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お待たせ致しました。
グスタフ一家は今日で終わりか...いや、しかしクロも悪よのう。
「上手いこと言ったもんだな、クロ。よかったな、カール。お前の家の借金は今クロードが無くしてくれたぞ」
「本当に!? ありがとう、クロード兄さん!」
クロは微笑んでカールの頭を撫でてやっている。しかしあれだな。狼が笑うイメージはスッゴく悪い笑い方になるはずなのに、クロが笑うとかなりのイケメンになってるぞ。この辺りが兄さんとおじさんの違いか。あ、涙が。
「いいんですよ、カール。これで彼らも少しは懲りたでしょう」
懲りたも何もさっきの隊長のキレっぷりでは、アイツら明日の朝までに死刑なんじゃないの? まぁ、クズがどうなろうと構わないが。クズには厳しいのだよ、俺は。
「まぁ、一段落したところで話に移ろう。シンディさんだよね? どこが悪いんだい?」
「咳が止まらず、体に力が入らないのです。それで彼らから薬を買ったのですが、あまり効果がなくて」
シンディさんは薬を出してきた。俺はそれを受取り鑑定を掛ける。『ヒロ、鑑定!』やっぱちょっと失敗したな、この起動方法。まぁいい。結論から言うと、
「うーん、シンディさん、これは薬ではあるけれど、身体の中の病気には効果ないね。どっちかというと外傷用だ。しかも品質も良くない。コレじゃぁ良くならないな」
「そ、そんな...」
《鑑定》
ポーション : 粗悪品 : 傷薬としての効果もあまり期待できない。
と出ていた。
「うーん、そうだな。どうだい? ウチに来るかい? 詳しい話はウチでしよう。クロ、御者に行って馬車を回して来るように伝えてくれ」
「畏まりました」
クロはそういうとすぐに出て行った。
「じゃぁ、そういうことで皆でおじさんの家に行こうか」
「あの、すみません、話が全く見えないのですが...私たちが男爵様の家になど畏れ多くて...」
他の2人も黙っている。シャロンだけが目を輝かせているが。
「いいんだ、気にする事はない。あ、俺は男爵家と確かに関係はあるが、俺はただの商人だ。これから行くところも男爵家ではなく俺の店だ。自宅も兼ねてるけどな。だからそんなに緊張する事もないさ、ほんとに」
という軽い押し問答の末、俺達は今は馬車の中だ。シャロンを除く3人は緊張しているのが傍目にもよくわかる。まぁ、よく考えたらそうだよな。緊張するよな。でもまぁ今は我慢してくれ。
店に着いた。店とは言うけど自宅でもある。最初は店の前に止めて、簡単に店の紹介をした後、馬車は裏手に回してもらった。
「おかえりなさいませ、旦那様」
ちなみにメイド衆からは俺は旦那様と呼ばれている。商会の会長、俺は社長だが、はこのように呼ばないと世間的にもダメらしい。俺はいつも肝に命じている。勘違いしちゃダメだと。
「あぁ、アリスただいま。少し頼みたい事がある。まずこの3人を風呂に入れてやってくれ。そして彼女、シンディさんは病を患ってるので、体を拭いたあと、空いている部屋で休ませてやってくれ。皆が部屋に集まった時点で呼びにきてくれるか。いや、ん? ああ、そう、そうだ。俺がその部屋に行く。そのまま俺とクロを部屋まで案内してくれたら良い」
「畏まりました。それでは後で社長室までお呼びに伺います」
「ありがとう、あ、あとソニアさんにも社長室に来るよう伝えてくれないか。うん、じゃ、よろしく」
「あ、あの」
シンディが何か言おうとしたが、
「気にするな、部屋についたら話そう。今はメイド達についていくと良い。それでは失礼」
そう言って、俺はその場を後にした。
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部屋に戻って俺はクロと話している。ソニアさんも参加しているので言うなれば、今は経営会議だ。
サティはソニアさんを送ったあとしばらくお喋りして戻ったらしい。女子会の内容が気になるがそれはこちらから聞いてはいけない、絶対。
「驚いたわ、ヒロシ君。突然連れて来るんですもの。何か理由があるんでしょ?」
「経緯はさっき話した通りなんだけど、同情だけで保護した訳ではないさ。先ずはこれを見てほしい。クロ、頼む」
「はい、こちらになります」
クロは木でできたアクセサリーを机の上に置いた。
「まぁ、素敵。とても綺麗ね」
「これ、いくらなら買う?」
「そうねぇ、銀貨30枚はするかしら? どうしたのこれ? その金貸しが持ってたの?」
「銀貨30枚か。経緯を知ってる男爵令嬢のソニアさんがそれでも銀貨30枚はすると思う品だ。クロ、いくらだったっけ?」
「銅貨5枚ですね」
「はぁ? ちょっと冗談でしょ? これが銅貨5枚ですって? どういう事よ!」
ちょっとソニアさんが怖いです。
「これ、あの少年が作ったんだよ。デザインは大きい方の女の子。俺も最初見たとき驚いたよ。値段を聞いた時は倒れそうになった。それでだ...」
「うちの商店で扱おうってことね?」
「そう、更に言えば彼を野に放すといつか必ずその才能に気づく奴が出てくる。そこでだ...」
「うちで雇ってしまえってことね」
「そゆこと」
「いいと思うわ」
「スラム街の木のアクセサリーではなく、男爵家御用達であるNamelessのアクセサリーとして売れば価値は何倍にもして売る事が出来る。はっきり言って儲かるイメージしかわかない。材料は当然木材以外でもやりたい」
「間違いないわね。乗るしかないわね! このビッグウェー...」
「シンディさんはどうしますか?」
クロよ、最後まで言えなかったソニアさんは口をパクパクさせてるぞ。
「シンディさんは元々冒険者だ。彼らの保護者も兼ねてるが、身体が良くなればサティに一旦預ける。まぁ、そっちも考えているさ」
「そうですか、それは良かった」
「あれ? ちょっと待ってクロちゃんよ。何? 俺が切り捨てると思ったわけ? それはないわー」
「いえいえ、その様な事は思ってませんよ。気になっただけですよ、純粋に。病気ですし」
「病気は後で診るとしよう。後シャロンは学校だ。流石に働けとは言えない。将来性に期待だな」
と、そこまで話した時にアリスが呼びに来た。
そろっと応募してみました。
どうなるのかなぁ。