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ここからちょっと新展開。
進み方は相変わらず緩やかですが、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
と言う訳でピクニックにやってきた。
馬車で揺られること30分。ここから歩いて丘の頂上まで行くとアルガスの街、ロングフォードが見渡すことが出来るそうだ。
魔獣が出ることもあるらしいがこの辺りはスライムかホーンラビット、あとはゴブリン。
だから子供たちだけで走り回るってのはちょっと危ない。
で、今日はこの方たちにも参加して頂いた。『暁の砂嵐』さんたちだ。
「アニキ!今日は誘って頂いてありがとうございます!いい天気で良かったですね!」
「お、おう」
「ロビン、今日は男爵家とヒロシ様ご一行の護衛だぞ。俺たちまで一緒にピクニックを満喫することはないんだぞ」
「分かってるよコビー。俺がアニキのお願いに手を抜くはずがねぇだろうがよ」
「コビー、ありがとよ。まぁ、基本子供たちに注意してもらえたらそれでいいさ。四六時中気を張る必要はない。俺たちもいるしね」
「流石アニキだぜ!話が分かる!」
「ロビン!」
そこにスッとダンが片膝をつきながら入ってきた。
「ヒロシ様、この度は男爵家護衛という大役を任せて頂き大変ありがとうございます。このダン、命を賭してこのピクニックを成功させる所存です」
「お、おう。命を賭してもらうのは嬉しいが、あまり気を張らないで良いからな。あとゾイド男爵にもちゃんと言っとけよ」
「はっ、男爵様ご夫妻ならびにソニア様には先ほどお目通りさせて頂き、既にご報告させて頂いております」
「そ、そうか。なら良いんだ」
堅苦しい。堅苦しいが男爵家に対しての礼儀としては間違っていない。何度も言うようだが、この世には無礼討ちがあるし階級とはそれほど重いものなのだ。正直、俺が男爵様をじいさんなんて呼んでいいはずは本来絶対にない。今更だけどな。
「お姉さまぁ。今日はお弁当作ってきたんです。良かったら後で一緒に食べませんか?」
「うふふ、ありがとう、ルナ。嬉しいわ。あとでヒロシたちと一緒に食べましょう」
「はい、楽しみにしてますぅ!」
と笑いながらルナがこちらへやって来た
「仕方がないからあなたと一緒に食べるけど、あまりベタベタしない事ね。私とお姉さまの時間を邪魔したら承知しないから」
「いや、別にベタベタはしないとおも『何?』」
ルナは器用に耳で俺のアゴをクイッと上げて横目で俺を睨みつける。
「いえ、気を付けます」
「あら、ルナ。ヒロシとお話かしら?」
「ふん、分かれば良、、あん、お姉さまぁ。今お昼ご飯を食べるお話をしてたんですぅ」
「そうなの?良い場所探しておいてね」
「もちろんですぅ」
ルナはサティの腕にしがみつきながら散歩に出かけていった。
場所見つけろや! いや、護衛はいいのか! 唖然としながら後姿を見送る俺の側にコビーがやってきた。
「すみませんヒロシ様、ルナは優秀なんですが、サティさんが絡むと途端にああなっちゃうんです。でも、男性相手に絡むのは珍しいんですが...」
女性には絡むのかよ。
「あぁ、コビーは知らないの、ゴホン、君は苦労しているようだな。ダンがいるからまだ大丈夫か」
「ダンはダンで少し固い所があるんですけど、本当にマジメで僕らのパーティでは常識人ですよ。いつも本当に助けてもらってます。ロビンはああですけどムードメーカーですしね。でもルナは普段は本当に優秀なんですよ?」
「はは、分かってるよ」
ダンがやってきた。
「コビー、巡回の時間だ。2人1組で半径200mで魔獣がいないか確認しよう。なに? ルナが散歩に行っただと? む、あれか、サティ殿と歩いているな。では向こうはサティ殿がいるから良いとして、我々はここから始めよう。ロビンは仕方ないから一人で巡回してくれ。もし強力な魔獣と遭遇し個別撃破が困難と判断した場合は空に向かってファイヤーを放て。いいな、よし。では、今からきっちり60秒後にミッションスタートだ」
おぉ、軍曹様だ。軍曹様がいるぞ。ここは危険地帯ではないはずだがまぁいいか。
「オッケー。ヒロシ様、と言う訳でちょっと失礼しますね。ロビン行くぞ!」
「おう、アニキ、俺の巡回しっかり見ていて下さいね」
「見てなくちゃいけないかね」
「ヒロシ様、無視して頂いて結構ですので」
「じゃぁ、俺も子供たちと散歩するかなぁ」
子供たちはシンディとクロが見てくれている。カールとアンジーはじいさんと何事か熱心に話しているぞ。
俺はソニアさんを誘って子供たちがいる方向へと歩き出した。草原の中で2人の獣人と子供たちが戯れている。
「あいつら夫婦見たいですねぇ」
「ヒロシ君もそう思った?お似合いよねぇ」
近づいてくる俺たちに気づいたのかクロとシンディがこっちに来た。
「シンディさん、ごめんなさいね。子供の面倒見てもらって」
「いえ、お気になさらず。シャロンも一緒に遊んで頂いて...お二人は本当に聡明なお子様たちですね。」
「ふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」
「いえいえ、お世辞など飛んでもございません。本当にそう思っております」
前にも言ったがシンディも痩せていた体も元に戻りすっかり元気になった。クロは執事服だが軽装とは言え狼獣人はこういう戦闘っぽい服似合うよな。そんなシンディの足元ではシャロンがじゃれついているぞ。
お、シェリーとロイも駆け寄ってきたぞ。
「おかーさーん!おとーさー、あっ!」
ん? いま俺を見て衝撃的な一言、言ったよね? 俺は難聴系でも鈍感系でもないと自負している。
「ちょちょちょロロロ、ロイッ!」
「おかーさん、、、僕ちょっと間違えちゃ...」
「あらあらあら、何を間違えたのかしらね?」
ソニアさん、何気にロイの口が手で塞がれてますよ。おっと、ロイがその手を振り払いにかかったぞ。
「ふがっ、おかーさんもヒロ兄がおとうさ、フガフガフガ」
「ちょーーーーと、おじいちゃんとおばあちゃんの所に行きましょうね。ヒロシ君失礼」
ソニアさんは顔を真っ赤にして走り去ってしまった。ロイは小脇に抱えられるような形だ。両手両足がダランと垂れているのが可愛らしい。
シェリーはじーっと俺を見ている。困ったぞ。どうする。ここはいつもの必殺技を出すしかないか。全てを流しきるんだ!
「シェリーはね、空気が読める女なの」
先を越された。更に凄い言葉が出てきたぞ。誰だ、こんな言葉を教えたヤツは! しかし言っておくぞシェリーちゃん。空気が読める女はそんな追求する目をしてはいけない。
そもそもサティにさえ何も言っとらんというのにどうしろと?
おい! そこで眉毛をハの字に曲げているお前、クロ!お前だよ! 何か言え! 言ってこの場を流すんだ! 分かってるな、分かってるよな?!
俺の射殺すような目を見てクロは頷き口を開いた。
「ん?今、おとーさんって言いかけましたよね?どういうことですかね?」
この駄狼がぁぁぁぁ!!!
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