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今日はこれで最後です。

「旦那様、準備が整いました」


「ありがとう、じゃ、皆行こうか。あ、アリス、皆の服装は新しくしてくれたかい?」


「もちろんでございます。その他身だしなみも整えてございます」


「ありがとう、助かる」


 部屋に入ると、シンディさんはベッドの上、カールとアンジーはソファに座っている。シャロンは...窓にへばりついて外を眺めているな。


「やぁ、お待たせ。皆見ちがえたね!」


「ヒロシ様、こ、この度は色々とお世話になりありがとうございます。でも私たちは正直何が何やら分からない状態で...」


 シンディさんはがちがちに緊張している。突然待遇良く連れて来られて、今は男爵家の令嬢まで目の前にいる。震えているのは緊張だけではなく、何かされるんじゃないかと恐怖も感じているのかも知れないな。


「そうだな、その前に...えーと、ちょっと待ってくれよ」


 俺はシンディに≪診断(スキャン)≫を掛けた。≪診断≫についてはクロがジャギルに切られた時に発現した。健康状態を見れるもので≪鑑定≫のように弾かれることもない。


結果はこうだ。

≪診断≫

狼獣人:女性:状態 ビタミン欠乏症:呼吸器系炎症:微熱


 うーん、風邪の症状とビタミン欠乏症か。ビタミン欠乏症ってのはひどくなると脚気ってやつになるんだったっけ? 膝を叩いてみるか。あとはそうだなビタミンドリンクを作ってみよう。ビタミンドリンクは風邪気味の時にも服用されているので、ポーションより安く作れたら売れるんじゃないか?うん、これは売れるな、良いかも。


『グフ、グフフフフ』


「ちょっとヒロシ君、どうしたの?変な声が出てるわよ?」


「え?声出てた?」


「非常に悪い顔で笑っておりましたよ...」


「あれ? そうなの、ごめん」


 と、シンディを見ると、顔が引き攣っている。スマン、安心させるつもりが余計に心配させているようだな。


「えー、ゴホン。シンディさんすまないがベッド脇に座ってくれないか? そう、それでいい。それではちょっと失礼して...痛い!」


 ソニアさんに後ろから引っ叩かれたぞ。


「ちょっと、アンタ何やってんのよ? 簡単に女性の体に触れたらダメなのよ?」


「いや、違うって誤解だよ。簡単な診察だよ。え? 何? さっきの笑い方とは関係ないよ! ホントだよ!」


「そ、そうなの? じゃぁ、仕方ないわね。でも見てるからね。おかしなことしたらサティに言いつけるわよ? サティ怒ったら怖いわよ?」


「知ってるし、そんな事しないって! じゃぁ、シンディさん改めまして、足を失礼」


 俺はアリスに孫の手(こっちの世界にもある)を持ってきてもらってその柄についているコブの方で膝の皿の下辺りを数回叩いた。うーむ、ピクリとも反応しない。人体の形成がそもそも根本的に違うのか、本当に脚気なのか...


「それはなにをやってるの?」


「え、いやビタミンが足りているとここを叩くと膝が上がるはずなんだけどな、あれぇ?」


「ビタミンがよく分からないけど? 叩いて上がるわけないと思うけど?」


「いや、上がるんだけどなぁ...あ、そうだクロ、シンディさんの横に座ってくれ。そうそう、それでここの膝の下辺りを叩くとね...痛い!」


 クロの足が跳ね上がって俺の脛を蹴っ飛ばした。勢いが強すぎるぞ。コイツ今ワザと蹴ったんじゃないのか?


「うわっ、びっくりした! え? ああ! 大丈夫ですかヒロシ様!」


「ぐおおお、だ、大丈夫だ。なっ、でもこういう事だ。ビタミンええと...栄養だな。栄養が足りてるとこうなるんだよ」


「うわー、すごーい。シャロンにもやって!」


 シャロンちゃんがベッドに飛び乗ってきた。


「こら、ダメでしょう!」


 シンディさんは慌てているけど、小さい子供はこんなもんさ。恐いもの知らずでいいね。


「いいよ、じゃぁ座ってごらん、そうそう」


 シャロンちゃんはぴょこぴょこ上がる足を見てご満悦だ。良かった。この子は大丈夫そうだな。その後、カールとアンジーにも試したが大丈夫だった。ソニアさんもちゃっかり座ってきたので試したぞ。もちろん大丈夫だった。


「後で、薬を調合して持ってくるよ。それまでは栄養のあるものを食べる事だ。ん? お金のことは気にするな。気にして良いが、気にしなくていいようになる話をこれからする」


「はい、分かりました」


「まずは、君たち4人だが、スラムを出て街で住まないかと言う事だ。もう借金もないし、お金があればそれほど困ることはないはずだ。じゃぁ、お金はどうするのかという事だが、カールとアンジーにはこの商会で働かないかと思ってるんだ。2人の意見も聞きたい。どうだろうか?」


「ヒロシ様、僕は全く問題ありません。助けて頂いた上にこんな大きな商会で働けるなんて夢のようです。でも、本当にいいのでしょうか? 僕に何ができるか分かりませんが...」


「私もです。商会でどんな仕事ができるのか...」


 カールとアンジーは自分が何の役に立つのか心配しているようだ。無理もない。この商会はホテル『銀龍の鱗』の横で以前は『銀龍の翼』として男爵家がたまに別宅として訪れていた場所だ。当然敷地も大きい。それはそれは大きい。それがNamelessと言う名に変わり男爵家御用達の商会となり、おまけに男爵家令嬢もいる。売上では大商会とまではいかないまでも、これから伸びていくと誰もが思っている。


 心配なのはわかる。だから入ってもらうにはちゃんと説明してやらないとな。




お読み頂きありがとうございます。

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