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よろしくお願いします。

「さぁ、シンディさん、これを飲むといい」


 俺はシンディさんにブルワーク24を差し出した。少し茶色がかった小瓶に入れた液体。風味は前世で飲んでいたものとあまり変わりない。栄養ドリンクとは結局あの風味になってしまうのだろうか。


「これは?」


「これはNamelessが自信をもって発売する新薬品。その名も『ブルワーク24』だ。簡単に言うと栄養ドリンクだ。たくさん食べなくてもこの1本で必要な栄養を補給できるんだ。もちろん食べることは大事だ。栄養補助食品と言うべきか。疲れた時や病気の時に飲むドリンクだ」


「ありがとうございます」


「心配するな、臨床試験は既に俺自身が検証済みだ」


「本当にすみません」


 そう言うとシンディはドリンクを飲み干した。


「すぐに改善するものではないからな。普段の食事と一緒にこれを飲むんだ」


「はい、何だか体がポカポカしてきました」


「もしかしたら体調不良の人が飲むと効果を体で感じられるのかも知れないな。近い内にきっと良くなるだろう。そうしたらこのサティに色々と教えてもらうと良い。サティとはもう挨拶はしてるんだろ?」


「はい、サティさんにはご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願い致します」


「クロちゃんを鍛えるついでだからね。気にする必要はないわよ」


「ありがとうございます。私頑張ります」



 それからしばらくしてシンディも全快し、彼女たちの生活基盤は着々と整っていった。



---------------------------------


「と言うのがここまでの流れなんだ」


 俺は今クロと一緒に男爵家にいる。


「そうか、グスタフ一家の件については警備から連絡が来ておった。その後そんなことをしておったとはな。ワシにも細工がどんなものか見せてもらえんか?あ、ちなみにグスタフ一家については何の心配もいらん。男爵家に手を出した奴らが彼女たちに近づくことは金輪際ない」


「ふーん、そうなのか? またちょっかい掛けられても面白くないけどな」


「まぁ、物理的に不可能じゃ」


『あぁ、執行されちゃってるわけね』


「分かった。そっちは心配しないさ。で、これがカールの作品だ。デザインはアンジーがやってる」


 俺は一本のペーパーナイフをテーブルの上に置いた。柄の部分に龍をモチーフにした図柄と男爵家の家紋が彫刻されている品だ。


「うむ、確かに。これは素晴らしい。ここまで精巧で精密な彫刻は久しく見たことが無いな。デザインも大変素晴らしい。ヒロシがその場で保護を決めたのも納得というものじゃの。これをどれくらいで売ろうと考えておるのじゃ? 金貨3枚? 安いな、このレベルなら7枚にしておけ。それでも十分売れるわい。種類やら細工やらで価格は都度設定した方が良いじゃろうな」


「そうか、じいさんがそういうなら間違いないかな。それで相談はこれからの金属の材料入手先、それと販売網の確立について何だが。材料となるモノを直接他店から買うってのはアリなのかな?」


「それで問題あるまい。Namelessで鉱山に通うこともない。商会で必要なもの、例えば指輪、ネックレス、ナイフ、盾を含めた様々な品をそれぞれの店から購入すれば良いんじゃよ。彼らも商売になると思えば融通してくれるはずじゃ。しかも取引先がNamelessとなると信用度もあるしの。悪い素材のモノを売りつけるような事はしないじゃろう。作ったものはいくらか購入した店にも返せばよい。売る形での。Namelessの一品として販売させるんじゃ。店側はマージンを取るだろうが、そのマージンが更に商品の価値を高めてくれる。そうしていく内に自然と噂が噂を呼び、他の商会から卸してほしいとやってくるわい」


「うーむ、流石じいさんだ。俺の想像以上の所まであっという間に辿り着くんだな」


「何を言うか。これくらいお主も考えとったであろうが。それよりこのナイフは本当に良い品じゃ。あとこっちの『ブルワーク24』。これも良い品だと思うぞ。ヒロシよ、ナイフはもちろんだが『ブルワーク24』もくれ」


「はは、元々そのつもりさ。ドリンクは何本か持ってきてる。あとナイフの方はその4人が今回保護したことで男爵様にもお礼がしたいってな。ナイフはシンディが、彫刻はカールが、デザインはアンジーが、包んでくれたのは末っ子のシャロンだ。皆でお礼がしたいって頑張ったらしいぜ」


「なるほど、そうか。ふむ、それなら有難く頂戴しようか。明日簡単なディナーの席を用意しよう。その4人と、協力してくれた皆も呼んでくれないか。ギルドからはケビンとサティを頼む。あとは任せる。セバス!明日の屋敷内の段取りを頼むぞ」


「畏まりました、旦那様」


「おっけー。でもあの4人緊張するんじゃないか?」


「まぁ、そうかもしれんが...ええじゃろうて」


「じゃ、明日また来るよ」



 そうして俺も店へと戻り夕食の時に皆に話したんだが、シンディが卒倒しそうになっていた。


 じいさん、これが普通の反応だと思うぞ。




次回より数話、閑話を挟みたいと思ってます。

引き続きよろしくお願いします。

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