65
いつもご覧頂きありがとうございます。
今日も頑張ります!(`・ω・´)
男爵家での夕食は大いに盛り上がった。途中までシンディ達も緊張していたが上手く馴染んでくれた。
ギルド側は、シンディさんは既にほかの街へと移っていると思ってたらしい。体は動かず、子供たちもスラムで生活していたからな。ある意味仕方のないことかもしれない。
そしてシンディ達の仇がジャギルらしいって事も明らかになった。アイツらは本当に殺しておいてよかった。
その経緯についてはセバスさんが話してくれたんだが、セバスさんは本当に話し上手だ。内容について嘘をついている訳じゃないから聞いてる方も安心して聞けた。クロードはちょっと話が違うと言っていたがそんなことはないと思う。
そして、クロードを見つめる子供たちの目。まさに羨望の眼差しだ。シンディに至っては惚れたんじゃないのか?前から感じてはいたが間違いない気がする。
------------------------------
俺は今クロードと一緒にお店回りをしている。いわゆる買い付けだ。ここまで順調に皆卸してくれるようで有難い。次はこの装飾品店だ。
「こんにちはー」
「はい、何をお探しで?」
「店長さんですか?私はヒロシと言います。こっちはクロード。よろしく」
街中では、取引相手だろうと何だろうとそんなに意識した話し方は必要ない。上流階級に対してだけは所作は必要だが普段はざっくばらんと言うのがこの世界の常識だ。後は、それぞれの立場で思ったように話せばいいらしい。
「はい、Namelessのクロードと申します、よろしくお願いします」
「私はこのロードリング商会の会長、ガンダルフと言います、よろしく。名無しの店の噂はよく聞いてるよ。お会いできて光栄だ」
「はは、ありがとうございます。実はこの度私どもの店で取扱品目を増やす構想がありまして...」
クロードは説明していく。主な内容はこうだ。
1.材料となる商品の仕入れ。
2.ロードリング商会への販売。
3.Namelessブランドでの販売許可。
4.Nameless代理店としてのオーダーメイド取り扱い。
「なるほど。Nameless商会は男爵家御用達だからね。そのブランド品をこの商会でも売れるってことかい?価格はこちらで決めていいんだったら助かるよ。サンプルを見る限り絶対に売れると思うしね」
「こちらからの要望としてはNamelessで購入したものを売る際には決して安売りしないと言う事だけです」
「もちろんだ。泥を塗るような真似は絶対にしないよ。上流階級だけでなく富裕層でも人気が出るはずだ。早めに話を聞けて良かったよ。で、ウチの商品は何を卸せばいい?」
「無地の貴金属を中心にお願いします。数量に関してはウチの者を寄こしますので都度担当者同士でご相談して頂ければ。あと、ガンダルフさん側で加工して欲しいものがあればその際に渡して下さい」
「わかった、あと代理店ってのは何だい?」
「これは先の話にもつながる事で、ロードリング商会で気に入った商品を見つけた人が居たとします。これをNamelessで加工して、自分だけのオリジナルにしたい人に対して、口利きをすることが出来る契約です」
「ほう」
「基本、Namelessでは一般の持ち込みを受付ける気はありません。恐らく男爵家の口利きだけになるかと思います。そこでそういう人が居たならNamelessに紹介する形をとるわけです。当然口利き料をガンダルフさんが取っても構いません。その利率はお任せしますが安売りは致しません」
「なるほど」
「Namelessの商品が手に入るのは、こことウチだけとなります。Namelessでは完全オリジナルの物しか売りませんので高額になりますが、ロードリング商会でのオリジナル商品であれば追加工となり幾分安く購入することが出来ます。完全オリジナルより手が出やすい商品は皆が欲しがるとは思いませんか?いわばロードリング商会とNamelessのコラボ商品と言っても良い」
「間違いないですな!ゾクゾクしてきました!」
「ここでの注意事項は貴金属に属するコラボ品の価格の上限は金貨3枚、下限は金貨1枚であることです」
「そ、そんなに取って良いのですか?いや、このサンプルを見るに取れるか...」
「ポイントは安売りしない、です。この商品については誰もが気軽に手に入れることが出来ないようにします。上流階級や富裕層のみが手にすることが出来る一品。それはNamelessとロードリング商会のみでしか手に入らない。どうです?ガンダルフさんしかこのプレミア商品を売ることが出来ない。良いと思いませんか?因みにオリジナル品は最低金額が金貨6枚です。上限はありません」
「なんと...」
「双方の店の間でコラボ品金貨3枚以上、オリジナル品金貨6枚未満で販売しないのも一つの戦略です。分かりますよね?」
「ああ、コラボ品とオリジナルの明確な線引きとなる」
「その通りです。Namelessのオリジナルはかなりの高額ですが、高いとは言えその半額でロードリング商会で手に入れることが出来るとすれば、お客様もかなり流れてくると予想されます。もちろん、ガンダルフさんがこの話に乗れば...ですが」
「頼む、こちらからお願いする。是非このビックウェーブに乗らせてくれ!」
「ありがとうございます。あともう一度言いますが貴金属を取り扱う店は今の所貴店だけとなります。その重大さもお忘れなきようお願い致します」
「もちろんだ。男爵家とNamelessに泥を塗るような真似は絶対にしないと誓う!」
「分かりました、ではこちらが契約書となります」
「ありがとう! あなた達がこの店に最初に来てくれた事に感謝するよ!」
というような感じで、信じられないだろうが全ての店で即時契約に至ったのだった。俺たちの商会はこの街での販売網を増やし他の商店の利益にも繋がる商法と商流を始めた。
この方法によりNamelessはその名を一気にアルガス全域に広め、領を跨いでいく事になる。そしてその事が後の騒動に繋がるなどこの時は思いもしていなかった。
次回はまた閑話を挟みたいと思います。
引き続きよろしくお願いします。