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よろしくお願いします。
シンディさんはカッと一瞬目を見開いた...ように見えたがすぐに元に戻った。良かった...ブチ切れられるかと思ったよ。
「そうですか、そうなんですね。すみません、少し驚いてしまって」
『恐らくヒロシ様の寛大な御心に触れたのでしょうか。サティさんは強さを極めし武人ですので、優しさに飢えていた、いや、もしかしたら...まさか薬で? いやいやこのヒロシ様に限ってそんな下劣な真似をするはずがありません...私はなんてことを考えているのか...』
シンディは俯いたまま何かブツブツ言っている。
ソニアさんにとっては今日の女子会で得たホヤホヤ情報だったようで、言いたくてウズウズしていたらしい。確かに知る人は少ないかも知れないが、今言わんでもええやろ。(突っ込み)
「まぁ、色々あってね、ハハハハハ。じゃぁ、他に質問が無ければ一旦失礼するよ。薬の調合もしなければいけないからね。シンディはしっかり休んで栄養を取る事だ」
「ヒロシお兄ちゃん、私はどんな仕事をすれば良いですか?」
シャロンちゃんが見上げてくる。そうだ、ちょっと焦ったせいでシャロンちゃんのことを言っていなかった。ごめんね。ソニアさんが全部悪いんだよ。
「ヒロシ君、今何か良くないことを思ったわね?」
「滅相もございません」
この世界の女性は皆強く優しく逞しく、そして勘が鋭い。
「シャロンちゃんには学校に行ってもらいます」
「え? ええええ!」
シャロンちゃんが驚いている。
「ヒ、ヒロシ様、有難い話ですが流石に学校までは...」
「ん?何故だ?」
「いえ、まだ兄妹を養えるかどうかも分かりませんし」
「大丈夫だ、お前が頑張れば問題ない。シャロンちゃんもまだ小さい。覚えておかなくてはならないことは山ほどある。教育とはそれだけで宝だしな」
「カール、私も頑張って早く冒険者に復帰できるように頑張る。それまで苦労を掛けるが...」
「いや、母さん、俺頑張るよ。ヒロシ様、是非お願い致します」
「私も頑張ります!」
アンジーさんも拳を握って気合いを入れている。
「ああ、それでこそ俺の見込んだ兄妹だぜ。じゃぁ、とりあえずシンディが良くなって家が決まるまではここに居ていいし、決まらないならそれはそれでここに住んでも良い。その辺りはそうだな、まずはアリスに相談すると良い。アリス頼むぞ」
「畏まりました、旦那様」
「じゃ、一旦解散だ」
しかし、最初は木で作るのも良いかも知れんができればやはり貴金属でやりたいな。木材で製作するものと金属で製作するものとの差別化も必要だ。とりあえず原材料ルートが確立するまではシンディさんは療養、2人は工場でのOJT、シャロンは学校。これで良いだろう。
そんなことを話しながら俺はクロと歩いた。
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「社長、お持ちしました」
アリスが両手にカゴを抱えてクロと一緒に工房に入ってきた。ここは俺専用の工房というか薬の開発室だ。専用とか言ってるけど俺以外に開発する人もいないんで俺専用となってるだけだが。
「ありがとう、そこに置いてくれ」
2人はカゴを机の横に置くと、一礼をして出て行った。アリスに頼んだのは主にビタミン、栄養価の高い薬草や薬用果実だ。この中に良いのがあればそれを元に出来ると思っている。
そして俺の調合の日々が始まった。
シンディは毎食栄養価の高いものを食べて日ごと顔色は良くなってきているが、かと言って体調不良から食べる量が増やせないので万全の状態とはいかない。そこは仕方ない。
カールとアンジーについては工場の方でまず実習をしてもらっている。専門の仕事とは違うがまずは商会がどんなことをやっているのか、それを知ってもらうために必要な事だと判断した。各種薬品の製造をレイナの指導の下で頑張って覚えているようだ。
シャロンは学校に行きだした。読み書きそろばんを覚えてもらおうと考えている。シェリーやロイと変わらない年齢であるが如何せん今まで学校に行ったことがないので、初等学校の一番下から習うようにさせた。皆にはいつか追いつけばいいんだ。シェリーやロイも良く面倒を見てあげているようでシャロンも大喜びだ。2人にしても妹が出来たようで可愛いのだろう。
そして調合を繰り返す事1ヵ月ようやくエナジードリンクが完成した。俺ってやればできる男なんだな、自分で褒めちゃおう。商品名はブルワーク24だ。決して24時間労働を推奨する訳じゃないぞ。
いやでもホントこれを開発するのにも苦労した。目を閉じて俺はこの1カ月の事を思い出す。
想像以上にブクマ、評価が増えて本当に嬉しいです。ありがとうございます!
頑張らないと(`・ω・´)