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64 ~シンディ男爵家に立つ3~

何とか書きあがりました。

本日3話お付き合い頂きありがとうございます。

 シャロンは学校に行けることになった。本当にありがたい話だ。カールもアンジーも頑張ると言っている。私も早く体を治して頑張らないと。


 ヒロシ様は薬の調合を早速始めるという事で一旦この場は解散となった。かれは薬の調合もできるのか。アリスさんから聞くとこの商店の薬は全てヒロシ様が考えているらしい。


 商店の会長、本人は社長と言っていたが、何でもできる人っているんだなと改めて感心した。他の商店に卸したりもしているらしく着々と商会は大きくなっているらしい。街外れには大きな工場も所有していると聞いた。大商会なのではないのだろうか?ギルドも取引先の一つらしく、サティさんもちょくちょくこの店に訪れるとか。しかもそのサティさんから訓練を受けれるとは...また緊張してきた。


 それから1ヵ月ほど、私は療養に専念した。途中なにか異臭騒ぎがあったらしいが詳しくは知らない。アリスさん曰く、社長がなにかやらかしてサティさんに怒られたそうだ。剣を捧げたことについてはまだ半信半疑だが主導権はやはりサティさんが持っているのだろう。サティさんを力で屈服させることのできるオスなどこの世にいる訳がない。


 その騒ぎを経て薬も完成した。飲んだら体が熱くなる感じがして力が戻ってきているのが実感できる。このような素晴らしい薬を発明するとはヒロシ様はすごいお方だ。貴重な薬で恐縮しているといつもと同じ気にしなくていいとの事だった。私は何をもってこの恩に報いることが出来るのか。


 ソニア様もそうだが男爵家にも相当お世話になっているはずだ。近々ヒロシ様が男爵家に行くというのでそれまでに家族4人で男爵様へ贈り物を作ることにした。ヒロシ様に尋ねると、是非そうした方が良いと。ナイフか何かに彫刻してくれないかと言われた。切れるものを渡すのもどうかと考えたがヒロシ様が良いというならいいのだろう。せめてと思い、狩猟ナイフではなくペーパーナイフにした。これなら問題ないはずだ。


 問題はその後だった。贈り物をたいそう気に入ってくれた男爵様はお礼に私たちを夕食の席へ招待してくれたというのだ。気を失いそうになった。私たちのような平民が男爵家に入る事など本来許されない。カールとアンジーも緊張で固まっている。シャロンですらそうだ。


 男爵家についた。屋敷とはこれほどまでに大きいのか。中に入っても外みたいだと言えば良いだろうか? 外みたいではあるが隅々まで完璧に手入れされているのは分かる。


 多くの執事とメイドが玄関ロビーで待機していた。これだけで心臓が口から出そうになる。


 ソニア様とお子様たちは当然だが自然に中へと入っていく。ヒロシ様とクロード様も同じだ。私たちは恐る恐る後をついていく。


 大きなテーブルの向こうに男爵様とご婦人が既に着席されており、私たちを見ると笑顔で迎えてくれた。他にはギルド長のケビンさんやサティさん、後は工場関係者などが招待されていた。


 ギルドとしては私たちは引退してとっくに他の街へ移っていると認識していたようだ。改めてお詫びを言われてしまったが、謝られることなどない。私たちがこうなってしまったのは仕方のない事だと言うと感謝されてしまった。


 話をしている内に、8年前私たちを襲った盗賊が狂犬(ハウンドドッグ)と呼ばれる盗賊であった可能性が高いと言う。私が見た盗賊のリーダーと思える人物の特徴や手口が一致しているそうだ。悲しい事にクロード様のご家族も犠牲になったらしい。私は裏切ることなく家族を連れて逃げ延び、保護者として今も守っていることを大変褒められた。反対にこのような人に対しての対応を何故きちんとしないのかとギルド長のケビンさんはゾイド様にお叱りを受けていた。


 ケビンさんやサティさんからは何度も謝られたが、本当に何とも思ってないと何度も伝えた。今まで苦労したことは事実だが、今は本当に生きてて良かったと思える。そう家族4人で思うことが出来る今が本当に幸せだと。


 男爵の奥方様であるレザリア様は涙ながらに本当に良かったわねと言ってくれた。このお方は本当に優しそうで何か包み込んでくる温かさを持った人って言うのが印象だ。


 そして仇についての話にはカールとアンジーは目を真っ赤にしていた。無理もない。シャロンは覚えてないだろうが2人は忘れられないだろう。私はサティさんに早く強くなって彼らの仇を、私の仲間の仇を討ちたいと決意を言った。男爵様やケビンさんは私の心意気をほめて下さったがその必要はないと言う。


 何故だ。


 私は分からなかった。納得のいかなかった私は無礼を承知で必ず強くなると訴えかけた。


 すると側にいたカイゼル髭が似合うセバスチャンと言う執事が話を聞かせてくれた。必要が無いと言うのは仇を討つな、と言う事ではないと。


 その頃から狂犬は拠点をこの街に移していた事。また犯罪を起こす機会を狙っていた事。ヒロシ様が奴らの狙いと奴らがクロード様の仇であることを見抜き罠を仕掛けた事。そして奴らと対峙し、最後はクロード様と狂犬の頭であるジャギルとの一騎打ちになったこと。クロード様は大けがを負いながらも見事ジャギルを撃破しその仇を討ったこと。なんという事だ。


 カールとアンジーはもうあれだ、感動と尊敬の眼差してクロード様を見ている。もちろん私もだ。その数は68名だったと言う、そんな盗賊に対して一人で立ち向かったと言うではないか。現実的に可能なのか? セバスチャンさんも現場にいたようで一部始終をみたと。サティさんとヒロシ様、あと1組の冒険者パーティが助力したそうだが、決着をつけたのは間違いなくクロード様と言う事だ。


 凄すぎる。


 クロード様はちょっと話が違うとか言っているが、恐らく謙遜しているのだろう。あの時スラム街でグスタフを叩きのめした実力は本物だった。いや、グスタフなどではその力量は計れるものではない。


 その後は頭がポーっとして知らぬ間に時間が過ぎていったみたいだ。美味しい料理に楽しいお話、夢のような時間だった。


 そして決めた。私は決めたのだ。私は必ず強くなっていつか彼の群れに入る。クロード様の事だ。大きな群れを率いていると思うが末席でも良い。


 いつかその時が来たらカール達にも話をしよう。喜んでくれると良いが。



 私はシンディ。この世に生きる目的を得た狼獣人だ。



お読み頂きありがとうございます。

ブクマ、評価頂けたらうれしいです。(/ω・\)チラッ

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