁ、そういう意味ではうちではレイナが犠牲になっていると言っていい。いつもありがとうレイナ。


「お前も知ってると思うけどウチのギルドに所属しているアッガスとガイアスってのが居るんだがな。おまえと手合わせしたいって聞かねぇんだよ。2人は別々のパーティなんだけどな。いつもお前がいないとか、向こうが依頼中だったりとかでタイミングが合わなくてな。向こうもお前の返事がキツイもんだからなぁ、なんと言うか燃え上がってんだよ」


「返事?知りませんけど?」


「あれ?何で知らないんだよ?毎回断ってんだろ?」


「いえ、断るも何も初耳ですけど?」


「おかしいな?おーい、サティ、ちょっとこっち来てくれ」


 サティがこっちに来た。ルナもくっついてきてるぞ。


「なによ」


「いや、あのアッガスやガイアスの話なんだけど、お前ヒロシに言ってないの?」


「あの手合わせの話?言わないわよ」


「なに!なんで言わねぇんだ!」


「代わりに私が返事してあるから問題ないでしょう。あんなのを相手するほどヒロシは暇じゃないのよ」


 うーん、なんか厄介事の臭いしかしないんだが...一応聞いておくか...


「で、えーと、サティはその人たちにどう返事してるのかな?」


「お前ら如き相手にするまでもないとか寝言は寝て言え、とかだけど? なによ? 違うの?」


「ち、違います...」


「なんだ、おかしいと思ったぜ。サティ、お前ちゃんとヒロシに言わないとダメだろうが」


「なによ? ケビンも何度もヒロシと会ってるでしょう? それならその時にも言いなさいよ」


「いや、えー、ヒロシなんかスマン。と言う訳だからちょっと頼むわ」


「そこはもうちょっとがんばって下さいよ...まぁ良いですけど。いつですかね?」


「じゃ、3日後で頼むわ」


「了解、じゃ、昼食前に行きますね。誤解は解いておいて下さいよ、お願いですから」


「おお、ありがとう。任せとけ」


 まぁ、仕方ないか。

 実は会うのもちょっと楽しみだったりする。


「サティ、気を使ってくれてありがとう。でも次からは一応教えてくれよな」


 俺はサティの後ろ髪を撫でながら言った。


「ちょちょちょ、ま、まぁ、良いわよ。次から言うわよ」


 サティはうつむいてしまった。こういうところが可愛い。と思ったらそのサティの頭の後ろからルナが殺気立った目だけを覗かせている。


 お前、コエーわ!


 とかなんとか言いながら楽しいピクニックは終わりへと向かうのだった。因みにソニアさんはあれからしばらくぎこちなかったが通常モードへ無事に再起動したぞ。






いつもご覧頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ