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あと1話投稿します。
「で、今日はなんの用だ? 珍しいじゃないか、お前が訪ねてくるなんて。久しぶりに後で一杯どうだ?」
対面に座ったギルド長ケビンは笑いながらじいさんに話しかけた。見たところ初老の男性だが、笑った顔にできる皴も彼の彫りの深い顔にはよく似合っている。ゾイドと同じく体格が良く顔にもいくつか切創の傷があるところを見ると腕っぷしには自信ありなのだろうなとそんなことを考えていた。
「突然訪ねて来て悪かったの。今日はこの小僧のことで頼みがあっての」
じいさんは簡単に経緯を説明した。俺は軽度の記憶障害という設定になっていた。良いけどね。
「ふむ、そうか。そら災難だったな。当然ここでも市民カード、パス? まぁどっちでもいい、の確認はできるから問題ねぇ。でも再発行に手数料やらカード料金が掛かるが、お兄さんは金持ってんのか?」
「その辺は気にせんでええ。多少はワシが立て替えておく」
「すみません......恩にきります」
「ゾイドにしちゃ珍しいな。見ず知らずの小僧にえらくご執心じゃねぇか。本来なら警備に引渡して保護してもらうんだがな」
「まぁ、最初はそういうつもりでもあったんじゃが、曾孫もなついておるしの。なかなか礼儀も弁えとるもんで気が変わったんじゃ。あとちょっと気になることもある」
「へぇ、お前さんラッキーだったな。なんたってゾイドは......睨むなよじいさん。わかってるよ。サティ、すまねぇが準備たのむわ」
サティさんは返事をすると自分の机の方へと向かった。サティさんのお尻にもシッポがあるぞ。狐のそれとよく似ている。綺麗な金髪の上には耳もある。
「なにか?」
おっと、ガン見しすぎた。
「いえ、すみません。なんでもありません」
「おい小僧、サティはおっかねぇぞ。美人だがな。はは、悪かった怒るなよサティ」
「いえ、すみません。その......何というか初めて見ましたので」
「ん? 美人をか?」
「いえ、まぁそれも否定しませんが、どういうかその、こういう方と言いますか...」
「あぁ、サティは狐獣人だ。お前さんは獣人族に偏見を持ってるクチかい?」
「いえ、全く。私の国には人間しかいなかったもので、本当に初めてで驚いただけです。個人的には偏見どころか完全肯定派です」
「お、おぅ。そうか、ならいいんだよ。しかし初めてとはねぇ。どっから出てきたんだ?」
「それが分からんから来たんじゃろうが」
「あぁ、それもそうだな。じゃ、始めるか。お兄さん、この水晶の上に手を乗せてくれ。これでお前さんの魂に刻まれている情報を読み取る事が出来る。ま、心配すんな。この世界の住人なら登録情報が出るはずだ。はっはっは!」
やべぇ、夢でもない限りほぼ確実に俺ってこの世界の人間じゃないんですけど。
どうする? 乗せたら最後だ、全部バレちまう。魂の情報がどのようなものかは分からないが、この世界の住人ではないことは出てしまうだろう。そうなったらどうなるか? 日本や他国でもこういうケースもあるな。
所謂役所に届けることが出来ない子供だ。良くない理由しか思いつかないが、公になった場合は国が保護する形になり、一定期間の諸手続きを踏まえた上で国籍がもらえるはずだ。だがこの世界、この国でそういう手続きがあるのか? かと言って手を置けない理由を話したところで同じか。もしかしたら病院直行の可能性もある。
ええい、ままよ! と思いながら俺は水晶の上に手を乗せた。それとほぼ同時に例の言葉が聞こえる。
”ソウルクリスタルより魂へのアクセスが開始されました。相原比呂士の魂はその特異性により秘匿事項特級に設定されており、一般からのアクセスは許可されておりません。”
”ソウルクリスタルへの接続確認の矛盾点を回避するため、能力『家内安全』よりステータス隠蔽のスキルを発動。現在の状況を鑑みて相原比呂士のステータスに対して最適な状態に偽装します。”
現在の状況を鑑みてくれるんだ......
これ、なんだろう頭の中に響いてるんだけど、皆には聞こえてないのか?時間にして10秒くらいだろうか薄水色の輝きを放っていた水晶はゆっくりと元に戻った。
「ギルド長、できました。がこれは...」
「ん? どうしたサティ、ちょっと見せてくれって......は?」
「どうしたんじゃ?(ですか?)」
「いや、小僧のステータスがちょっとおかしくてな、まぁこれだ」
とケビンはカードをテーブルの上に置いた。
内容はこうなっていた。
名前 : アイハラ ヒロシ
年齢 : 25
出身 : ニホン
国籍 : リンクルアデル
種族 : 人族
犯罪歴: なし
加護 : 閲覧不可
職業 : 無職
クラス: 未登録
レベル: 未登録
状態 : 健康
能力 : 家内?全
一?当?
???寿
???盛
??息?
技能 : ???解
魂歴??
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称号 : ??の卵
読んでくださってありがとうございます。