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よろしくお願いします。
あっという間に半年が過ぎ去り毎日忙しい日々が続いているが、俺は合間を見てシェリーやロイそしてシャロンたちと遊んでいる。子供たちの体力は相変わらず無限に湧いてくるのでこっちも疲れてしまうぜ。シェリー達は回復魔法を使っている気がしてならない。
色々と悩んだそうだがシンディ達は他で家を借りることにした。幾らなんでもそこまで甘える訳にはいかないとの事だ。でもキッチリ自立した生活をしたいと言われた時は嬉しかったぞ。
カールやアンジーは別で住むのかと思ったが皆シンディについて行った。シンディが群れに入るまでは家族で過ごしたいと3人が申し出た。シンディは泣いてたな。こっちまで泣いちゃったよ。
学校が終わるとシャロンは商会で迎えに来るのを待っている。学校で待たせるって言ってたがそこまですることはないさ。シェリーとロイとも仲が良いし、一緒に帰ってこさせることにした。でも、シャロンは意外にもしっかり者で、迎えに来るまでは商会で皆のお手伝いをしているぞ。ちょっとしたマスコット的な存在になっている。シェリーとロイもお手伝いすると言ってたがそれはまぁあれだ。色々とダメだ。だから家の中でお手伝いをしてもらっている。
今度子供たちを連れてピクニックに行こうと言う話をしたら子供3人は大喜びだった。その時にはじいさんとかにも声を掛けてやろう。きっと楽しくなるぞ。サティやケビンも呼んでやるか。暁の砂嵐の連中も都合が付くなら来たらいいさ。
たまには皆でゆっくりと。この案をじいさんに話すと当然じいさんも大喜びで全部こっちに任せろと言ってきた。セバスさんも乗り気ですぐにメイド衆に指示を出していたな。
じゃぁ、任せよっかな。ありがとう。
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俺は今商業ギルドに来ている。商業ギルドの名称は≪アルガスの泉≫だ。
クロは今日冒険者ギルドへ行っている。シンディや暁の砂嵐と手合わせをするらしい。俺も暇があればたまに見に行ったりするが手合わせという模擬戦は中々白熱している。訓練にしても即役立つよう工夫されているものが多く素振りを何千回なんて事はしていない。あくまで実戦を想定した訓練のようだ。シンディは体力もついてきてメキメキ実力が上がりでサティの驚いていた。元々素養はあったのかも知れないな。暁の砂嵐も順調にレベルを上げてきているようでパーティーでのクラスはCクラス上位みたいだぞ。早くBになれると良いな。皆頑張っている。
話が逸れた。
商業ギルドにはちょくちょく来てはいる。内容は納品数量に関する話や新製品とか売り先とか。まぁ色々だ。でも一人で来るのも寂しいのでレイナを連れてきた。工場の出荷量も分かるし統括も板についてきたから大丈夫だろう。
少しするとギルド長のバーバラさんが来た。商業ギルドでもここ何年の売上貢献によりNameless の商談はギルド長と行うことが多い。
バーバラさんは人間の女性だ。恐らくだが年齢は30位ではないだろうか。いわゆる妙齢の淑女さんだな。色気もばっちりだ。
「ウフフ、ごめんなさい。お待たせしたわね」
「いえいえ、とんでもない。気にしないで下さい」
「あら、こちらの方は初めてね。ギルド長のバーバラよ。よろしくね」
「初めまして、Nameless工場統括のレイナです。よろしく」
「今回はねポーション系の取引量とアロマの取引量について相談したいのよ」
「ほう、毎月結構な量を納品していると思っておりますが?」
「それが、最近他の領地へも出荷することに決めたでしょう?所属の商会から我先にって注文が殺到しているのよ。ここロングフォードもそうだけど他の領地でも噂になってるみたいよ?」
「へー、そうなんですね。嬉しい限りですよ」
「後はあの装飾品ね。富裕層クラスでは金貨が飛び交ってるって聞いてるわ」
「本当ですか。お金ってあるところにはあるんですねぇ」
「そうなのよ。だから、納品量を倍にしてくれないかしら?」
「倍...ですか」
「社長、倍はちょっと無理ですよ。工場も今ほぼフル稼働ですからね」
「うーん、そうなんだよなぁ」
「ダメかしら? ねぇ?」
バーバラさんちょっと前のめりでムギュッとしてきたぞ。何をムギュッてしたかって? それはアレをさりげなく両腕でムギュッだよ。
くっ、ヤバイ。いつか言ったかもしれないが、俺はチラ見ができないんだ。ダメだ、目が離せねぇ。傍から見れば俺は女性のムギュッを凝視している男に見えるだろう。実際凝視しているしな。ダメだ、無理やり首を捻ってレイナを見ようとするが目だけが固定されたままだ。グオオオオオ、動け俺の目ェェェ!
「おねがい、いいでしょう?」
「ちょ、ちょっと、バーバラさん、よろしいですか?」
なんだ、レイナ。俺は断ろうとしてたんだぞ。ホントだぞ。
「レイナさんだったわね?どうかしたかしら?」
「工場のラインは今でもほぼフル稼働なんです。2倍の量を作るには時間が足りません」
「夜も流すとかしたら出来るでしょう」
「ウチは夜間作業は行ってないんです。色々と理由もありますが、それに人も直ぐに集まらないですし」
「人は奴隷でも集めたら良いじゃない。休みなく働かせれば良いのよ」
「そ、そんな事はできません」
「どうして?奴隷もお金が入るし、貴方の商会も儲かる。私も他の商人も儲かる。奴隷何て使い捨てでいいじゃない。誰も困らないわ」
「休みなしで作業員を働かせる事は工場を任されている立場として了解できません。更に夜間作業には作業員だけでなく、それを補佐したり管理する人間も必要です。工場の経費も上がります。それに奴隷であっても労働条件は公平性を保ち作成されたNamelessの規則に則って行います。そう言う無理を通す要求は止めて頂けませんか」
「ふふ、流石、社長の腹心の一人ね。よく教育されているわ。ごめんなさいレイナさん、ちょっとした冗談よ」
「どういう事でしょうか?」
「バーバラ、もう十分だろう?レイナ、彼女はお前が本当に信を得るだけの実力を持つ人間か、立場に相応しいのか試したのさ。あまり意地悪な事は言わないでやってくれよ」
「ごめんなさいね、若そうなのにあの大きな工場の統括っていうものだから」
「合格だろ?」
「ええ、そうね。大したこと無かったらギルドを辞めて彼女の代わりにNameless に入りたいとこだけど」
「ま、レイナ。そう睨むな。バーバラさんも意地が悪いって訳じゃない。悪気はないさ。で、肝心の数量だが20%なら増量できるだろう。期間は限定させてもらう。本当に倍増とは思ってないんだろ? レイナ、従業員に2時間残業しても問題ないか確認してくれ。当然残業に対する金銭的な手当てもつける」
「ふふ、そうね。20%増しで大丈夫よ」
「やっぱりな。人が悪いぜ。という事だ。レイナ確認を頼むよ。ただし、大丈夫とは思うがもし従業員が集まらなかったりした場合は別途増量数については相談だ。また忙しくなるから気合い入れていこう」
「はい、分かりました。ですが...」
「なんだ?気になる所は後でまた相談しようか」
「いえ、それは良いのですが、そういう事はバーバラさんの胸から目を離してから言ってくれませんか」
「ごめんなさい」
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